眼科遺伝子療法の研究を目的とする遺伝子デリバリー技術における SIRION Biotech GmbHとの共同開発について

窪田製薬HD

2018年1月9日

窪田製薬ホールディングス株式会社

(コード番号 4596 東証マザーズ)

眼科遺伝子療法の研究を目的とする遺伝子デリバリー技術における

SIRION Biotech GmbHとの共同開発について

 世界中で眼疾患に悩む皆さまの視力維持と回復に貢献することを目的に、イノベーションをさまざまな医薬品・医療機器の開発および実用化に繋げる眼科医療ソリューション・カンパニーである窪田製薬ホールディングス株式会社(以下「当社」)は、当社100%子会社のアキュセラ・インク(米国、以下「アキュセラ」)が遺伝子デリバリー技術に特化したSIRION Biotech GmbH(ドイツ、以下「シリオン」)と、眼科遺伝子療法への臨床応用を目的に最適化されたアデノ随伴ウイルスベクター(*1)を確立するため、2年間の共同開発契約を締結したことをお知らせいたします。

 この度の共同開発契約締結により、アキュセラは進歩が著しい遺伝子療法の領域における研究開発を推進し、網膜色素変性の治療法確立を目指します。契約の主な項目に、シリオンに対し開発費および開発の進捗に伴うマイルストーンペイメントが含まれる他、上市に至った場合には、販売に対するロイヤリティの支払いが生じます。

 網膜色素変性は、遺伝性の網膜変性疾患です。幼少期に発症し、40歳頃までに失明する例も多く見られます。約4,000人に1人が罹患する稀少疾病であり(*2)、世界で150万人が患っていると推定されています(*3)。

 網膜色素変性は、光を捕らえ視覚認知につなげる働きを持つ光受容細胞の変性を引き起こす常染色体優性や、常染色体劣性、X連鎖突然変異などの遺伝子変異が原因で発症し、ゆるやかに進行します。最初に明暗を認識する杆体(かんたい)細胞が損傷され、周辺視野および夜間視力に障害をきたします。その後に、色を認識する錐体(すいたい)細胞が損傷され、色覚異常や中心視力の低下をきたし、最終的に失明に至ります。病原となる遺伝子変異は100種類以上が同定されています。日本においては、厚生労働省が難病に指定しています。現在のところ網膜色素変性に対する有効な治療法はありません。

 組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは現在最も有望な遺伝子デリバリーシステムと考えられており、非臨床試験においてもヒトロドプシン(*4)を網膜に届けることが確認されました。アキュセラはシリオンおよび学術系コンソーシアムと共同で、次世代の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの開発を目指します。開発目標としては、患者への光感受性を効果的に回復させるために必要とされる、治療用タンパク質送達のための特異性を有する安全な製品プロファイルを示す治療用ウイルス粒子を確保し、新規の組換えアデノ随伴ウイルスカプシド(*5)を確立することです。

 シリオンは、ウイルスベクター開発で数十年の経験を持ち、研究開発にとって重要な役割を果たすヨーロッパの有力な学者との緊密な関係を培ってきました。アデノ随伴ウイルス生物学において世界的に著名な Grimm教授(ハイデルベルグ大学病院)、Büning教授(ハノーファーメディカルスクール)、そして、Michalakis博士(ミュンヘンのルートヴィヒ・マクシミリアン大学)による専門的な見地を得ながらこの共同開発を推進してまいります。

 シリオンの創業者でありCEOのChristian Thirion博士は次のように述べています。

「我々のパートナーが有する学術的な洞察力と、我々のウイルスベクターにおける確固たる専門性と経験により、有効性と安全性が高く、応用性の高い製品候補で臨床試験を実施することを可能にします。本共同開発は我々にとっては、世界中の何百万人もの患者さんの視力回復に役立てるための遺伝子治療の重要な一歩に関わる機会となります。これこそがシリオン創業の目的です。」

 当社の代表執行役会長、社長兼最高経営責任者の窪田良博士は、次のように述べています。

「我々は、深刻な網膜疾患である網膜色素変性の患者さんへの新たな治療法確立を目指しており、この度のシリオンとの提携により、弊社が研究を進めているオプトジェネティクスによる遺伝子療法プログラムを発展させてまいります。」

 尚、本件の連結業績への影響は軽微でありますが、今後の業績に重要な影響が生じることが明らかになった場合には、速やかに開示いたします。

*1:Genetics Home Reference, retinitis pigmentosa (網膜色素変性). 閲覧日 2016年11月7日

 ウイルスベクターとは、治療する細胞に治療遺伝子を導入するために利用されるウイルス

*2:Vaidya P, Vaidaya A. Retinitis Pigmentosa: Disease Encumbrance in the Eurozone. Int J Ophthalmol Clin Res.2:030 (2015)

*3:National Human Genome Research Institute. Learning About Retinitis Pigmentosa. (網膜色素変性について) . 閲覧日 2016年11月7日

*4:ヒトロドプシンとは、人間の網膜にある桿体の視物質。暗所でも光を感知する働きがある

*5:カプシドとは、ウイルスの核酸を包んでいる外殻部分を構成するタンパク質

                                      以上

◆窪田製薬ホールディングス株式会社について

 当社は、世界中で眼疾患に悩む皆さまの視力維持と回復に貢献することを目的に、イノベーションをさまざまな医薬品・医療機器の開発および実用化に繋げる眼科医療ソリューション・カンパニーです。当社100%子会社のアキュセラ・インク(米国、シアトル)が研究開発の拠点となり、革新的な治療薬・医療技術の探索および開発に取り組んでいます。当社独自の視覚サイクルモジュレーション技術に基づく「エミクススタト塩酸塩」において糖尿病網膜症、スターガルト病、加齢黄斑変性への適応を目指し研究を進めております。また、白内障や老視(老眼)の薬物治療を目的とした「ラノステロール」の研究開発および網膜色素変性における視機能再生を目指す「オプトジェネティクス」に基づく遺伝子療法の開発を実施しております。同時に、加齢黄斑変性、増殖糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫の治療を目指し、「バイオミメティックス(生物模倣技術)」の研究開発も進めております。また、PBOSなどのモバイルヘルスを含む医療デバイスの研究開発も手掛けております。

(ホームページアドレス:http://www.kubotaholdings.co.jp

◆SIRION Biotech GmbHについて

 SIRION Biotechは、ライフサイエンス分野でウイルスベクターの戦略的研究開発を目的とするカスタムエンジニアリングサービスを提供しています。技術を専門としてドイツに拠点を置き、年に200件を超える小規模から大規模なプロジェクトを世界中のお客様に提供しています。シリオンは哺乳動物細胞の遺伝子組換えにおける治療および研究目的で用いられる3つの主要ウイルスシステム全てをカスタマイズする技術を有する、遺伝子デリバリーに特化した企業であり、がん研究、神経科学、再生医療、遺伝子治療、免疫腫瘍学において揺るぎない顧客基盤を築いております。

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