2025年第2四半期版 世界 35 カ国における中堅企業経営者意識調査(International Business Report)
IT への投資意欲:世界平均 68%に対し日本 47%、デジタル投資ギャップが顕在化
2025年8月6日
・世界35カ国の平均景況感は高水準を維持(前回調査比2ポイント減の71%)
・日本の景況感は前回調査比で9ポイント減の20%で低迷
・ITへの投資意欲:世界平均68%に対し日本47%、デジタル投資ギャップが顕在化
太陽グラントソントンは、グラントソントン加盟国において実施する世界同時調査の一環として、世界35カ国の中堅企業の経営者に対して今後の自国経済の見通しや自社の経営状況などに関して尋ねる中堅企業経営者意識調査(IBR: International Business Report 2025年第2四半期版・2025年4月~5月実施分)を実施し、その結果を公表した。
今回の調査では、調査対象国平均の景況感は前回調査(2025年1月~2月実施分)(1) 比で2ポイント減と若干減少したものの71%と高水準の範囲に留まっており、今後1年間の見通しについて楽観的である。
図1:日本、調査対象国平均、各調査対象地域の景況感の推移(2021年下期~2025年第2四半期)
OECD Economic Outlook 2025/1によると、「2025年3-4月のビジネス信頼感が長期平均を上回り、BCI(2)は101超で推移」としており、中堅企業だけでなく、世界的な傾向であることがうかがえる。(3)
しかしこの見通しは、地域により大きく異なる。北米では2ポイント増の81%、南米は3ポイント増の66%、欧州は1ポイント増の61%と、上昇または安定を見せている中、アフリカは2ポイント減の69%、アジア太平洋地域では6ポイント減の68%となっている。
日本の景況感は、前回調査比9ポイント減の20%であり、2024年第4四半期以降減少し続けており、アジア太平洋地域の中でも極めて悲観的である。また、日銀の短観(2025年3月調査)でも、大企業、中堅企業、中小企業ともに、業況判断DIは総じてマイナスを示している。(4)
図2:今後の経営上の制約となりうる事項
前回調査と同様に、経済情勢の不確実性に対する懸念が6ポイント増加の61%であり、成長への制約としてもっとも多く挙げられている。米国関税の不確実性は依然として残っており、中堅企業の不安感をさらに強めている。地政学的混乱に対する懸念は6ポイント増の53%と過去最高を記録し、サプライチェーンに関する懸念も1ポイント増加で過去最高の49%に達した。将来の受注不足を懸念する回答も3ポイント増の50%を記録した。
日本においても、経済情勢の不確実性に対する懸念は、11ポイント増の58%と調査対象国平均に近い割合を示している。また、即戦力確保の難しさ(10ポイント増の57%)、人件費(4ポイント増の56%)の2項目については、調査対象国平均を上回る割合を示しており、日本における懸念点として際立っている。一方、調査対象国平均と比べ、日本では懸念として挙げられている割合が低い項目は、関係当局による規制(9ポイント増の32%)、資金不足(4ポイント増の27%)、地政学的混乱(10ポイント増の35%)、環境的制約(3ポイント減の26%)、サプライチェーン(3ポイント増の34%)などである。地政学的混乱については、調査対象国平均とは大きく離れるものの(18ポイント)、前回調査比で10ポイント増となっており、日本においても関心の高まりが感じられる。
図3:今後1年間で増加が見込まれる分野
世界におけるこのような不安感の高まりは、中堅企業の国外市場に対する懸念を誘引しており、輸出の増加を見込む経営幹部の割合は3ポイント減の50%にとどまった。また、国内市場以外からの収益の増加を見込む割合は4ポイント減の48%だった。しかし、販売先国数の拡大を計画している回答者の割合は48%で横ばい、国内市場以外の市場を担当する従業員数の増加を期待している割合も40%で横ばいとなった。
日本においては、販売価格の増加を見込む企業の割合が引き続き高水準を維持しており、唯一調査対象国平均を上回る割合を示している。輸出量、国外市場からの収益、販売先国数、国内市場以外の市場を担当する従業員の割合、国内市場以外のサプライヤーやアウトソーサーの利用の増加見込みは、調査対象国平均よりも大幅に低い割合を示しており、対外的なビジネスを拡大していこうとする気運が総じて控えめであると言える。
世界各国の政府が、米国との新たな貿易協定の締結や新たな貿易相手国の開拓などを通じて、グローバル経済の再構築に取り組んでいるのと同様に、企業の経営幹部たちもテクノロジーへの投資によって自社のビジネスを再構築することに引き続き注力している。ITは依然として中堅企業にとって最重要投資分野であり、経営幹部の68%が今後12ヵ月間で支出を増やす計画だ。中でも、AIへの投資は、前四半期から2ポイント減少したものの、67%と依然として最も高い割合を占めている。
図4:今後1年間の投資分野
2025年1月のハーバードビジネスレビューも、「生成AI導入が2025年の主要成長ドライバー」としており5、世界経済フォーラムによる Future of Jobs Report 2025 もまた、「2030年までに1.7億人の新規雇用、AI・ビッグデータ技能の需要は全業種で90%以上が拡大」すると試算しており6、AIへの投資は今後も高い割合が維持されることが予想される。
日本においては、人材への投資の増加を見込む割合は3ポイント増の63%で、調査対象国平均を上回るが、テクノロジーへの投資は6ポイント減の47%、研究開発への投資は2ポイント減の39%、工場・機械設備への投資は3ポイント減の34%と、いずれも調査対象国平均から大きく乖離して低い割合を示している。
