広範な測定ニーズに迅速に応える 標準物質生産者を国内で初めて包括的に認定

~個々の標準物質に対する認定に比べ供給時間を6ヶ月以上短縮~

2023年3月2日

独立行政法人製品評価技術基盤機構

 

 

 独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE(ナイト))は、2023 年 3月4日、富士フイルム和光純薬株式会社東京工場を、化学分析・測定に用いる標準物質の生産者*1として国内で初めて“包括的認定”*2します。これにより、金属元素の測定ニーズに対し、信頼性の高い標準物質を速やか、かつ安定的に供給できるようになり、国際競争力の強化が期待されます。

 法規制の変更、水質等の緊急調査や食品の汚染事故等により、化学分析や測定が突発的に必要になることがあります。これらニーズへの対応には、標準物質生産者が化学分析・測定に必要な信頼性の高い標準物質を速やかに生産・供給することが重要です。しかし、従来は、個々の標準物質に対して生産者が認定を受けるまでに6ヶ月以上の時間を要する等の課題がありました。今回NITEが広範に認定する包括的認定を受けた標準物質生産者は、新たな標準物質に対しての都度の認定審査が不要となり、標準物質の供給時間が大幅に短縮されることで、分析・測定機関からのニーズに迅速な対応ができるようになります。

 

標準物質の用途

 「標準物質」は、化学分析・測定を行う際の基準となる物質であり、分析・測定結果の信頼性の決め手となる非常に重要なものです。その種類は、無機標準物質(各種金属やセラミックス等)、有機標準物質(食品や肥料、医薬品等)、環境標準物質(飲料水、排水、土壌等)など多岐にわたります。これら標準物質は、社会問題(法規制や環境・食品汚染等)への対応、例えば人体に害を及ぼす化学成分(汚染物質)の量を精確に測定する場合などに利用されています。

 

標準物質の利用に関する課題と解決に向けた取り組み 

 突発的な測定ニーズに対応するためには、化学分析・測定を行う試験所は各用途に適した信頼性の高い標準物質を速やかに入手する必要があります。しかし、標準物質を供給する標準物質生産者は、特定濃度の個々の標準物質を生産できる者としてのみ認定されており、混合液中の任意濃度での標準物質生産は認められていません。そのため、新規標準物質に対し、標準物質生産者が新たに認定されるまで時間がかかる、あるいは海外から調達するにも時間がかかるため、分析・測定機関は迅速に標準物質を入手することが出来ませんでした。

 他方、国際的には、個々の標準物質ではなく、特定の要素(測定方法等)を基準として広範に標準物質生産者を認定(包括的認定)することが認められるようになり、導入が進んでいます*3。包括的認定された標準物質生産者には、新規標準物質の生産を自主的に計画管理し、自身の責任の下での生産供給が認められます。 

 

認定により期待される効果

 NITEが富士フイルム和光純薬株式会社を包括的認定の標準物質生産者として認定したことで、国内での標準物質の安定供給体制が確保され、金属元素測定が必要な様々な分野の測定ニーズに迅速に対応することができます。海外に依存することなく国内で迅速に信頼性の高い標準物質を入手できるようになり、化学分析・測定ニーズに対する国際的な競争力が強化されます。

 

<標準物質生産者に対する従来の認定と包括的認定の違い>

 

用語説明

*1 標準物質生産者:各種標準物質の供給体制整備(製造、瓶詰め、濃度値の決定等)に資する標準物質の生産者。

NITEは、国際規格ISO 17034(標準物質生産者の能力に関する一般要求事項)への適合を評価、製品評価技術基盤機構認定制度(ASNITE)において標準物質生産者の認定を行っている。詳細は以下Webページを参照。

https://www.nite.go.jp/iajapan/asnite/outline/index.html

 また、NITEは包括的認定を運営するために、以下2文書を整備、公表している。

“フレキシブルな認定範囲”を適用するASNITE標準物質生産者に対する認定の特定要求事項(https://www.nite.go.jp/data/000110719.pdf

ASNITE標準物質生産者の”フレキシブルな認定”適用にかかる審査指針(https://www.nite.go.jp/data/000110720.pdf

 

*2 包括的認定:特定の要素(測定方法等)を基準として、広範に標準物質生産者を認定すること。

包括的認定における新規標準物質の生産パターンとして、以下の例(及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。

①単一成分の標準液としては既に生産能力がある複数の標準物質成分を希望する濃度比率で混合し、多成分混合標準液を生産する。

②実施能力が確認され認定された測定技術を用いて、新規の成分を含む標準液を生産する。

このような“包括的認定”は、2017年11月に改正された認定機関に関する国際規格(ISO/IEC 17011)の中でも、新たに定義(“フレキシブルな認定範囲”と称されている)され、国際的ルールとなっている。

 

*3 標準物質生産者に対する“包括的認定”の認定審査: 従来は、特定の標準物質の生産に関する個別手順及び個別記録(特定の標準物質の測定方法、濃度値の決定に関する記録類等)の適切さを主に評価している。一方“包括的認定”の認定審査においては、新規標準物質を生産するための共通的手順及び管理システム(新規標準物質のための測定方法の開発能力、測定方法や濃度値決定方法の適切さを評価する能力、新規標準物質の生産を管理するマネジメントシステム)の適切さに着目して審査を実施する。

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プレスリリース添付画像

標準物質の調製(イメージ)

標準物質生産者に対する従来の認定と包括的認定の違い

このプレスリリースを配信した企業・団体

  • 名称 独立行政法人製品評価技術基盤機構
  • 所在地 東京都
  • 業種 政府・官公庁
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