脂肪肝炎発症メカニズムの一端を発見
肝臓におけるカルシウム恒常性制御機構
脂肪肝炎発症メカニズムの一端を発見 肝臓におけるカルシウム恒常性制御機構
詳細は 早稲田大学Webサイト をご覧ください。
【発表のポイント】 ◆ 脂質代謝や解毒機能など、多様な役割を担う重要な臓器である肝臓の脂質代謝において、「Nwd1遺伝子」が重要な働きを担うことを明らかにしました。 ◆ Nwd1遺伝子を欠失したマウス肝臓では、脂肪の蓄積や線維化、炎症性細胞死などの非アルコール性脂肪肝炎(MASLD/MASH)様の症状が誘導されることを発見しました。そして、Nwd1が、細胞質側から小胞体内へのカルシウム輸送を制御する主要なタンパク質であるSERCA2と相互作用し、小胞体内のカルシウム恒常性を維持するということが分かりました。 ◆ この研究成果は、MASLD/MASHの病因解明に寄与するだけでなく、治療薬の開発や、創薬スクリーニング手法の構築により、新たな予防・治療アプローチが可能となることが期待されます。 |
早稲田大学人間科学学術院の山田 晴也(やまだ せいや)招聘研究員、同榊原 伸一(さかきばら しんいち)教授、明治薬科大学薬学部の中舘 和彦(なかだて かずひこ)教授および群馬大学生体調節研究所の畑田 出穂(はただ いずほ)教授らによる研究グループは、肝臓の脂質代謝の調節において、Nwd1遺伝子がCa²⁺恒常性を維持し、Nwd1の欠失が肝臓内の脂肪の過剰蓄積や線維化、炎症性細胞死など実際の代謝異常関連脂肪肝炎(MASH)患者と同様の表現系を発症することを明らかにしました。
本研究成果は『Communications Biology』(論文名:Induction of MASH-like pathogenesis in the Nwd1−/− mouse liver)にて、2025年3月11日(火)にオンラインで掲載されました。
Nwd1欠失によりCA2+恒常性が失われ、MASH様の脂肪肝炎が引き起こされる
■ 研究の波及効果や社会的影響
本研究により、Nwd1が小胞体膜上においてCa²⁺恒常性を維持し、肝細胞の脂質代謝を制御する分子基盤の一端を解明しました。また、実際のMASH患者検体の肝臓では、Nwd1遺伝子の発現量が有意に減少していることも他の研究で示唆されています。本成果は、世界的に人口の30%が発症する非アルコール性脂肪肝炎(MASLD/MASH)の病因解明に寄与するだけでなく、将来的には、Nwd1あるいはSERCA2を分子標的とするMASLD/MASHの治療薬の開発や、Nwd1/SERCA2の機能評価を組み込んだ創薬スクリーニング手法の構築により、MASLD/MASHの予防・治療に新しいアプローチがもたらされることが期待されます。
■ 研究者のコメント
本研究は早稲田大学をはじめ、明治薬科大学や群馬大学の研究グループの協力により論文化することができました。肝臓における脂質代謝異常に関わる疾患の多くは疾患発症メカニズムや有効な治療法の確立が十分に進んでいないのが現状です。本研究によりMASHに関連する新たな知見が得られたことは、今後の基礎研究のみならず、肝疾患の新たな治療戦略や予防法の開発に向けて意義が大きいと考えております。(榊原)
■ 論文情報
雑誌名:Communications Biology
論文名:Induction of MASH-like pathogenesis in the Nwd1−/− mouse liver
執筆者名(所属機関名):山田 晴也1,2*、小川 颯1、船戸 心桜栞1、加藤 実咲1、中舘 和彦3、
水越 智也1、川上 清明3、小林 良祐4、堀居 拓郎4、畑田 出穂4,5、榊原 伸一1*
1. 早稲田大学 人間科学学術院 分子神経科学研究室
2. ヘルシンキ大学生命科学研究所(HiLIFE)ニューロサイエンスセンター
3. 明治薬科大学 機能形態学研究室
4. 群馬大学 生体調節研究所 生体情報ゲノムリソースセンター ゲノム科学リソース分野
5. 群馬大学 未来先端研究機構(GIAR)、 *責任著者
掲載日時:2025年3月11日(火)10:00(GMT)、19:00(JST)
掲載URL:https://www.nature.com/articles/s42003-025-07717-5
DOI: https://doi.org/10.1038/s42003-025-07717-5
■ 研究助成
日本学術振興会科学研究費助成(21K20701, 山田 晴也)(23K05996, 榊原 伸一)
公益財団法人痛風・尿酸財団 研究助成(2020, 榊原 伸一)(2022, 山田 晴也)
早稲田大学特定課題(2021C-611, 2022C-611, 山田 晴也)(2022C-214, 2023C-207, 榊原 伸一)
創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム―BINDS (AMED) (JP21am0101120, 畑田 出穂)
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 早稲田大学
- 所在地 東京都
- 業種 大学
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