中央復建コンサルタンツ株式会社（以下、中央復建コンサルタンツ）、株式会社NTTドコモ（以下、ドコモ）、京浜急行電鉄株式会社（以下、京急電鉄）、横須賀市の4者は、5GとAIを活用し、鉄道インフラを　　　　　リアルタイムに遠隔から自動監視する実証試験（以下、本実証）に成功しました。2021年4月以降、本実証で構築したシステムのさらなる高度化と、鉄道事業およびその他領域における本格運用検討を行います。

■実証内容

　本実証は、2020年12月21日（月）～2021年2月12日（金）に京急電鉄の久里浜工場で実施しました。4K映像を5Gで伝送し、網内クラウド環境（MEC）にて高速AIディープラーニングにより解析した後、解析　結果を遠隔地にリアルタイム配信しました。検証では、通常時の車両監視と災害時を想定した線路点検を対象としました。車両監視では、固定4Kカメラとサーマルカメラで車両の床下機器を撮影し、台車の疑似的なき裂やブレーキパッドの摩耗、機器収容箱ハンドルの開き、車軸温度の上昇を検出しました。線路点検では、ドローン上の4Kカメラで線路を撮影し、飛来物などを想定した大きさ・形状の異なる障害物の検知をしました。各解析結果は、遠隔PCにリアルタイム配信しました。

■実証結果

　車両監視では、4K映像を5G伝送し、MECでAI解析後、遠隔地にリアルタイム配信するという国内初※の技術を用いて、映像の取得から遠隔地への配信まで、わずか0.94秒で実現しました。AI解析では、幅1mmの擬似的なき裂を検出し、ハンドル、ブレーキパッド、車軸温度は、試行ごとに対象の異常を見逃すことなく検出することに成功しました。

　線路点検では、ドローンとの通信に、Wi-Fiの構成だけでなく、ドローン上の5G端末（上空）と5G基地局（地上）が直接通信可能な構成を導入しました。5G端末の上空利用構成を用いた、リアルタイムでの4K　　映像のMEC高速AI解析・配信についても、国内初※の技術となります。各構成において、4K映像を5G伝送し、MECでAI解析後、遠隔地に配信するまで、わずか1.26～1.33秒で実現しました。AI解析では、10cm角の木片～身長170cmの人まで、試行ごとに対象の異常を見逃すことなく検出することに成功しました。

　5G端末の上空利用では、Wi-Fi区間を28GHz(ミリ波)の実験局に置き換えて検証を行いました。5Gの上空利用は、現状では設備や電波干渉調整などの課題がありますが、将来的には映像伝送と「無人地帯の目視外飛行」を通じた新たな産業創出（被災状況確認や医療、建設管理など)の可能性を秘めています。

■背景・将来展望

　本実証は、総務省事業「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証に係るインフラ分野におけるローカル5G等の技術的条件及び利活用に関する調査検討の請負」における「遠隔・リアルタイムでの列車検査、線路巡視等の実現」を、4者がコンソーシアムを組んで実施したものです。中央復建コンサルタンツとドコモはそれぞれの知見と技術を融合したインフラ維持管理システムを構築しました。京急電鉄と横須賀市はそれぞれ鉄道事業者、地方自治体の立場から本実証の支援と、より一層の安全性と作業効率化に向けた応用可能性を検討しました。また、外部有識者を招いた産学官協議会を開催し、鉄道業界をはじめとする多業種への技術展開に向けた検討を行いました。

　今後、中央復建コンサルタンツとドコモは、5Gと高速AIディープラーニング、4K映像配信、ドローンなどの先進的なデバイスを活用して、本格運用の検討を行います。鉄道事業における課題解決には京急電鉄と連携して検討を行うとともに、他の社会インフラにおける課題解決には横須賀市と連携して取り組むほか、他の事業者への水平展開を推進してまいります。

【本実証における各者の役割】

※　2021年3月26日現在、ドコモ調べ