【注意喚起】「低価格・高リスク」の非純正バッテリーに注意
~建物が全焼に至った火災も~
近年、繰り返し充電して使用できる「リチウムイオン電池搭載製品」は、私たちの生活に欠かせないものとして普及が進んでいます。その一方で、安価で入手しやすい「非純正バッテリー」で火災を伴う事故が多く発生しています。独立行政法人製品評価技術基盤機構[NITE(ナイト)、理事長:長谷川 史彦、本所:東京都渋谷区西原]は、「非純正バッテリー」に潜むリスクを伝え、注意喚起します。
電動アシスト自転車用非純正バッテリーから発火する様子(再現イメージ映像)
※資料中の全ての画像は実際の事故とは関係ありません。
2014年から2023年までの10年間にNITE(ナイト)に通知された製品事故情報※1では、「非純正バッテリーによる事故※2」は235件ありました。事故のほとんどが火災事故(235件中227件)に発展し、中には建物が全焼する事故も発生しています。
バッテリーには可燃性の電解液が含まれており、一度発火すると大きな火災に発展するおそれがあります。事故のリスクを減らすには、安全保護装置の適切な設計や品質管理等が不可欠ですが、非純正バッテリーの中には、安全対策や品質管理が不十分で事故のリスクが高いものがあります。また、事故発生後に事業者の補償を受けられない、事業者と連絡が取れないなどの事態も発生しています。
非純正バッテリーは純正品に比べて“低価格”のものが多いですが、これらの中には“高リスク”のものが潜んでいることを認識しましょう。
(※1)消費生活用製品安全法に基づき報告された重大製品事故に加え、事故情報収集制度により収集された非重大製品事故やヒヤリハット情報(被害なし)を含みます。
(※2)非純正バッテリーの関与が確認されたものだけでなく、状況証拠から関与が疑われるものも含みます。
非純正バッテリーとは
本資料では、機器本体のメーカーとは無関係の事業者から販売されているバッテリーで、機器本体のメーカーが、そのバッテリーの設計や品質管理に一切関与していないものを「非純正バッテリー」とします。純正品と類似した形状をしており、「互換バッテリー」、「純正充電器対応」などと称して安価で販売されており、リスクの高い製品も含まれます。
リスクの高い非純正バッテリーを見分けるポイント
リスクの高い非純正バッテリーの表記例
事故の発生状況
NITEに通知された製品事故情報のうち、2014年から 2023年までの 10 年間に発生した「非純正バッテリーによる事故」235件について、事故発生状況を以下に示します。なお、調査中の案件8件も含みます。
年ごとの事故発生件数
「非純正バッテリーによる事故」235件について、図1に「年ごとの事故発生件数」を示します。「充電式電動工具」と「充電式掃除機」の品質に問題のある非純正バッテリーが2018年頃から市場に多く流通したことで、2019年に事故件数が急増し、2020年以降も横ばい傾向にあります。
図1:年ごとの事故発生件数
被害状況別・製品別の事故発生件数
「非純正バッテリーによる事故」235件について、被害状況別・製品別の事故発生件数を表1に示します。事故のほとんどが火災事故で、バッテリーから出火した炎が製品本体にとどまらず、周囲の製品や建物まで焼損させるなどの拡大被害が201件発生しており、うち建物の全焼に至った火災が14件ありました。このほか、バッテリーから噴出した炎でやけどを負ったなどの人的被害も13件発生しています。
表1:被害状況別・製品別の事故発生件数
事故事例
事例①:電動アシスト自転車
事故発生年月 2019年4月(兵庫県、年齢・性別不明、拡大被害)
【事故の内容】
ネット通販で購入した電動アシスト自転車用バッテリーを自転車から取り外して充電していたところ、出火し、床を焼損した。
【事故の原因】
非純正バッテリーの内部で短絡が生じて異常発熱し、焼損したものと考えられる。
【NITE SAFE-Lite検索キーワード】
バッテリー、電動アシスト自転車、充電中
事例②:充電式電動工具
事故発生年月 2020年4月 (岐阜県、40歳代・男性、軽傷)
【事故の内容】
ネット通販で購入した充電式電動工具用バッテリーを、購入後初めて充電器で充電していたところ、異音がして出火し、周辺を焼損し火傷を負った。
【事故の原因】
非純正バッテリーの保護回路基板(安全保護装置)の設計不良により、充電中のすべてのリチウムイオン電池セルの電圧を検知することができない構造であったため、一部のリチウムイオン電池セルが過充電状態となって異常発熱し、焼損したものと考えられる。
【NITE SAFE-Lite検索キーワード】
非純正、バッテリー、電動工具
事例③:充電式掃除機
事故発生年月 2023年9月 (兵庫県、性別・年齢不明、製品破損)
【事故の内容】
ネット通販で購入した充電式掃除機用バッテリーを機器に取り付けた状態で保管していたところ、突然作動するとともに出火した。
【事故の原因】
非純正バッテリーの保護回路基板(安全保護装置)が異常発熱して出火したものと考えられる。なお、2021年8月16日よりリコールが実施されている製品であった。
【NITE SAFE-Lite検索キーワード】
非純正、掃除機用バッテリー