人材における投資予定内容として、日本ではスキルアップを予定しているとする割合が高く、リーダーシップの育成や、組織文化・新しい働き方、DEI戦略などは調査対象国平均から大きく離れることから、個々人のスキルアップがより重視されており、組織的な取り組みへの投資意欲が相対的に低いことがうかがえる。
また、テクノロジーにおける投資予定内容として、AIへの投資は、調査対象国平均は67%と高い割合を維持しているのに対し、日本は47%であり、AIに対する投資が慎重であり、デジタルギャップが顕在化している。
図5-a:「人材」における投資予定内容
図5-b:「テクノロジー」における投資予定内容
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(1) 前回調査(2025年1月~2月実施分)は、グローバルレポートのみ
(2)BCIとは、企業信頼感指数(Business Confidence Index)のことで、製造業における生産、受注、完成品の在庫の動向に関する世論調査に基づいて、将来の事業展開の指標を提供する標準化された信頼感指標
(3) OECD Economic Outlook, Volume 2025 Issue 1 | OECD
(4) 短観(要旨)(2025年3月) : 日本銀行 Bank of Japan
(5) 9 Trends That Will Shape Work in 2025 and Beyond
(6) The Future of Jobs Report 2025 | World Economic Forum
2025年第2四半期版
世界35カ国における中堅企業経営者意識調査(IBR: International Business Report)- 概要
実施期間: |
2025年4月16日~5月29日 |
参加国数: |
35カ国 アジア太平洋地域(APAC):オーストラリア、中国、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、タイ、ベトナム 北米・南米:カナダ、米国、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア 欧州・中東・アフリカ地域(EMEA):フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、スペイン、スウェーデン、エジプト、ケニア、モロッコ、ナイジェリア、南アフリカ、トルコ、アラブ首長国連邦、英国、ボツワナ、オランダ |
調査対象: |
世界35カ国4,083の中堅企業ビジネスリーダーまたは経営トップ 日本からは従業員数100名以上1,000名未満の全国の中堅・中小企業から142社の意志決定権を持つ経営層が回答した。 |
調査について: |
質問票を各言語に翻訳し、オンラインおよび電話で行い、調査会社Dynataがデータの取りまとめを行った。 |
分析手法: |
景況感について、各国の全回答数のうち「非常に楽観的」または「やや楽観的」と回答した回答者の割合を当該国の景況感とする(単位:%)。 |
利用上の注意: |
調査結果の数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。 |
Grant Thorntonは、1992年にヨーロッパの中堅・中小企業に関する年次調査「European Business Survey」を開始。2002年から、日本を含む世界の中堅・中小企業を調査対象に加えた「International Business Report」(IBR)として年次調査を実施。2010年11月~12月実施の調査以降は、半期または四半期ごとに調査を実施し、結果公表を行っている。
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太陽グラントソントン
所在地: 東京都港区元赤坂 1 2 7 赤坂Kタワー 18 F
代表: 梶川融 (公認会計士)
グループ会社: 太陽有限責任監査法人、太陽 グラントソントン税理士法人 、太陽 グラントソントン ・ アドバイザーズ株式会社 、太陽 グラントソントン株式会社 、太陽 グラントソントン社会保険労務士法人 、太陽グラントソントン・アカウンティングサービス株式会社
URL: https://www.grantthornton.jp/
<太陽グラントソントンが提供する事業領域>
太陽グラントソントン は、 Grant Thornton の加盟事務所として世界水準の会計コンサルティング業務を提供します。監査・保証業務、IPO サービス、内部統制、M Aトランザクションサービス、 IFRSアドバイザリーサービス、国際/国内税務、移転価格税制コンサルティング、事業承継、財団法人支援、外資系企業に対するコーポレートサービス、労働法務コンサルティング、海外進出支援、財務・業務管理システム導入・運用コンサルティング
Grant Thornton
監査・保証業務、税務関連業務、アドバイザリーサービスを提供している相互に独立した会計事務所およびコンサルティング会社から構成される世界有数の国際組織。世界150 拠点、73,000 人以上の従業員を有します。日本では太陽グラントソントンに所属する6組織が、海外ジャパンデスクやグラントソントンメンバーファームと連携し、経済のグローバル化によって国際化するクライアントのニーズにも柔軟、且つ迅速に、高品質なサービスを提供しています。
本部:英国ロンドン Global CEO:Peter Bodin
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- 業種 その他サービス業
- URL http://www.grantthornton.jp/
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