血圧管理の最新の知見と研究成果の啓発を続けて35周年

第35回血圧管理研究会を開催

2023/11/29 14:00

オムロンヘルスケア株式会社（本社所在地：京都府向日市、代表取締役社長：岡田歩、以下当社）は血圧管理に関する最新の知見を討議し、広くその研究成果の啓発をはかることを目的に、「血圧管理研究会」を毎年開催しています。血圧管理研究会は、元聖路加国際病院理事長　日野原重明先生（当時、以下日野原先生）を代表世話人として1988年に発足し、今年で35回目を迎えます。

世界の死因第一位は、心不全や脳卒中などの循環器疾患といわれています。その要因のひとつが「高血圧」です。当社は、家庭で計測したデータを個人の健康管理から診療まで活用することを目指し、家庭で簡便に測定できる血圧計の開発に着手。1973年に血圧計の第一号機を発売しました。しかし、当時は「血圧測定は病院で行うもの」とされており、家庭で血圧を測ることは一般的ではありませんでした。一方で、日野原先生は「家庭で血圧を測定することで自身の健康への関心が高まり、脳卒中などの重篤な病気の予防に役立つ」という予防医学の考えのもと、1970年代から血圧の自己測定について講演活動をされていました。1980年代に入ると生活習慣病への関心が集まるとともに高血圧研究の重要性も高まりました。当社は血圧計の開発に加え、家庭血圧の普及と管理に関する研究を推進するために、日野原先生の協力のもと1988年に血圧管理研究会を設立しました。血圧管理研究会は、家庭血圧普及の啓発活動に欠かせない医師や研究者の交流の場として、2023年の現在まで毎年１回の研究会を開催してきました。そして、様々な研究で家庭血圧の有用性が立証された結果、2014年に発行された高血圧治療ガイドラインに「診察室血圧と家庭血圧に差がある場合は家庭血圧を優先して高血圧治療を行なう」と記載され、家庭血圧は高血圧診療において重要な指標となりました。

しかしながら、現在日本に4300万人いるといわれている高血圧者のうち、血圧管理が適切にできている方が1200万人に留まると推計されています。*1　当社は、脳・心血管疾患発症ゼロ（ゼロイベント）の実現に向けて、これからも血圧管理研究会を通じてより多くの医師や研究者に向けて血圧管理の重要性を伝えていくとともに、高血圧診療に向けた新たな機器やサービスを開発していきます。

*１日本高血圧学会　高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)

一般財団法人ライフ・プランニング・センター　理事長　久代登志男先生

35年前に血圧管理研究会が発足した当時は、参加者が少なく苦労したこともありました。しかし、年ごとに注目するテーマを決めて討議するテーマセッションを設けるなど、世話人の方々のアイデアとご尽力、さらにオムロンヘルスケアの方々による啓発活動のおかげで、応募演題数と参加者は徐々に増え、現在一般演題は選考委員会で選択するようになっています。

今日では家庭血圧を測ることが当たり前の時代となっています。病院やクリニックでの診察室血圧と共に家庭血圧の良好な管理が将来の心不全や脳卒中などの予防に有用なことは明らかにされています。また、健康診断などでの血圧が120~139/80~89mmHgの方々は、正常高値～高値血圧と呼ばれ生活習慣の改善により高血圧を予防することが望まれます。日本は世界で最も健康診断が普及しており、医療へのアクセスも容易な国です。しかし、残念なことに世界の高所得12ヶ国を比較した報告では、日本における高血圧患者さんの診察室血圧の降圧目標達成率は最も低いグループに入っています。

高血圧患者さんのみならず、健康診断などで血圧が高めの方々が、家庭血圧を測ることは、ご自身の血圧を知ることを通じて医療に参加することになります。さらに、医師、看護師、薬剤師などの医療者がチームとなり支援できれば、より良い高血圧治療と高血圧の予防に役立つはずです。そのために、血圧管理研究会が多くの医療関係者で血圧と血圧管理について考え、討議する場であり続けることを通じて、より良い血圧管理に役立つことを願っています。