EY、気候変動リスクバロメーターの最新レポートを発表:気候変動関連リスクの情報開示50%の企業が苦慮
・最新のEYグローバル気候変動リスクバロメーターでは、気候変動リスク開示の進展を示す一方で、さらなる行動が急務であることが浮き彫りに
・50%の企業は何らかの情報開示に留まり、全面的な情報開示を実施している企業は3%のみ
・2022年には世界中で気候変動リスクの情報開示が大幅に進むと予想される
EYは、「EYグローバル気候変動リスクバロメーター」 の最新レポート(第3回、2021年版)を発表しました。本レポートによると、世界中の企業は気候変動リスクの情報開示の対応に苦慮しており、規制当局や投資家の要求や期待に応えるための早急な対応を検討すべきであるとしています。
本レポートは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、42カ国1,100社以上の企業が気候関連リスクと機会の開示のために行った取り組みを調査したものです。TCFDは、気候変動に関する財務情報の開示の改善と進展を目的に設立されました。企業は、提言で推奨されている項目の開示数(「開示率」)と、開示の範囲と詳細の度合い(「開示の質」)によってスコアリングされます。
本レポートによると、世界中で調査された企業のうち、100%の開示率だった企業は50%にとどまり、平均開示率は70%という結果でした。一方、100%の品質スコアを得た企業は全体のわずか3%で、その平均スコアは42%でした。
企業は、気候変動によってもたらされる経済や規制の変化に起因した「移行リスク」の影響を受ける可能性があります。例えば、特定のセクターが炭素価格の対象となる可能性や、暴風雨の増加など気候変化に直結した「物理的リスク」の影響を受けることが考えられます。TCFDの提言は、企業がこれらのリスクを報告するためのフレームワークとなっており、提言ではガバナンス、戦略や計画立案への影響、リスクマネジメント、指標や目標に関する情報の開示が求められています。
さらに、想定し得る特定リスクの規模と時期を検討し、最悪の事態に備えるための重要なシナリオ分析(TCFDでも提言されている)を実施したと公表した企業は、全世界で5分の2(41%)にとどまっていることが明らかになりました。また、気候変動を財務諸表に反映させている企業は全体の15%にすぎず、企業側が信頼性のあるデータを入手できていないか、最終的な収益への影響を十分に検討しきれていないことを示唆しています。情報開示がこうした低水準にあることは、気候変動リスクの開示義務化に向けた動きを進めるG7合意でも取り上げられました。
EYグローバル・バイスチェア(アシュアランス)のマリー・ロール・ドラリューは、次のように述べています。
「世界中の企業は、世論の高まりはもちろん、投資家や規制当局の高まる圧力に後押しされ、気候変動リスクの開示を進展させていることは間違いありません。しかし、企業にはさらなる努力が求められています。 もはや、気候変動リスクを開示義務の一つとして捉えるだけでは十分とは言えません。企業は、気候変動によって自社の事業や業界にもたらされる広範なリスクと機会を慎重に検討することが必要です。将来の成長を目指した計画を策定できるよう、自社のビジネスモデルや戦略にどのような影響があるかを考慮しなければなりません」
開示内容は国によって大きく異なるものの、開示内容が最も充実した国とそうでない国は、本レポートが発行された過去3年間で変動していません。成熟した市場があり、気候変動リスクに関する議論に政府、株主、投資家、規制当局が積極的に参画している国では、開示率のスコアが最も高くなる傾向があります。また、英国のように今後制度として義務化される国は、開示の質で高い評価を得ています。
本レポートでは、企業が新たな開示要求を確実に満たすためにできる、いくつかのステップを紹介しています。具体的には、気候変動を独立した問題として考えるのではなく、財務報告書に気候変動リスクを直接反映させ、既存のリスクフレームワークに組み込むこと、グローバルな開示基準の導入を待たずに直ちに気候変動リスクを開示することなどが挙げられています。
EYグローバル気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダーのマシュー・ネルソンは、次のように述べています。
「TCFDの提言に従って気候変動の開示を義務化する最近のG7合意が示しているように、世界各国がこれまで以上に気候変動リスクの開示に真剣に取り組んでいることは明らかです。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、重大なリスクから地球を守る必要性について、企業や政府に警鐘を鳴らすきっかけにもなりました。来年は世界中の企業で情報開示が大幅に進むことが想定されます」
EY Japan 気候変動・サステナビリティ・サービス(CCaSS)リーダーの牛島慶一は、次のように述べています。
「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は第6次評価報告書(2021年8月公表)にて、”地球温暖化は人間による活動が原因であることに疑う余地はない”と明言しました。脱炭素社会への変革がメインストリートになりました。日本国内では、2022年から適用される東京証券取引所の市場区分であるプライム市場の上場企業が改訂版コーポレートガバナンス・コードの全原則の適用を受け、TCFDもしくはそれと同等の枠組みに基づき気候関連情報を開示するよう求められるようになります。こうした政策は環境政策ではなく、金融政策として捉えるべきです。最新の本レポートにおいても、日本企業の開示水準は世界的にも上位に位置付けられており、今後、質の向上が伴えばTCFDにおける世界の規範作りで優位なポジションを築ける可能性もあります」
最新の「EYグローバル気候変動リスクバロメーター」レポートはこちら からご覧ください。
・気候変動の情報開示が進んでいるとすれば、脱炭素はなぜ加速しないのでしょうか。
EYグローバル気候変動リスクバロメーターについて:
EYでは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づき、42カ国の1,100社以上を対象に、気候関連リスクと機会の開示に関する企業の取り組みを調査しました。本調査は、EYグローバル財務会計アドバイザリーサービス(FAAS)が実施し、TCFDの提言で特定されている重大リスクセクターについて、大手上場企業の開示情報を調査したもので、以下の国・地域を対象としています(アフリカ、カナダ、中欧・東欧、中南米、中華圏、インド、アイルランド、日本、中東、オセアニア、東南アジア、韓国、南欧、英国、米国、西欧・北欧)。企業は、情報の開示率と質という2つの異なる基準でスコアリングされました。開示率は、TCFDの提言に取り組んだ項目数に応じてスコア(パーセンテージ)を付与したものです。開示の質は、TCFDの提言の11項目すべての項目を開示する企業について、開示の質に応じて5点満点の得点を付与するもので、最高スコアに対するパーセンテージで示されます。
※本プレスリリースは、2021年7月19日(現地時間)にEYが発表したニュースリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版ニュースリリース:
Businesses struggle to get to grips with climate risk disclosure
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- URL https://www.eyjapan.jp/index.html
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