EY調査、悪条件にもかかわらずテクノロジー企業のM&A意欲が2023年に再燃する見通し

『2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10』を発表

EY Japan

・M&A戦略が2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10の首位

・自国志向:テクノロジー企業の78%がサプライチェーン関係解消を現在計画中

・就業者ディスラプションが強まる中、ベスト人材の流出を防ぐ必要性が増大

 

EYは最新のレポート『2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10(以下、「本調査」)』を発表したことをお知らせします。テクノロジー企業は現在、インフレの高まり、エネルギー危機、消費者の購買意欲の減退といった課題に直面しています。本調査によると、テクノロジー企業の2023年の最大のオポチュニティは、積極的なM&A(合併と買収)戦略を取り入れることです。今後、テクノロジー企業のM&Aディールへの意欲が再燃することが見込まれます。それは、企業価値評価(バリュエーション)が下がっているからです。CEOを対象にした別のEY調査*¹によると、今後1年のうちにM&Aを行う予定だと回答したCEOは、全セクター平均では59%だったのに対して、テクノロジーセクターでは72%となっており、このことが裏付けられています。 

 

EYグローバルTMT・ストラテジー・アンド・トランザクション・リーダーのOlivier Wolfのコメント:

「M&Aディール市場は、マクロ経済上の向かい風および金融市場のボラティリティのため減速してます。しかし、企業の買い手の中でも強いバランスシートを持つ買い手にとっては、これはオポチュニティの改善につながりました。プライベートエクイティが何千億米ドルもの資金を市場に投入しているため、M&Aのターゲット企業をめぐる競争が、2023年には再び激しくなることが見込まれす。トランスフォーメーションを目的とした買収(Transformative acquisiton)は、テクノロジー企業を新たな市場、またはヘルステックのような、テクノロジーセクター隣接のニッチな市場へと押し出していくでしょう。また、テクノロジー企業は、買収企業のEPS(1株当たり利益)を向上させる買収(accretive acquisition)によって、現在のポートフォリオを人工知能(AI)などの最先端テクノロジーでより盤石にできる可能性があります」

 

サプライチェーンの変革:

過去数年にわたって行われてきたサプライチェーンの改善は、世界の政治状況と経済・財政情勢の悪化のため、行き詰まりをみせています。テクノロジー企業がローカリゼーションにより強くコミットすることで、地政学的に不安定な地域への依存を減らすことが、2023年のビジネスオポチュニティ・トップ10で3位となりました。テクノロジー企業の経営層も、これに賛同しています。あるEY調査*²によると、テクノロジー企業の経営層の78%が、ニアショアリングやリショアリング(製造拠点の国内回帰)を行うなど、現在のサプライチェーン関係性の解消を計画しています。 

 

EY Americas TMT リーダーのKen Englundのコメント:

「地政学上の紛争や自然災害がもたらす構造的リスクに対応するには、昨年行われたようなサプライチェーンにおけるリストラ努力だけでは不十分です。テクノロジーセクターが今やらなくてはならないことは、ビジネス拠点を複数の国や地域に分散させることです。それには大掛かりな投資が必要となります。各国の政府は、法規制面でのサポートや資金援助を通して、こうした企業を支援していくことと思われます。そして、避けられないコスト増大にひるむことなく投資を行ったテクノロジー企業は、最終的には報われるはずです」

 

ベスト人材の流出防止:

2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10で第9位となったのが、アジャイルな人材戦略を確立することです。つい数か月前までは、従業員の「大量退職」が、テクノロジー企業にとって最大の人材関連課題でした。あるEY調査*³によると、働き方の優先順位がコロナ禍で変化したことが誘因となって、テクノロジーセクターで働く従業員の56%が、給与のより高い会社、ウェルビーイングのプログラムがより充実している会社、そして新しいキャリアを求めて、現在務めている会社を辞めることを考えていると回答していました。現在は状況が変化し、テクノロジーセクターは、長期的成長を加速させるため人材不足の問題を解決しなくてはならないだけでなく、経済の不確定要素に呼応して雇用凍結やリストラ断行にも取り組まなくてはならない状況です。

 

EYグローバル TMT ピープルアドバイザリーサービス・リーダーのSusan Robinsonのコメント:

「この複雑な状況の中で、企業は従業員構成のバランスを保たなくてはなりません。そのためには、最高の成果を上げることのできる従業員の離職を防ぐための手段を講じ、ハイブリットな働き方(出社と在宅勤務の組み合わせ)の枠を広げ、ダイバーシティの確保されたチームとインクルーシブなカルチャーを醸成し、従業員が新たに抱える懸念に対応していく必要があります。また、褒賞やウェルビーイングに配慮した魅力的な報酬パッケージを採用すること、およびキャリアの枠組みを修正して、従業員に社内でさまざまな職務を経験する機会を与えるといった内部モビリティ(配置転換)をサポートすることが、含まれてなくてはなりません」

 

サステナビリティ関連情報開示とエッジコンピューティング:

本調査はさらに、テクノロジーセクターが2023年、環境サステナビリティ(ランキングの4位)の影響を2022年以上に受けることを予想しています。これは、新たに制定された、温室効果ガス排出および気候変動リスクに関する情報開示の法規制を遵守するよう、企業が適応を求められているからです。2023年ビジネスオポチュニティに初登場で7位にランクインしたのが、新しいITアーキテクチャーへの投資を積極的に行うテクノロジー企業では、エッジコンピューティングが2023年に成熟度の最高レベルに達成する可能性です。 

 

2023年におけるテクノロジー企業のビジネスオポチュニティ・トップ10の全ランクは以下の通りです。

 

1.M&A戦略の実行を加速して成長図を強化する

2.マーケットにディスラプションをもたらすため、新しいプラットフォームエコシステムを試みる

3.コスト増につながるとしても、ローカリゼーションに強くコミットする

4.環境サステナビリティを優先させる

5.都度払いシステムを導入して、補完的な収益ストリームを惹きつける

6.最大の収益を得るためにアナリティクスのツールを活用する

7.オペレーションおよびエクスペリエンスを向上させるため、エッジコンピューティングのエコシステムに投資する

8.サイバー…データ保護を確実にする

9.リソースを自社のニーズとマッチさせるためアジャイルな人材戦略を推進する

10.国際的な最低法人税率15%の適用に備える

 

EY Japan テクノロジー・メディア & エンターテインメント・テレコムリーダー 尾山 哲夫(おやま てつお)のコメント:

「日本企業において今すべきことは、事業戦略とデジタル人材採用戦略との連携、統合です。エマージングテクノロジーによる新しいビジネスの創造、そしてオペーレションモデルの強化においてデジタル人材が必要とされるなど、今や全ての企業活動にデジタル人材は不可欠であり、デジタル人材の獲得に対して企業は人事部のみにその責任を負わせるのでなく、全社的な活動とするべきです。加えて企業はデジタル人材の採用、活用を事業戦略とも統合することでその効果を増大させることができます。ただし、そこには『組織の壁』が存在しており、この『壁』を壊すことができるか否かが、競争力を勝ち得る鍵と考えます」

 

*¹ EY 2022 CEO Outlook Survey, Technology edition

*² EY Technology operating model transformation study 2022

*³ EY 2022 Work Reimagined Survey

 

※本プレスリリースは、2022年12月8日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

 

英語版ニュースリリース:EY report predicts appetite for tech deals will return in 2023, despite adverse conditions

 

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