法改正で後押しなるか? 「男性育休」取りやすい環境づくり

積水ハウス

2022年6月20日

積水ハウス株式会社

本来夫婦でシェアすべき家事や育児ですが、妻に負担が偏りがち

 

 

制度は整っていても取得進まず “男性育休”の課題とは

育児・介護休業法が改正され、子どもが産まれる従業員に対して、2022年4月から育児休業制度の周知や取得意向の確認などが企業に義務付けられました。また10月からは産後パパ育休(出生時育児休業)制度もスタート。子どもが産まれた後8週間以内に4週間まで休むことができるようになり、男性の育休取得を促進する動きが進んでいます。

 

しかし、厚生労働省の調査では、2020年の育休の取得率は、女性が81.6%に対して男性は12.7%と(※1)、女性の社会進出や共働き世帯の増加などで「家事や育児は女性がする」という固定観念は徐々に変わってきたものの、男性が育休を取るのは当たり前ではないのが現状です。

(※1)厚生労働省「2020(令和2)年度雇用均等基本調査」より

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r02.html

 

世界的に見ると、日本の「育休制度」は充実しているとの見方も。

2021年に国連児童基金(ユニセフ)が発表した報告書では、父親に認められている育休の期間が最も長いなどの理由から、日本の育休制度を世界41ヵ国中1位と評価しています(※2)。一方で、男性の就学前教育や保育への参加率は31位と、取得が進んでいない理由は、制度面以外にあることがうかがえます。

(※2)ユニセフ報告書「先進国の子育て支援の現状(原題:Where Do Rich Countries Stand on Childcare?)」より

https://www.unicef.or.jp/news/2021/0127.html

 

積水ハウスでは、2021年に男性育休の実態を明らかにするため「男性育休白書 2021 特別編(※3)」を発行。男性の育休取得に賛成する人が全体で9割近くとなっているものの、経営者・役員の約4人に1人は反対しており、経営層の理解の低さも課題となっていることがわかりました。

(※3)積水ハウス「男性育休白書 2021」

https://www.sekisuihouse.co.jp/ikukyu/

 

世代間で差がある男性育休への理解度

 

 

部長クラス以上のマネジメント層でも意見が分かれるようで、男性の育休制度を促進させる予定が「ある」と「ない」の回答者がほぼ半数という結果に(「促進予定」52.3%、「促進予定なし」47.8%)。促進しない理由を聞くと、「企業規模が⼩さい」「従業員の⼈数が少なく、休業中の従業員の代替要員の⼿当ができない」「休業する従業員以外の従業員の負担が⼤きい」などが挙げられ、部下に取らせたいものの、快く後押しできない切実な事情を抱えているようです。

 

マネジメント層が「男性従業員の育休取得を促進しない理由」

 

 

部下の育児参加を後押ししたいものの、業務を考えると気持ちよく背中を押せない…

そんなジレンマがありそうです

 

 

育休取得で“妻の大変さ”を実感 復帰後も家事育児分担を継続

このように注目はされているものの、課題も多い男性の育休取得。

実際に育休を取った人は、どのように感じているのでしょうか。

 

積水ハウスの従業員で住宅設計を担当する根岸 佑樹も男性育休の取得者。長男・次男が産まれた時に、育休をそれぞれ1ヵ月取りました。積水ハウスでは2018年から男性従業員の1ヵ月以上の育休の取得に取り組んでいますが、長男の時は、制度が始まってからまだ半年程度しか経っていなかったということもあり、自身の業務の調整や、職場での引き継ぎなど、不安を抱えながら手探り状態だったそうです。

 

「ただ、お客様に育休を取得することを伝えると、『良い会社ですね』と言ってもらえることもあり、ご迷惑をかけてしまうと思っていたお客様からもご理解を得られることに気づきました。」

 

二人の息子の育休を取得した積水ハウスの根岸

 

 

第二子の育休の取得の際には、休業前の引き継ぎなど、スムーズに進み、休業中は会社の携帯電話を見ることもほとんどなくて済んだと言います。

「第一子のときの取得経験により、その前後の業務調整のコツをつかんでいたほか、何より職場の仲間も休業を取得する人の業務のフォローに慣れてきています。このメリットは育児休業だけではない、会社としての大きな変化だと思います」

 

遊び盛りの子どもたちにとって、お父さんとの外遊びの時間も今だけの貴重な思い出

 

 

また家庭でもプラスの変化が…。

育休を取ることで、子どもとの時間も多く持つことができ、子どもとの距離が縮まったとのこと。加えて、それまで家事育児を任せっきりだった妻の大変さを痛感し、育休が終わり通常の業務に戻っても、自宅にいる時間は家事を積極的にするようになりました。

 

「『この家事は妻の担当』といった役割分担意識の垣根が減り、前より助け合うようになりました。また、育児や家事などにしっかりと携わることで、それが住宅の設計に活かせるようになりますし、同世代のお客様に自身の経験をもとに話せるようになりました。」

 

長男の宿題を見るのも大切な育児 子どもの成長を感じます

 

 

業務の見直し・女性活躍・介護との両立など 男性育休は課題見直しのきっかけに

積水ハウスグループの男性育休制度は、最初の1ヵ月は有給休暇で、また4回まで分割ができるようになっており、2022年5月末時点で1,319人の男性従業員が1ヵ月以上の育休を取得し、2019年の制度開始以来、取得率は100%が続いています。

 

このように、男性の育休取得を積極的に推進しているのは、社長の仲井嘉浩が2018年にスウェーデンを訪れたことがきっかけ。視察の際、公園でベビーカーを押している男性をたくさん見かけ、話を聞いてみると、スウェーデンでは男性が3ヵ月の育休を取得するのが当たり前だということを聞いて衝撃を受けたと言います。「自社にも男性が育休を取れる仕組みを作りたい」と考え、帰国後2ヵ月ほどで、制度を設計し社内外に発表しました。

 

スウェーデンでは男性の育児休業が浸透しており、街中で男性がベビーカーを押す風景が一般的に見られる

 

 

またこの取り組みで得たメリットや課題などの気づきを世の中に還元して、男性の育休取得を日本全体に広げたいとの思いから、9月19日を「育休を考える日」と記念日として制定し、毎年9月には「男性育休白書」の発表や、WEBフォーラムなどを通じて、男性育休についての議論を広く公開しています。

 

2018年9月、男性の育児休業の意義を取得対象者とその上司に向けて社内に伝える社長の仲井

 

 

また、「とるだけ育休」にならないよう、育休中の質を向上させることが必要不可欠だと考え、積水ハウスグループでは、会社に提出する「取得計画書」のほかに、妻とのコミュニケーションツールとして「家族ミーティングシート」を作成し、家族内のコミュニケーションを促しています。

 

男性も育休を取ることで、業務上でもメリットがあります。

育休前の業務引き継ぎを通じて、業務の内容の見える化や見直しが進むこともあるほか、育休を取った経験から「助け合い」「お互いさま」といった感謝の気持ちが芽生え、他の従業員が休みを取るときにフォローするようになります。女性の社会進出・家事育児の両立への理解が深まったり、今後やって来る“大介護時代”を見据えた仕事と介護の両立について考えたりする機会にもつながります。

 

積水ハウスの調査でも、子どもを授かったら育休を取りたいという男性、パートナーに育休を取ってほしいという女性は、8割(80.4%)に上るなど、男性育休の取得に意欲的な人は多くいます。

男性の育休取得には、周囲の理解も必要不可欠。もし皆さんの周りでパートナーの出産を控えた男性の同僚がいたら、職場で育休を取得しやすいようお声がけしてみてはどうでしょうか。

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