真夏の製品事故アラート ~モバイルバッテリー・携帯用扇風機・着火剤の取扱いに注意~
梅雨が明けたらいよいよ夏本番!アウトドアでの活動も増えてきます。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、夏に気を付けていただきたい製品事故を3件紹介し、注意を呼びかけます。
今回ご紹介するのは
・スマートフォンの充電などに活躍する「モバイルバッテリー」を、夏の炎天下に、自動車内に置いたままにすることによって発火する事故。
・屋内外で手軽に涼める夏の必需品「携帯用扇風機(※1)」を、落下等の雑な取扱いをしたことによって破裂や発火する事故。
・バーベキューの火起こしに使用する「着火剤」を、弱まった火の勢いを強めるため継ぎ足してしまったことで起こるやけど事故。
の3選です。
これから夏本番を迎える前に、製品事故による思わぬ被害を未然に防ぐため、事故防止のポイントを確認しましょう。
(※1) 本資料では、充電式の持ち運び可能な扇風機を携帯用扇風機としています。
1. モバイルバッテリーの事故
モバイルバッテリーなどリチウムイオン電池を使用している製品は、熱(暑さ)が苦手です。暑くなりやすいところや、直射日光が当たるようなところに放置すると、バッテリーが熱暴走して、発火に至るおそれがあります。
■自動車内に置いていたモバイルバッテリーから出火した事故
事故発生年月 2021年 8月(鹿児島県、50歳代・女性、拡大被害(※2))
【事故の内容】
自動車内に置いていたモバイルバッテリー付近から出火し、周辺を焼損した。
【事故の原因】
焼損が著しく、詳細な使用状況等が不明であり、原因の特定はできなかったが、長期使用(約8年)
でリチウムイオン電池が劣化していたことに加え、高温の車内にモバイルバッテリーが置かれていた
ことから電池セルが異常発熱して発火した可能性が考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
モバイルバッテリー 自動車内
(※2) 製品本体のみの被害(製品破損)にとどまらず周囲の製品や建物(車両)などにも被害を及ぼすことを指します。
モバイルバッテリーで気を付けるポイント
○夏場、特に高温となる自動車内や直射日光の当たる窓際などに放置しない。
日本自動車連盟(JAF)の試験によりますと、真夏の車内はかなり高温になります。車を離れるときは、モバイルバッテリーなど、リチウムイオン電池を使用している製品を車内に放置しないようにしてください。特に直射日光が当たっているとダッシュボードの上の温度は70℃を超えることがあります。
なお、事故は真夏以外でも、天気の良い暑い日に発生しております。真夏が過ぎた後であっても、車内放置は避けてください。
引用:JAF 真夏の車内温度(ユーザーテスト)から。 テスト日2012年8月、晴れ、気温35℃
https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test/temperature/summer
モバイルバッテリー 車内に放置して発火
(再現映像 撮影協力:株式会社GENKI LABO、新潟市消防局)
2. 携帯用扇風機の事故
リチウムイオン電池を搭載した携帯用扇風機が普及していますが、外部からの強い衝撃で電池内部が破損すると、破裂や発火につながるおそれがあります。
■携帯用扇風機のバッテリーショートによる破裂事故
事故発生年月 2020年08月 (大阪府、40歳代・女性、製品破損)
【事故の内容】
充電中の扇風機付近から異音がして出火し、焼損した。
【事故の原因】
リチウムイオン電池が内部ショートして異常発熱し、焼損したものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
携帯、扇風機
携帯用扇風機で気を付けるポイント
○落とすなど、強い衝撃を与えない。
外部からの衝撃で、リチウムイオン電池内部の正極、負極を隔てる絶縁フィルム(セパレーター)が破れ、ショートすることにより異常発熱が起こり、内圧が上昇して電池が破裂・発火する場合があります。落とすなど、強い衝撃を与えないようにしてください。
異常発熱のメカニズム
(再現映像)破損してそのまま使っていると破裂のおそれ
