“だるだる” “もふもふ”衣服は着火の元! ~毎年100人前後が死亡している「着衣着火」の注意点~
2023年1月26日
製品評価技術基盤機構(NITE)https://kyodonewsprwire.jp/author/H106885
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE(ナイト))は、製品使用時における着衣着火(※1)の事故リスクの低減を目指すため、事故原因や事故防止のためのポイント、発生時の対処法をお知らせいたします。
ガスこんろの炎に衣服が接触して着衣着火
「着衣着火」は、ガスこんろのように炎が出る機器だけでなく、電気ストーブ等の炎が出ない熱源を持つ機器に衣服が接触したりすることでも発生する可能性があり、やけどや火災、死亡事故が多く発生しています。特に冬場は、卓上こんろや暖房器具を使う機会が増えることに加え、厚着によって着火に気付きにくくなるため一層の注意が必要です。
事故原因及び被害者の傾向
消防庁のデータ(※2)によると、着衣着火による死者は過去5年間(2017年~2021年)で492人となっており、毎年100人前後の方が亡くなっています。
NITEにも、2017年度から2021年度までの5年間に20件の事故が通知されています(※3)。製品別にみるとガスこんろの事故が最も多く発生しています。また、事故の原因として消費者の誤使用や不注意等による事故が8割を占めています(原因不明及び調査中を除く)。さらに、事故は高齢者の割合が高く、死亡事故はすべて70歳以上の方が被害に遭っています。
事故を防ぐためのポイント
○ ガスこんろや電気ストーブ等を使用する際は、衣服と炎や熱源との距離を意識し、近づき過ぎない。
○ 火を扱う際は、裾や袖が広がった“だるだる” “もふもふ”の衣服や紐付きの衣服などを避ける。
着衣着火が発生した際の対処方法
○ 直ちに水や消火器で消火を行う、周囲の人に助けを求める(すぐに服が脱げる場合は脱ぐ)。
〇ストップ、ドロップ&ロール(止まって、倒れて、転がって)を行う。
(※1)本資料では、ガスこんろなどの炎や電気ストーブなどの熱源により衣服が燃える/焦げることを「着衣着火」としています。
(※2)出典:総務省消防庁ホームページ 消防統計(火災統計)https://www.fdma.go.jp/pressrelease/statistics/)
(※3)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
>>今回のプレスリリースはこちら
NITE公式HP https://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2022fy/prs230126.html
>>今回の動画はこちら
・NITE公式 YouTube ガスこんろ「着衣着火」
・NITE公式 YouTube 着衣着火の対処方法
・NITE公式 YouTube 素材別の燃え方の違い
【資料編】
製品事故の情報としてNITEに通知された着衣着火について、以下を示します。
1. 事故の発生状況
2. 着衣着火の事故事例
3. 事故を防ぐためのポイント及び着衣着火時の対処方法
1. 事故の発生状況
1-1.年度別の事故件数
NITE に通知された製品事故情報のうち、2017年度から2021年度までの着衣着火の事故20件について、図1に「年度別 事故発生件数」を示します。
図1 年度別 事故発生件数
1-2.年代別の被害状況
NITE に通知された製品事故情報のうち、2017年度から2021年度までの着衣着火の事故20件について、表1に「年代別 被害件数」を示します。人的被害が17件(死亡6件、重傷5件、軽傷6件)あり、死亡・重傷は高齢者の割合が高くなっています。特に死亡は全件が70歳代以上の高齢者となっています。
1-3.着衣着火の要因(炎や熱源)
NITE に通知された製品事故情報のうち、2017年度から2021年度までの着衣着火の事故20件について、「着衣着火の要因(炎や熱源)となった製品及び被害件数」を表2に示します。ガスこんろでの事故が最も多く、死亡者数も多くなっています。
1-4.着衣着火の事故原因
NITE に通知された製品事故情報のうち、2017年度から2021年度までの着衣着火の事故20件について、「着衣着火に至った原因」を図2に示します。誤使用や不注意による事故が最も多く起きており、事故原因が判明した(原因不明及び調査中を除く)事故の8割(11件中9件)を占めています。
図2 着衣着火に至った原因
2. 着衣着火の事故事例
2-1. ガスこんろによる事故
事故発生年月 2019年11月(北海道、80歳以上・女性、死亡)
【事故の内容】
ガスこんろを使用中、着衣に着火する火災が発生し、1名が死亡した。
【事故の原因】
事故発生現場、使用者のやけどの状況などから、ガスこんろを使用中にこんろの火が着衣に着火したものと推定される。しかし、当該製品の確認ができず、事故発生時の詳細な状況も不明のため、製品起因か否かを含め、事故原因の特定には至らなかった。
なお、取扱説明書には、「使用中はバーナー付近に触れないように注意する。衣服に炎が移ったりする場合があります。」旨、記載されている。
【SAFE-Lite検索キーワード例】
ガスこんろ、着衣、着火
2-2.電気ストーブによる事故
事故発生年月 2017年11月(東京都、70歳代・男性、軽傷)
【事故の内容】
電気ストーブを背にして暖を取っていたところ、着衣着火する火災が発生し、1名がやけどを負った。
【事故の原因】
電気ストーブに接触又は長時間近付いた状態で使用していたため、衣類が加熱され、発火した可能性が考えられる。
なお、同等品の本体及び取扱説明書には、「使用中、ヒーターやガード部等の高温部に触れない。」「可燃物の近くで使用しない。」旨、記載されている。
【SAFE-Lite検索キーワード例】
電気ストーブ、着衣、着火
2-3.ライターによる事故
事故発生年月 2017年10月(静岡県、50歳代・男性、重傷)
【事故の内容】
ライターを使用後、衣服のポケットに入れたところ、衣服が燃えてやけどを負った。
【事故の原因】
