News Letter Vol.1 新しい観光のパラダイム コロナ危機を克服できる国際交流の担い手を育てる

東洋大学 国際観光学部教授 越智良典

東洋大学

2021.10.12

東洋大学

News Letter Vol.1 

新しい観光のパラダイム

コロナ危機を克服できる

国際交流の担い手を育てる

東洋大学 国際観光学部教授 越智良典

 

2021年4月に行われた世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)の年次総会で、グロリア・ゲバラ会長(当時)は「私たちは2019年には戻らない。前へ進む」と挨拶しました。

東洋大学国際観光学部では、「新しい観光のパラダイム」と題し、コロナ危機を乗り越え、ツーリズム産業を前に進めるための手掛かりを示すコンテンツを連載していきます。テーマは「IR」「SDGs」「ライブエンターテインメント」「国際交流の復活」の4つです。本学部ではこれからも、変化に対応し、時代を切り拓ける人材を育成していきます。

 

 2021年9月に閉会した東京五輪・パラ大会には難民選手団を含め206ヶ国・地域の選手や関係者が日本を訪れました。羽田空港国際線ターミナルビルに設けられた絵馬のコーナーには「Thank you Japan, warmth of Japanese people」など日本への感謝が書かれたメッセージであふれていました。(写真 羽田空港ビルディング提供)選手や報道関係者を通じて、日本の魅力を世界にアピールできたことは間違いないと思います。

 

ワクチンで交流復活の兆し

 さて、本格的な国際交流はいつ再開するのでしょうか?

 IATA(国際航空運送協会)は国際観光がコロナ危機から回復し、成長軌道に戻る予測を1年前倒しし、2023年としました。そして、アメリカ、イギリス、中国などではすでに国内需要が回復し、航空業、ホテル業で黒字化する会社もでてきています。

 

 これは、コロナ変異種の流行にかかわらず、アメリカ、フランス、イギリスなどすでにワクチン完全接種率が50%を超えている国では、死亡率や重症化率などのリスクが大きく下がると言われているためです。これらの国は、国内の行動規制を緩和するだけでなく、出入国の制限も緩和しはじめています。ワクチン接種証明書または72時間以内のPCR検査証明書などを提示することで入国でき、行動の制限もありません。

 

 日本のワクチン完全接種率(2回接種)は10月7日現在62.7%となり、先行する欧米に急速に追いつきました。そして、ワクチン接種や陰性の検査を前提に国内の移動の制限を見直す検討が始まっています。国際往来の再開方法についても検討する時期にきていると思います。

 

デジタルヘルスパスポートが鍵

 その際に鍵となるのは、ワクチン接種証明書です。日本でも7月26日から発行され、10月6日現在46ヶ国・地域で入国での使用が認められています。ただ、各国がそれぞれの書式で証明書を発行していたのでは、出入国手続きに大変な時間がかかりますし、偽造の問題も起きます。そこで、世界ではスマホのアプリで、ワクチン接種履歴やPCR検査など必要情報が一元管理できるようなデジタルヘルスパスポートの開発が進んでいます。

 

 コロナが終息するのが一番ではありますが、ワクチンを接種し、デジタルヘルスパスポートを持って、旅行する時代が訪れようとしています。日本もこの流れに遅れないようにすべきでしょう。

 

大学が果たすべき役割

 コロナ危機において、大学の教員として心がけているのは、ツーリズム産業を復活させる提言をしていくこと、そして、危機を乗り越え変化に対応できる人材を育てることです。実際、本学部の一部のゼミでは、コロナ禍における観光需要をどのように掘り起こしたらいいのかを考えていくことが始まっています。

 

 21世紀の国際ツーリズムはテロ、自然災害、感染症の3大リスクをどう乗り越えるかが重要課題です。得体の知れない恐怖を、正しく恐れ乗り越えるには情報が必要です。東洋大学は、明治時代に迷信を分析してその打破に務め、妖怪博士と呼ばれた井上円了が創立者です。危機に強い国際観光の担い手を輩出できるよう努めています。

 

越智 良典

東洋大学国際観光学部 教授

専門分野:観光経営

研究キーワード:  リスクマネジメント、問題解決型ビジネスモデル、二国間交流 

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