電通総研、気候不安に関する10か国調査に初めて日本から参画

日本のZ世代、約7割が気候変動に「不安」を感じるも、具体的な心配は他国に比べて低いことが浮き彫りに。

電通グループ

2023/3/22 11:10

 dentsu Japan (本拠地:東京都港区、 CEO :榑谷 典洋)の組織である電通総研(所長:松尾 秀実)は、「世界気象デー (3 月 23 日 ) 」を前に、気候不安に関する学術的な国際比較調査に日本から初めて参画しました。
 「子どもと若者における気候不安と気候変動への政府の対応についての考え方:国際調査」は、英バース大学が中心となって 2021 年に 10 か国(オーストラリア、フィンランド、フランス、ポルトガル、英国、米国、ブラジル、インド、ナイジェリア、フィリピン)の 16 ~ 25 歳の若年層を対象に実施された、気候変動に関する学術的な国際調査です。電通総研は、本調査と同一の質問票を使用した調査を日本で初めて実施しました。日本調査では、先行調査と同じ質問を日本語訳したものに独自設問を追加し、日本在住の 16~65 歳、計 5,000 名を対象としました。

 気候不安(エコ不安)とは、「環境が破壊されることへの懸念から引き起こされる慢性的恐怖感」 を指し、環境保護の意識を強くもつ人ほど、気候不安に陥りやすいとされています 。 2020 年にアメリカ心理学会が発表した調査では、アメリカの 18 歳以上の 68% が気候不安を感じていると回答するなど 、既に欧米では多くの人がその症状を訴え始めており、 WHO もメンタルヘルスへの深刻な影響を問題視しています。 

Hickerman et al.(2021)をもとに電通総研作成

 

 以下は、 11 か国の国際比較が可能な Z 世代( 16 ~ 25 歳)に焦点を当てた主な調査結果です。

 

<「気候不安」に関する主な調査結果:Z世代の11か国比較より>

 

1. 気候変動により「不安」を感じる日本のZ世代は72.6%、11か国中2位

2. 気候変動を「心配している」は各国ともに8割、日本のZ世代の14.6%が「心配していない」

3. 気候不安から「日常生活にネガティブな影響」を受けていると考える日本のZ世代は49.1%、調査対象OECD加盟国の中でワースト1位

4. 気候変動による「不安」は高いが、激しい負の感情や自責感情は低い日本のZ世代

5. 漠然とした不安はあるが、将来に対する具体的な心配はあまりしない日本のZ世代 

 

 本調査結果からは、日本のZ世代の72.6%が気候変動による「不安」を感じており、49.1%が「気候変動に対する感情は私の日常生活にネガティブな影響を与えている」と回答するなど、日本でも気候不安が広がっていることが確認されました。すでに気候不安という概念が人びとに浸透しつつある欧米においては、気候不安を感じている学生のために大学側が対処法を紹介し※1、気候不安を分かち合うことを目的としたNPO※2が立ち上がるなど対策が講じられています。

 

 但し、11か国の国際比較からは、日本のZ世代が感じている気候不安の具体的な感情については、他国と異なる点も見出されました。気候不安には非常に強く慢性的なものから軽度のものまであるとされています 。日本では、「不安」や「恐れ」といった感情が見られるものの、「悲しみ」「怒り」「無力感」「罪悪感」といった感情はそれほどあらわにされておらず、他の10か国との乖離が明らかとなりました。また、気候変動によって考えたことを聞く設問では、日本のZ世代は他国に比べ全体として「はい」の回答率が低いということがわかりました。その中でも、将来への不安や恐れと関連するものへの「はい」の回答率はやや高いものの、気候変動によって「子どもをもつことをためらう」といった将来の具体的な懸念と結びついたものへの「はい」の回答率は10か国平均と比べても低いことが明らかになりました。次頁より主な調査結果について説明します。

 

▼電通総研ウェブサイトにおいて本調査について紹介しています。
https://institute.dentsu.com/articles/2823/

 

▼本調査の詳細レポートは下記URLよりご覧ください。
https://institute.dentsu.com/wp-content/uploads/2023/03/国際比較版【電通総研コンパス第9回調査】気候不安に関する意識調査.pdf


※1:例えばハーバード大学医学部が運営する情報サイト

https://www.health.harvard.edu/blog/is-climate-change-keeping-you-up-at-night-you-may-have-climate-anxiety-202206132761)や、メリーランド大学のサイト(https://sustainability.umd.edu/coping-climate-anxiety-toolkit)において情報発信が行われている。

※2:Good Grief Network:https://www.goodgriefnetwork.org/

 

 

<「気候不安」に関する主な調査結果:Z世代の11か国比較より>

 

1.気候変動により「不安」を感じる日本のZ世代は72.6%、11か国中2

 

 気候変動によって「不安」を感じるかという問いに対して「はい」との回答率がもっとも高かったのはフィリピンの83.0%、次いで日本の72.6%。対して相対的に低い回答率を示したのはフィンランドとフランスで、半数程度にとどまりました。気候変動によって「不安」を感じる日本のZ世代は各国と比較しても多いことがわかります。

 

 

2.気候変動を「心配している」は各国ともに8割、日本のZ世代の14.6%が「心配していない」

 

 「私は気候変動が人びとや地球を脅かすことを心配している」かという問いに対して、11か国ともにZ世代の8割以上が「心配している」と回答しました。特にフィリピンでは「極度に」「とても」心配している人だけで8割以上を占めます。一方、日本では「心配していない」が14.6%と、11か国中もっとも高い結果となりました。

 

 

3.気候不安から「日常生活にネガティブな影響」を受けていると考える日本のZ世代は49.1%、調査対象OECD加盟国の中でワースト1

 