〇強い衝撃を与えてしまった後に異常を感じた場合には、直ちに使用を中止する。
以下のような異常が見られたときは、直ちに使用を中止して、購入店又は製造・輸入事業者の修理窓口に相談してください。
・充電が行われない。
・充電中にこれまでよりも熱くなった。
・外装が膨張し、変形した。バッテリーパックが膨張した。
・不意に電源が切れた。
また、上記のような異常が発生した場合は、発火、破裂などの事故に備え、携帯用扇風機を金属製の缶などの保管容器に入れて保管することが望まれます。
保管容器の例
事業者による必要な措置が取られるまでは、決してごみとして携帯用扇風機を廃棄しないでください。なお、事業者による適切な措置が取られた結果、ごみとして廃棄する場合には、お住まいの自治体の指示に従った分別等を行ってください。
●万が一、発煙・発火したときは。
消火器での消火や大量の水を掛けるなど被害の拡大を防いでください。大きな火炎により対処が困難と判断した場合は、直ちに避難するとともに119 番通報してください。
3. 着火剤の事故
夏のレジャーの1つとして、バーベキューを思い浮かべる方もいらっしゃるかと思います。NITEへの報告事例は近年ありませんが、バーベキューの火起こしに絡む死亡事故が発生しています。改めて火起こしに潜む危険性についてご紹介いたします。
■着火剤を継ぎ足してやけどを負った事故
事故発生年月2003年4月(大阪府、20歳代・女性、重傷 複数人)
【事故の内容】
公園でバーベキューをしていて、一旦中断した後、再開しようと残り火があるところにゼリー状の
着火剤を使用したところ、「ボン」という音がし、直後に2〜3メートル離れた場所にいた女性の衣服
が燃え、他の2名も軽いやけどを負った。
【事故の原因】
着火剤はメチルアルコールを主成分としたもので、揮発性があり引火しやすいことから、わずかな炎であっても、着火剤に火がつく前に揮発成分に引火し、続いて着火剤が急激に燃焼されることによって飛び散る等の可能性があるため、製品本体に燃焼中の継ぎ足しを禁止する旨が表示されているが、残り火がある状態で継ぎ足したため、着火剤が急激に燃焼し飛散した炎が衣服に着火したものと考えられる。
【SAFE-Lite検索キーワード】
着火剤
着火剤で気を付けるポイント
○一度火を点けたら、着火剤の継ぎ足しをしない。
既に火が点いている炭に着火剤を継ぎ足した場合、大きな炎が上がり、やけどや火災に至る場合があります。 絶対に着火剤の継ぎ足しはしないでください。特に炎天下では着火剤の炎が見えにくいため、気づいたときには重傷になることがあります。
着火剤の継ぎ足しで着衣着火
危険な着火剤の継ぎ足しをしたことのある人は、炭・薪でのバーベキュー経験者では3割を超えるとの調査結果(※3)もあります。
(※3)消費者庁 News Release H27年7月29日 「バーベキューにおける食中毒・火傷に注意!」
バーベキューにおける食品衛生に関する消費者意識の実態調査 設問Q14
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/150729kouhyou_1.pdf
チューブ式やパウチ式の容器で販売される着火剤には、継ぎ足しを禁止する警告文が付けられているものが多いので、お使いになる前によく読んで注意して使いましょう。
○消毒用アルコールを着火剤として使用しない。
新聞紙などに消毒用のアルコールを染み込ませ着火剤として投入した場合や直接火元にアルコールをかけた場合、急激かつ爆発的に燃え上がり大変危険です。昨年5月には死亡事故も起きています。
「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト」のご紹介
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
今回の注意喚起動画はこちら
>> モバイルバッテリー「7.高温下に放置して発火2」
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 独立行政法人製品評価技術基盤機構
- 所在地 東京都
- 業種 政府・官公庁
- URL https://www.nite.go.jp/
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