ORAL-MAPS\オーラルマップス®を活用して、咀嚼能力検査用グミゼリーの物性計測に貢献

飲み込める状態にするには噛む力に加えて唾液が関与、物性によって影響要因が異なることも確認

meiji

ORAL-MAPS\オーラルマップス®を活用して、歯科医院などで使用される 咀嚼能力検査用グミゼリーの物性計測に貢献

飲み込める状態にするには噛む力に加えて唾液が関与、物性によって影響要因が異なることも確認

~日本老年歯科医学会第35回学術大会にて発表~

 

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)は、株式会社ジーシー※1(代表取締役:篠﨑 裕)と共同で、咀嚼プロセスシミュレータであるORAL-MAPS\オーラルマップス®※2を活用し、咀嚼能力検査用グミゼリー(以下、グミゼリー)を咀嚼して、飲み込みやすい状態へ処理する食塊形成※3に影響を及ぼす要因を確認しました。本研究の結果、グミゼリーの物性に応じて食塊形成に必要な要因が異なることが明らかになりました。本研究成果を、2024年6月28日~6月30日に開催された、日本老年歯科医学会第35回学術大会にて発表しました。

 

【研究の目的】

 ORAL-MAPS\オーラルマップス®を活用し、グミゼリーとその試作品の食塊形成をすることで、グミゼリーの物性の特徴の理解と開発に資する基礎的知見の獲得、食品分野以外での新たな活用を目的としました。

 

【研究成果の概要】

・ORAL-MAPS\オーラルマップス®が、咀嚼能力を検査するための商品の物性計測にも適応可能であることが明らかになりました。

・グミゼリーとその試作品4種において、物性によって食塊形成に必要な要因が異なり、「やわらかい」物性を持つものは圧縮力※4の影響を、「かたい」物性を持つものは圧縮力に加えて人工唾液※5の添加も有意に影響を与えることを確認しました。

・グミゼリーに関して、9つの異なる条件で圧縮した際の粒子の形状を観察した結果、圧縮力が弱い場合には人工唾液添加速度の影響を受けて粒子が小さくなる様子と、人工唾液添加速度が少ない場合には圧縮力の影響を受けて粒子が小さくなる様子が確認できました。

 

【研究成果の活用】

 グミゼリーの物性を理解することは、より咀嚼能力の検査精度が高いグミゼリーの開発に有用だと考えられます。食品に限らず、健康に寄与する咀嚼能力を検査・訓練する商品の開発へ貢献が期待されるとともに、物性と咀嚼機能との関係性を理解することや、食塊形成に影響を及ぼす咀嚼機能に関する考察をより深め、商品開発にも活用してまいります。

 

※1 株式会社ジーシーは、歯科材料および関連機械・器具の製造販売を行っている企業です。咀嚼能力を簡便に測定可能な咀嚼能力検査用グミゼリー(グルコラム)などの商品も販売しています。

※2 学校法人日本医科大学の発明(特許第5062590号:発明者 小竹佐知子教授)のライセンス技術を使用しています。

※3 食物を口腔内で咀嚼することで食物を細かく粉砕しつつ唾液と混ぜ合わせながら飲み込める状態にすることを食塊形成と呼びます。

※4 ORAL-MAPS\オーラルマップス®のパラメータの一つであり、食品に加える力のことを圧縮力と呼んでいます。ヒトの咀嚼の要素のうち、噛む力の機能を担います。

※5 ORAL-MAPS\オーラルマップス®のパラメータの一つであり、ヒトの唾液の粘度を再現した人工唾液を食塊形成の過程を再現する際に添加しています。ヒトの咀嚼の要素のうち、唾液の添加の機能を担います。

 

発表内容

【タイトル】

 咀嚼プロセスシミュレータを活用した咀嚼能力検査用グミゼリーの物性検討

【方法】

 咀嚼能力検査用グミゼリーとその試作品4種の計5種を試料とし、代表的なORAL-MAPS\オーラルマップス®の条件(圧縮力400N、人工唾液添加速度4.0mL/min)で各試料が十分処理されるまでの圧縮回数を計測し、物性の違いを理解しました。

 ORAL-MAPS\オーラルマップス®の圧縮力を3条件(50、200、400N)、人工唾液添加速度を3条件(0.5、1.0、2.0mL/min)に設定し、各試料が十分に処理されるまで圧縮粉砕しました。

 各試料が十分に処理されるまでの圧縮回数を目的変数、圧縮力と人工唾液添加速度を説明変数として重回帰分析を行い、それぞれの関係性を解析しました。

 咀嚼能力検査用グミゼリーの現行品のより詳細な物性特徴を理解するために、ORAL-MAPS\オーラルマップス®で9つの異なる条件で圧縮した際の粒子の形状を観察しました。

 

【結果および考察】

 咀嚼能力検査用グミゼリーとその試作品では、ORAL-MAPS\オーラルマップス®を用いて十分に処理されるまで圧縮した時の総力積から、試作品Aが最もやわらかく、試作品Dが最もかたい物性を持つ傾向にあることが分かりました(図1)。重回帰分析の結果から各試料の圧縮回数は、圧縮力の増加に伴い減少し、有意な負の相関を示しました。さらに、5種の中でもかたい物性を持つ試作品2種類は、人工唾液添加速度と有意な負の相関を示しました。咀嚼能力検査用グミゼリーの食塊形成には、やわらかいものは圧縮力に、かたいものは圧縮力に加えて人工唾液添加速度に依存することが分かりました(表1)。

 また、ORAL-MAPS\オーラルマップス®の設定条件変更による咀嚼能力検査用グミゼリーの粒子体積の変化から、咀嚼能力検査用グミゼリーは、圧縮力が弱い場合には人工唾液添加速度の影響を受けて粒子が小さくなる様子と、人工唾液添加速度が少ない場合には圧縮力の影響を受けて粒子が小さくなる様子が確認できました(図2)。

 

 

図1.  咀嚼能力検査用グミゼリーとその試作品4種の圧縮終了までの総力積

 

 

表1. 圧縮粉砕回数に対する重回帰分析の結果

 

     P値:0.05よりも小さいと統計的に有意差があると判断し、

        やわらかいものは圧縮力に、かたいものは圧縮力に加えて人工唾液添加速度に依存することを示す

 

 

図2.  ORAL-MAPS\オーラルマップス®の設定条件変更による 咀嚼能力検査用グミゼリーの粒子体積の変化

 

 

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