ライターのノズル付近に異物が付着したことによりノズルが戻らなくなり、残火が生じて事故に至ったもの推定される。
なお、本体表示には、「消火を確認する。残火、ガス漏れの原因となる異物混入のないことを確認する。」旨、記載されている。
【SAFE-Lite検索キーワード例】
ライター、衣服、着火
2-4.草焼きバーナーによる事故
事故発生年月 2020年11月(兵庫県、80歳以上・男性、死亡)
【事故の内容】
草焼きバーナーから灯油が漏れ、使用者に付着しやけどを負い、死亡した。
【事故の原因】
使用者は、草焼きバーナーから灯油が漏れていることを認識しながら使用したため、炎が漏れた灯油に引火して使用者の着衣に燃え移り、やけどを負った。経年劣化によりホースに亀裂が生じて灯油が漏れるようになっていたが、使用者がテープを巻いて使い続けていたため、事故発生時に漏れた灯油に火口の炎が引火し、使用者の着衣に燃え移ったものと推定される。
なお、取扱説明書には、「油漏れがないか確認する。」「ホースの劣化に気づいた場合は交換する。」旨、記載されている。
【SAFE-Lite検索キーワード例】
草焼きバーナー、着衣、着火
3. 事故を防ぐためのポイント及び着衣着火時の対処方法
事故を防ぐためのポイント
○ ガスこんろや電気ストーブ等を使用する際は、衣服と炎や熱源との距離を意識し、近づき過ぎない。
ガスこんろなどの炎は、目には見えていない部分にも存在するため、目に見えている炎から離れていても着火する可能性があります。特に冬の時期は重ね着などで衣服の厚みが出るため、衣服の過熱や着火に気付きにくくなります。衣服と炎や熱源との距離を常に意識して近づき過ぎないよう注意してください。また、火を消したつもりでも残火が生じている可能性があるため、しっかり消火を確認しましょう。火が出ない電気ストーブ、白熱電球などの製品についても、油断せず十分注意してください。
事故を防ぐための対策製品として、こんろの周りに近づくと炎を弱める安全装置付きのガスこんろや、本体が過度に熱をもったり異物を検知したりすると自動で電源が切れる電気ストーブなどもあります。
ガスこんろで加熱中の鍋を赤外線カメラで見た様子(右が赤外線カメラの画像。緑の部分が炎)
また、調理中にガスこんろの奥の物を取ったり置いたりする行為は、衣服が炎に接近するので大変危険です。ガスこんろの奥には物を置かないようにするか、どうしても置く場合は火を消してから物を取るようにしましょう。
なお、衣服だけでなく炎や熱源周辺の物に着火するおそれもあるため、こんろやストーブなどの熱源の上や周囲に、ふきん、洗濯物、樹脂製品等の可燃物を置かないでください。また、熱せられることにより破裂するおそれがあるため、スプレー缶等も近くに置かないでください。周囲の物に着火し、それらが衣服に燃え移る危険性もあります。ガスこんろの周りは整理整頓し、できる限り物を置かないようにしましょう。
さらに、周囲でスプレー缶等を噴射すると、噴射剤として用いられている可燃性ガスに引火する可能性があるため、ガスこんろなどの使用中には周囲でスプレー缶等を噴射しないでください。同様に、冷却スプレーには可燃性ガスが含まれているため、使用した後に近くでガスこんろやライターを使用すると、着火するおそれがあるので注意してください。
○ 火を扱う際は、裾や袖が広がった“だるだる”“もふもふ”の衣服や紐付きの衣服などを避ける。
調理中で炎が近くにある場合は、マフラーやスカーフなど長く垂れ下がる可能性のあるものは外して、裾や袖が広がっている、毛先が長い、毛羽立っている、紐が付いているような衣服の着用はできる限り避けましょう。特に化学繊維の場合は、溶けて皮膚に張り付いてしまうのでやけどの被害が大きくなる可能性があります。
調理の際にはエプロンやアームカバーを着用することで、裾や袖の広がりなどを抑えることができます。また、難燃・防炎仕様の素材は、炎が接しても着火しにくくまた燃え広がりにくいので、調理中の着衣着火の防止につながります。
繊維による燃え方の違い
着衣着火時の対処方法
○ 直ちに水や消火器で消火を行う、周囲の人に助けを求める(すぐ服が脱げる場合は脱ぐ)。
近くに水場や消火器がある場合は、着火箇所に水をかけるなどして消火してください。また、衣類を素早く脱ぐことができる場合は、服を脱いでください。一人では対処できない場合もあるため、周囲の人に大声で助けを求めてください。
○ストップ、ドロップ&ロール(止まって、倒れて、転がって)を行う。
服が脱げず、また近くに水や消火器が無い場合は、「ストップ、ドロップ&ロール(止まって、倒れて、転がって)」を実践しましょう。パニックになって走るなどしてしまうと、風によって酸素が取り込まれ火の勢いが大きくなってしまうおそれがありますので、まずはその場で止まってください。そして、体と地面の間にできるだけ隙間がないよう地面に倒れ込み、燃えているところを地面に押しつけるようにしながら左右に転がることで消火させます。また、両手で顔を覆うようにして顔へのやけどを防ぎましょう。慌てず、落ち着いて対処しましょう。
事故品・事故事例を確認
○過去にどのような事故が発生しているか確認する。
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報が表示されます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
独立行政法人 製品評価技術基盤機構 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。
製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。
本プレスリリースは発表元が入力した原稿をそのまま掲載しております。また、プレスリリースへのお問い合わせは発表元に直接お願いいたします。
プレスリリース添付動画
このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 独立行政法人製品評価技術基盤機構
- 所在地 東京都
- 業種 政府・官公庁
- URL https://www.nite.go.jp/
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