1分で装着可能、腰だけでなく腕の負担も軽減する補助スーツ

早稲田大学

早稲田大学理工学術院田中英一郎教授と旭蝶繊維株式会社は、持ち上げ動作時にゴムベルトおよび布の変形収縮により腕と腰を補助するスーツ「e.z.UP・イージーアップ」を開発した。日野自動車が協力し評価を担当、羽村工場での実験を開始する。

2018年10月10日

早稲田大学

1分で装着可能、腰だけでなく腕の負担も軽減する補助スーツ 

早大と作業服メーカーの旭蝶繊維が開発、日野自動車が評価協力

発表のポイント

●これまでの作業負担軽減装置は、腰のみを補助するものやモータなどのアクチュエータを使用した高価かつ高重量で長時間装着が難しいものがほとんどだった。

●本補助スーツは、腰だけでなく腕も補助し、1分で装着可能なうえに軽量で長時間装着可能。

●繊維や生地を熟知している旭蝶繊維株式会社との共同研究開発。今後、日野自動車の工場ラインで使用実験予定。

早稲田大学理工学術院の田中英一郎(たなかえいいちろう)教授の研究グループは、旭蝶繊維株式会社と共同で、持ち上げ動作時にゴムベルトおよび布の変形収縮により腕と腰を補助するスーツ「e.z.UP・イージーアップ」を開発しました。

現在、職業疾病の6割は腰痛といわれており、作業労働者の作業負担を軽減する各種補助装置が開発されています。特に、腰を屈めて物を持ち上げるときに、伸ばす腰の負担を軽減するようモータや空気圧などのアクチュエータを使用した装置がありますが、補助効果が高くても高価であり、また重量があるため長時間装着するのは困難です。これに対し、ゴムやばねなどを用いた補助スーツもいくつか開発され製品化されていますが、多くは腰のみを補助するものです。また現状の補助スーツは、一度装着すると自身で調整が難しく、長時間装着するとかえって疲れる可能性があるため、十分に普及しているとはいえません。

今回の研究では、過去に田中研究室で学生と開発した、物を持ち上げる際に腰や膝を曲げるとゴムベルトにより腕が持ち上げられる構造を基にして、上半身には袖が、下半身には背中から足裏までベルトがある補助スーツを開発しました。容易な構造のため、1分程度で装着可能です。これまでの実験では、本補助スーツを使用すると、持ち上げ動作時の上腕二頭筋と脊柱起立筋の筋活動の最大値が3~5割程度軽減しました。本補助スーツは、背面にある四角形の布が変形し、対角線の一方が延ばされると他方が縮むことにより、左右非対称の動作に柔軟に対応します。また、長さの異なる2層の伸縮性のある布が、少し腰を曲げたときには柔らかい1層目のみが作用し、深く腰を曲げると2層目も発動し、段階的に強く脊柱起立筋を補助します。現在、日野自動車にて評価を開始しており、今後羽村工場にて本補助スーツを実際の作業時に使用し、実際のラインでの評価を行う予定です。

本補助スーツは、物流、建設現場、工場ライン、農作業、介護などのあらゆるシーンで幅広く利用することが可能です。本補助スーツの着用により、作業者の負担が軽減し、少子高齢化による労働者不足の問題解決の一助になることが期待されます。

「e.z.UP・イージーアップ」は、10月10日から東京ビッグサイトで開催される国際福祉機器展および10月17日からパシフィコ横浜で開催される緑十字展の旭蝶繊維のブースに出展予定、2019年1月発売開始予定です。

詳細は早稲田大学ウェブサイトでもご確認いただけます。

https://www.waseda.jp/top/news/61668

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