食育健康サミット2014「性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割」
2014年12月10日
公益社団法人 日本医師会
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
性・年齢別の栄養状態に応じ、疾病予防につながる
ごはんを主食とした「日本型食生活」を提案
食育健康サミット2014
「性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割」
公益社団法人 日本医師会と公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構は、2014年11月27日(木)に、日本医師会館大講堂(東京・駒込)において、ごはんを主食とした日本型食生活の有用性等について考える「食育健康サミット」を開催いたしました。
本サミットは、医師、栄養士等の方々を対象に毎年開催されるもので、本年度は「性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割」をテーマに開催いたしました。神奈川県立保健福祉大学学長・中村 丁次先生他3名の専門家による最新の研究を基にした講演とパネルディスカッションを実施。会場に集まった参加者は、疾病の予防・治療や食事・栄養指導にあたる医師や栄養士等724名で、熱心に講演に耳を傾ける姿が多く見られました。
**テーマ「性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割」**
【講演Ⅰ】
テーマ:生活習慣病の発症予防・重症化予防のための食事処方
-性・年齢別の栄養問題を踏まえて
講師:神奈川県立保健福祉大学 学長 中村 丁次 先生
近年、食事の欧米化と運動不足により、肥満や非感染性慢性疾患である生活習慣病が増大している。一方、若年女子や高齢者にやせが出現し、我が国の栄養状態は、過剰栄養と低栄養が混在する「栄養障害の二重負荷」状態になっている。このような中、本年3月に厚生労働省から、国民の健康の保持・増進、生活習慣病の予防のための参照するエネルギー及び栄養素の基準を示す「日本人の食事摂取基準(2015年版)」が公表された。
今回の改正点として、エネルギーの摂取量及び消費量のバランスの維持を示す指標として、「体格(BMI:body mass index)」と体重変化が採用された。「たんぱく質・脂質・炭水化物」を、「エネルギー産生栄養素」とし、これらの構成成分の総エネルギー摂取量に占めるべき割合(%エネルギー)を示した。これらの栄養素の中で、推奨量が示されているのはたんぱく質だけなので、炭水化物と脂質がエネルギー比率として示されている。低炭水化物食にしても、低脂肪食にしてもおのおの利点と課題がある。
個々人の栄養状態やリスクを考慮して、個別に対応することと同時に、極端に栄養素バランスを崩さないようにするために、ごはん中心とした日本食を継続することが重要である。
※参考図表は画像欄よりご確認頂けます。
【講演Ⅱ】
テーマ:若い女性のやせ志向と危惧される次世代の生活習慣病リスク
講師:早稲田大学総合研究機構研究院 教授 福岡 秀興 先生
日本で低出生体重児(出生体重2500g未満の児)の頻度は増加しており(2012年9.6%)、妊婦の栄養状態が劣悪化していると考えられる。実際20歳代、30歳代女性では、やせ(BMI:18.5kg/m2以下)の頻度は高く(2012年:20歳代約22%、30歳代約17%)、一日平均エネルギー摂取量は1700kcal以下と低い。また、妊婦の栄養摂取状況をみると、胎児発育のために多くのエネルギーが必要であるにも関わらず、妊娠前とほぼ同じ少ない量で全期間を推移している方や、遺伝子発現系を制御する栄養素の著しく不足している例も多い。妊娠前の食習慣の重要性を示すものといえる。「小さく産んで大きく育てる」ことが良いとする考え方が今もなおあると伝聞されているが、「望ましくない栄養状態で胎児が発育すると生活習慣病の素因が形成され、運動不足・過栄養やストレス等のマイナスの生活習慣が負荷されることで疾病が発症する。」といわれており、今は次世代の健康が危惧される。
妊娠前半に炭水化物摂取量が少ない場合は、6歳、9歳での体脂肪量の増加、肥満が起こることも報告され始めており、次世代の健康と疾病予防を考えると、妊娠前から妊娠中のエネルギー、米穀類を含めた栄養の重要性を広く周知・指導していくことが、健康な次世代を確保するために極めて大切である。
【講演Ⅲ】
テーマ:中高年の肥満対策と生活習慣病予防のための食事処方
講師:あいち健康の森健康科学総合センター センター長 津下 一代 先生
エネルギー収支バランスの維持に着目した「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、50~69歳の中高年のBMIの目標値として、男女ともBMI20.0~24.9kg/m2としている。BMIがこの範囲を超えて大きくなるほど、糖尿病や循環器疾患等の発症率、総死亡率が増加する。
