光照射で物体を移動させる結晶ブラシの開発に成功 ~ゾウリムシの繊毛を模倣~

龍谷大学

2019年8月1日

龍谷大学

光照射で物体を移動させる結晶ブラシの開発に成功

~ゾウリムシの繊毛を模倣~

ドイツ化学会誌「Angew. Chem. Int. Ed.」に掲載

理工学部物質化学科 内田欣吾 教授

【本件のポイント】

●龍谷大学理工学部物質化学科の内田欣吾研究室は、光に反応して曲がるミクロサイズの棒状結晶を配列した基板の開発に成功

●この基板に物体を置き、一方向から光を照射すると、ちょうどゾウリムシの繊毛の挙動のように一方向に棒状結晶が曲がり物体を移動させること可能に。光で曲がる結晶を並べた基板で、物体を移動させる様式は世界初、今後光で遠隔操作できるソフトロボットへの応用などへも期待

●研究の成果は、ドイツ化学会「Angew. Chem. Int. Ed」の32号(8月6日発行)に掲載予定(Webでは既に公開)、Hot Paper(注目論文)、back cover(裏表紙)にも採択。(論文誌のカバーは、審査員の評価の高かった論文から採択)

光を照射すると屈曲する結晶は、2007年、九州大学の入江正浩 教授らにより開発され、光エネルギーを駆動力として用いる人工筋肉になりうると発表されました。この実験では、曲がる結晶に球体を接着し、光を当てると持ち上げる例が示されました。内田グループでは、物体を輸送する目的で、この曲がる結晶を基板上に並べて、光照射方向を変えることで物体をいかなる方向にも運搬しうるシステムの開発に着手しました。化合物は、入江教授らが用いたジアリールエテンの同族化合物ですが、この化合物は、内田が2004年に龍谷大学の海外留学制度で2016年ノーベル化学賞に輝いたオランダのFeringa教授の研究室に1年間滞在したときに内田自身が合成した化合物です。

この化合物は、合成時は1oで示すように開環構造をしていますが、紫外光を照射すると青色に着色した1cの構造に変わり、可視光を照射すると元の1oを再生する光スイッチ分子です(o: open-ring の頭文字、c: closed-ringの頭文字)。1oの昇華によりガラス基板上にドットを形成します。このドットを金蒸着した後、再度昇華すると、各々のドットから針状結晶が成長することを見出しました。この剣山の様に結晶が生えた表面に紫外光を照射すると、結晶は光から遠ざかる方向に曲がり、その上に置いたビーズも光から遠ざかるように転がりました。紫外線を照射する方向を変えると、ビーズが転がる方向も変わります。このような方法で、物体を転がす手法は世界的にも初めてで、今後は、ヒトが近づけない場面、例えば光で遠隔操作できるソフトロボットなどへの応用が期待されます。

■発表論文について

英文タイトル:Object Transportation System Mimicking the Cilia of Paramecium aurelia Making Use of the Light-Controllable Crystal Bending Behavior of a Photochromic Diarylethene

和訳: 光で結晶の屈曲制御可能なフォトクロミックジアリールエテン結晶を用いた、ゾウリムシの繊毛の挙動をまねた物体輸送システム

掲載誌:Angewandte Chemie International Edition, 2019, 58, in press. Selected as “Hot Paper” (アンゲヴァンテケミ―(応用化学)国際版) DOI: 10.1002/anie.201907574

URL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/anie.201907574

著者:西村 涼、安田伸広、森本正和、宮坂 博、横島 智、中村振一郎、Bernard L. Feringa, 内田欣吾

※詳細はPDFをご覧ください。

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プレスリリース添付画像

(a)この研究に用いたジアリールエテン化合物 (1oと1c) と(b)物体を転がす概念図

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