生命医科学部池川雅哉教授グループがアルツハイマー病脳に蓄積するアミロイドベータに関する研究成果を発表

同志社大学

2017年10月18日

学校法人同志社 同志社大学

アルツハイマー病脳に蓄積するアミロイドベータの網羅的解析を

イメージングマススペクトロメトリー法を用い世界で初めて成功

このたび、同志社大学生命医科学部の池川雅哉教授らのグループは、アルツハイマー病脳に蓄積するアミロイドベータに関する研究発表を行いました。

今日、老年期認知症は、極めて重要な国民的課題です。なかでもアルツハイマー病(AD; Alzheimer’s Disease)は、その主な原因と考えられています。AD脳においてアミロイドベータ(Aβ)と呼ばれるペプチドが細胞外に蓄積し老人斑を形成することは、微小管結合タンパク質タウが神経細胞の中で凝集蓄積した神経原線維変化とともにADの発症に深くかかわっています。本研究は、近年、発展のめざましい質量分析法と組織病理学研究を統合したイメージングマススペクトロメトリー(IMS: Imaging Mass Spectrometry)法を応用し、これまで免疫組織化学的には同定されなかったAβ群を含む脳タンパク質の脳内分布を一挙に可視化することに成功しました。IMS法は、組織切片上に存在する物質を直接マトリクス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)型質量分析計で検出し、それぞれの物質の切片上での位置情報と従来の組織・病理学情報との比較を行う方法です。タンパク質を対象分子としたIMS法は、難易度も高く、研究報告も少ない一方、脳タンパク質老化研究に非常に有望です。今回、ブルカー・ダルトニクス社との共同研究開発により、初めてヒト脳を対象としたIMS法による脳病理研究が可能となり、ヒト脳におけるAβの産生から排出に関わる脳内での挙動をとらえました。本成果は、貴重な東京都健康長寿医療センター研究所高齢者ブレインバンクの試料を有効に活用することにより正常脳からAD脳へと移行する脳病理の謎を解く鍵を得たものと考えられます。

本研究は、「文部科学省 新学術領域研究」および「日本医療研究開発機構 脳科学研究戦略推進プログラム」の助成を受けて実施しました。この研究成果は、「Acta Neuropathologica Communications」に2017年10月16日(月)に掲載されました。

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