平成24年国民健康・栄養調査報告によると、中高年男性の約3割、女性の約2割が肥満に該当していた。
中高年期では筋肉量減少により基礎代謝が減少するだけでなく、生活活動量が減少するためエネルギー消費量が減少し、推定エネルギー必要量は30~40歳代より100kcal低い。しかし、食事摂取量はむしろ20~40歳代よりも50~60歳代の方が50kcal程度高く、結果的にエネルギー過剰となり、脂肪蓄積につながっていると考えられる。
都市部を対象としたコホート研究では米飯により糖尿病の有病率の増加は見られないこと、米飯を主食として主菜、副菜、汁から構成される和食では、栄養素のバランスがとりやすいことから、メタボリックシンドロームなど肥満の是正が必要な人に対しても、米飯をきちんと食べることにより間食を減らすことができ、減量につながった事例も少なくない。
【講演Ⅳ】
テーマ:高齢者の介護予防・虚弱(フレイル)予防のための食の在り方
講師:名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学
教授 葛谷 雅文 先生
高度成長期以降、日本での少なくとも成人の栄養の問題は生活習慣病の視点から過栄養がクローズアップされてきた。しかし、今後超高齢社会における栄養の問題は、先の過栄養の問題だけではなく、健康寿命の延伸延長、介護予防の視点から後期高齢者が陥りやすい「低栄養」「栄養欠乏」の問題の重要性が高まっている。
今後爆発的に増加することが予測されている後期高齢者、超高齢者が要介護状態に陥る原因として、実は脳血管障害ならびに生活習慣病を基盤としたものよりも、むしろ認知症(認知症自体も生活習慣病との関連性が取りざたされてはいるが)、骨折・転倒、衰弱(フレイル・サルコペニア)などの老年症候群に関連する要因が多くなる。これらの老年症候群のうち、栄養状態を保つことにより、要介護に陥る時期を延ばすことができるものがかなり存在する。
日本人が長寿なのは日本食が理にかなった食事のためである、との意見も聞く。米にはもちろん炭水化物だけでなく、良質なたんぱく質やビタミンを含み、副菜との関係で栄養バランスがとりやすい主食である。日本食の健康寿命への影響に関して見直してもよい時期に来ているかもしれない。
**「食育健康サミット2014」開催概要**
日時: 2014年11月27日(木)13:30~17:00
会場: 日本医師会館 大講堂 (東京都文京区本駒込2-28-16)
テーマ:性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割
主催: 公益社団法人 日本医師会 公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
後援: 農林水産省、一般社団法人埼玉県医師会、公益社団法人千葉県医師会、
公益社団法人東京都医師会、公益社団法人神奈川県医師会、
一般社団法人山梨県医師会、一般社団法人日本血栓止血学会、
特定非営利活動法人日本高血圧学会、一般社団法人日本循環器学会、
日本心臓病学会、一般社団法人日本腎臓学会、一般社団法人日本糖尿病学会、
日本DOHaD研究会、一般社団法人日本動脈硬化学会、一般社団法人日本内科学会、
一般社団法人日本肥満学会、公益社団法人日本栄養士会、
特定非営利活動法人日本栄養改善学会、公益社団法人日本栄養・食糧学会、
一般社団法人日本臨床栄養学会
内容: ◆基調講演
講演Ⅰ 生活習慣病の発症予防・重症化予防のための食事処方
-性・年齢別の栄養問題を踏まえて
神奈川県立保健福祉大学 学長 中村 丁次 先生
講演Ⅱ 若い女性のやせ志向と危惧される次世代の生活習慣病リスク
早稲田大学総合研究機構研究院 教授 福岡 秀興 先生
講演Ⅲ 中高年の肥満対策と生活習慣病予防のための食事処方
あいち健康の森健康科学総合センター センター長 津下 一代 先生
講演Ⅳ 高齢者の介護予防・虚弱(フレイル)予防のための食の在り方
名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学
教授 葛谷 雅文 先生
◆パネルディスカッション
テーマ:性・年齢別疾病の発症予防・重症化予防と日本型食生活の役割
座長:神奈川県立保健福祉大学 学長 中村 丁次 先生
パネリスト:
名古屋大学大学院医学系研究科地域在宅医療学・老年科学
教授 葛谷 雅文 先生
あいち健康の森健康科学総合センター センター長 津下 一代 先生
早稲田大学総合研究機構研究院 教授 福岡 秀興 先生
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- 名称 公益社団法人米穀安定供給確保支援機構
- 所在地 東京都
- 業種 各種団体
- URL https://www.komenet.jp/
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