 「気候変動に対する感情は、私の日常生活にネガティブな影響を与えている」との回答は各国でばらつきがあり、日本は49.1%と、11か国中5番目に位置します。これは調査対象となったグローバルノース*と呼ばれるOECD加盟国の中ではワースト1位です。気候不安からネガティブな影響を感じている人が日本より多いのは、フィリピン、インド、ナイジェリア、ブラジルと、すべてグローバルサウスの国々でした。気候変動に対する感情は、特にグローバルサウスのZ世代にネガティブな影響を与えているようです。

 

*「子どもと若者における気候不安と気候変動への対応についての考え方:国際調査」では、調査対象となったOECD加盟6か国を「グローバルノース」、その他の4か国を「グローバルサウス」と定義。上図内の破線囲みは、日本を含むOECD加盟国を示す。

 

4.気候変動による「不安」は高いが、激しい負の感情や自責感情は低い日本のZ世代

 

 気候不安に関連する感情は様々あります。本調査ではそうした感情を、1.で触れた「不安」も含めた14項目に分けてそれぞれ質問しました。14項目について日本を除く10か国の平均回答率を算出し、一覧で比較しました。10か国平均では「恐れ」67.3%、「悲しみ」66.7%、「不安」61.8%、「怒り」56.8%、「無力感」56.0%、「諦め」50.9%、「罪悪感」50.2%の順に高いという結果になりました。   

注:日本:Z世代1,000名、10か国平均:10か国10,000名の平均回答率。

 

 日本のZ世代では「不安」を感じる人が10か国平均を大きく上回る一方、同じく気候不安に顕著と言われる「悲しみ」「喪失感」「絶望」「怒り」「傷つき」といった激しい負の感情をもつ人は、10か国平均を大きく下回っていました。同様に、「無力感」「罪悪感」「恥ずかしさ」など、気候変動を自己の責めに帰することから生じる感情も、10か国平均と比べて低いことがわかりました。日本のZ世代は気候変動に対し、特に「不安」や「恐れ」といった漠然とした感情を抱いているのが特徴と言えそうです。

 

5.漠然とした不安はあるが、将来に対する具体的な心配はあまりしない日本のZ世代

 

 気候変動によって考えさせられたことについて7項目に分けて質問したところ、日本のZ世代は全体として「はい」と答えた割合が10か国平均と比べて低い傾向にありました。「将来が恐ろしい」「人類は地球に配慮するのに失敗した」といった漠然とした不安はZ世代の約半数に感じられているのに比べ、「私は両親と同じようなチャンスを手に入れられないだろう」「子どもをもつことをためらう」といった具体的な心配は他国と比べても著しく「はい」の割合が低く、日本のZ世代は気候不安を感じているものの、将来が具体的に脅かされるという不安につながっている人は多くないことがわかります。

*日本:Z世代1,000名、10か国平均:10か国10,000名の平均回答率。

 

<日本調査概要>
タイトル:「電通総研コンパス」第9回調査(気候不安に関する意識調査)
調査時期:2022年10月12日~16日
調査手法:インターネット調査
対象地域:日本全国
対 象 者:16~65歳の計5,000名(うち「Z世代」として16~25歳の1,000人)
調査会社:株式会社電通マクロミルインサイト

*グラフ内の各割合は全体に占める回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しています。また、各割合を合算した回答者割合も、全体に占める合算部分の回答者の実数に基づき算出し四捨五入で表記しているため、各割合の単純合算数値と必ずしも一致しない場合があります。

 

10か国調査概要>
タイトル:Climate anxiety in children and young people and their beliefs about government responses to climate change: a global survey(「子どもと若者における気候不安と気候変動への政府の対応についての考え方:国際調査」)
調査時期:2021年5月18日~6月7日
調査手法:インターネット調査
対 象 国:英国、フィンランド、フランス、米国、オーストラリア、ポルトガル、ブラジル、インド、フィリピン、ナイジェリアの10か国
対 象 者:16~25歳の計10,000名(各国1,000名)
調査会社:Kantar

 

                                           以 上

 

【本調査内容に関する問い合わせ先】

電通総研 山﨑、若杉、青山

Email:d-ii@dentsu.co.jp

 

【リリースに関する問い合わせ先】

dentsu Japan広報 佐藤、島津

Email:japan-cc@dentsu-group.com

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■dentsu Japanとは

dentsu Japan は、グローバルに展開する「dentsu」の 4 事業地域のうち、世界最大のエージェンシーである 株式会社電通を擁する日本事業を統括・支援する機能を有すると同時に、日本の事業ブランドを示しています。 同ブランドを支える約 20,000 名の従業員が、AX(高度化された広告コミュニケーション)、BX(事業全体の変 革)、CX(お客さま体験の変革)、DX(マーケティング基盤の変革)のソリューションを統合し、提供価値の最大化を図っています。dentsu Japan は「Integrated Growth Partner」として顧客企業の成長、ひいては社会の持続的発展に貢献していきます。同ブランドを支える約20,000名の従業員が、AX(高度化された広告コミュニケーション)、BX(事業全体の変革)、CX(お客さま体験の変革)、DX(マーケティング基盤の変革)のソリューションを統合し、提供価値の最大化を図っています。dentsu Japanは「Integrated Growth Partner」として顧客企業の成長、ひいては社会の持続的発展に貢献していきます。

 



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  • テーマ
    調査・アンケート、環境・CSR・社会貢献活動
  • ジャンル
    広告・マーケティング・広報、インターネットサービス
  • エリア
    東京都
  • キーワード
    電通総研、気候不安、エコ不安

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このリリースを配信した企業・団体

  • 名称株式会社電通グループ
  • 所在地東京都
  • 業種広告・広報
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