ブルーカーボン事業に向けたホンダワラ類の完全養殖技術によるタネ確保の実施
~将来的な需要増が見込まれるホンダワラ類養殖事業へ展開~
2025/1/20
建設関連製品事業や海洋事業等を展開する岡部株式会社(本社:東京都墨田区、代表取締役 社長執行役員:河瀬博英 以下「当社」)は、藻場の中で重要な構成種であるホンダワラ類の完全養殖技術(以下「本技術」)によるタネ確保技術を開発いたしました。
完全養殖は天然藻体に依存しない方法で、人工種苗を親株に育成してタネを採取し、次世代の人工種苗を養殖する方法です。本技術では容器内でタネから成体に育成したホンダワラ類を成熟誘導し、人工授精によって大量に受精卵(タネ)を確保して再び種苗生産するサイクルを繰返します。容器培養条件下でホンダワラ類の完全養殖を可能にしました。
<ホンダワラ類の完全養殖手法>
これまでに小規模な研究報告が数例ありますが、事業規模の種苗生産を行うための条件整備は行われておりませんでした。本技術の確立により、これまでホンダワラ類の養殖で必須であった、天然海域からタネ採取用の母藻を毎回採取する作業が不要となる道筋が開けました。
ホンダワラ類は潮間帯から水深30m以上の広範囲に生育する種類で、日本沿岸に約60種類が分布しております。ホンダワラ類は高さ数10cmから10mを超える大きさに生長し「海中林」を形成して、コンブ類とともに水産動物の生息場や餌場、アワビやサザエ等の漁場となります。その他、現在では二酸化炭素の吸収・固定を行う、ブルーカーボン生態系としての役割が注目されています。しかし近年、海水温の上昇等で特にコンブ類藻場が減少、消失している「磯焼け」が、日本全国で深刻になっております。ホンダワラ類には高水温環境に生育が適した種類が多く、今後の磯焼け対策やブルーカーボン生態系の創出に対して重要な役割を果たすことが期待されています。
<ホンダワラ類が形成する様々な海中林の姿>
本技術は亜熱帯性種であるキレバモクを対象に行いました。2023年4月に未成熟の藻体を成熟誘導し、採取した受精卵から発芽個体を100個体育成しました。この発芽個体を対象に各種培養条件・培養液・操作方法を完全養殖用に調整して、200日前後で成熟、成熟後も新たな主枝を再生・再成熟する事に成功しました。この個体群から採取した受精卵(タネ)量は、藻体7株にある主枝部80gから10万個以上となりました。タネはFRP製基質に着生後3L容器内に収容し、数cmサイズの発芽体にまで生育しました。得られた種苗数は種苗板(4×10cm)に約25~50個体が着生し、2,000~4,000枚相当の生産量に達しています。
<キレバモクの完全養殖>
容器培養中の母藻 |
容器培養で成熟誘導 |
成熟した培養藻体 |
生殖器床の形成 |
受精卵の採取 |
播種数週間後の種苗 |
培養数か月の種苗 |
付着基からの再生長 |
当社では今後キレバモクのタネ採取を100万個オーダーで実施する体制を整備するともに、本技術の対象種をキレバモク以外の亜熱帯性種に加え、温帯性種にも広げてまいります。また本技術と当社で技術開発を行っている「多段式の海藻養殖技術※」とを組み合わせることで、ブルーカーボン事業に対し海藻種苗の一層の活用を進めてまいります。
(※2024年6月4日発表「ブルーカーボン事業化に向けた多段式の海藻養殖技術を開発」
https://www.okabe.co.jp/news/2024/06/04/20240604.pdf)
岡部株式会社の応用藻類学研究所とは
1992年、島根県隠岐の島町において海藻の増養殖技術の開発に着手。2002年に隠岐郡海士町に拠点を新設し、2012年に同町内で「応用藻類学研究所」を開設しました。研究所では藻場の造成や保全に関する技術開発を行い、当社が重点的に取り組むSDGs目標のひとつ「14.海の豊かさを守ろう」の実現を目指して邁進してまいります。
岡部㈱応用藻類学研究所 垂下方式での藻場用種苗の生産
2012年海士町に開設 1995年より養殖生産開始
岡部株式会社(証券コード:5959) 会社概要
1917年(大正6年)、東京・押上の地に創業。「安全・安心の提供を通じて社会に貢献する」を企業理念に、耐震・免震製品などの建設関連製品事業のほか、海洋事業も展開。技術開発により被害を減らすことでの防災・減災・国土強靭化への貢献や、環境に配慮した製品開発・製造など、日本発、世界に照準を合わせて展開。建設関連製品事業等を通じて人・社会・地球との共存共栄をはかり豊かな社会づくりに貢献します。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 岡部株式会社
- 所在地 東京都
- 業種 建設業
- URL https://www.okabe.co.jp/
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