気を付けるポイント:「非純正バッテリー」が抱えるリスクについて理解する。
リスク①:設計に問題があり、異常発生時に安全保護装置が作動しない場合がある。
非純正バッテリーの中には、純正バッテリーに比べて安全対策が劣る製品があり、過充電保護装置などの安全保護装置が異常発生時に働かないおそれがあります。
▼過充電保護装置が劣る例
安全対策が適切なバッテリーではすべてのリチウムイオン電池セルが決められた電圧で充電されるよう監視されていますが、安全対策が劣るバッテリーの場合、電圧の監視が部分的になっているものがあり、決められた電圧より高い電圧で充電(過充電)されて発火する危険があります。
リスク②:品質管理が不十分で、通常の使用であっても事故に至る場合がある。
非純正バッテリーの中には、製造時の品質管理が不十分で、電池内部に異物が混入していたり、電気回路の部品に不良品が使われていたりする製品があります。そうリコールった製品は使用中や充電中に発火事故が発生するおそれがあります。製品によっては充電後にしばらくしてから発火したという事例もあります。
リスク③:事故発生後に、事業者の対応や補償を受けられない場合がある。
非純正バッテリーを販売した事業者に連絡をしようとしても、電話番号などの記載がないなど消費者から連絡するための情報が不十分であったり、連絡できたとしても、対応を行っていなかったり日本語が通じなかったりする事業者もあります。また、非純正バッテリーでの事故の場合、機器本体のメーカー側からの対応や補償も受けられないおそれがあります。
気を付けるポイント:メーカーからのお知らせ及びリコール情報を確認する。
バッテリーを取り付ける機器本体のメーカーのホームページに非純正品に関する注意喚起が掲載されているか確認をする。
非純正バッテリーの使用について、機器本体のメーカーが注意喚起を行っている場合があります。メーカーのホームページを確認するなどして、事故が発生している製品でないことを確認してください。
使用しているバッテリーがリコール対象ではないか確認する。
リコール対象の非純正バッテリーによる事故も発生しています。リコール対象製品をお持ちの場合は、不具合がなくても直ちに使用を中止し、販売店や製造・輸入事業者に確認や相談をしてください。
【リコール対象の非純正バッテリー(例)】
有限会社すみとも商店及びロワ・ジャパン有限会社が輸入した掃除機用の非純正バッテリーが、使用中や充電中ではない保管状態であっても発火のリスクがあるバッテリーであるため、それぞれ2021年8月、10月よりリコールを開始しています。
■放電方法及び廃棄について(引用:経済産業省)
https://www.meti.go.jp/press/2021/12/20211217005/20211217005.html
■該当リコール情報(引用:経済産業省)
○有限会社すみとも商店(倒産)
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/file/210816-1.html
○ロワ・ジャパン有限会社
https://www.meti.go.jp/product_safety/recall/file/211001-2.html
【「消費者庁のリコール情報検索サイト」のご紹介】
消費者庁のリコール情報サイトにおいて、最新のリコール情報や、キーワードによるリコール情報の検索を行うことができます。さらに、「リコール情報メールサービス」に登録することでリコール情報が提供されます。
消費者庁リコール情報サイト
【「NITE SAFE-Lite(ナイト セーフ・ライト」のご紹介】
NITEはホームページで製品事故に特化したウェブ検索ツール「SAFE-Lite(セーフ・ライト)」のサービスを行っています。製品の利用者が慣れ親しんだ名称で製品名を入力すると、その名称(製品)に関連する事故の情報やリコール情報を検索することができます。
また、事故事例の【SAFE-Lite検索キーワード例】で例示されたキーワードで検索することで、類似した事故が表示されます。
https://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/safe-lite.html
今回の注意喚起動画はこちら
>>バッテリーパック「電動アシスト自転車の非純正バッテリーが発火」
独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE) 製品安全センターの概要
NITE 製品安全センターには、消費生活用製品安全法などの法律に基づき、一般消費者が購入する消費生活用製品(家庭用電気製品やガス・石油機器、身の回り品など)を対象に毎年1千件以上の事故情報が寄せられます。製品安全センターでは、こうして収集した事故情報を公平かつ中立な立場で調査・分析して原因究明やリスク評価を行っています。原因究明調査の結果を公表することで、製品事故の再発・未然防止に役立てています。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 独立行政法人製品評価技術基盤機構
- 所在地 東京都
- 業種 政府・官公庁
- URL https://www.nite.go.jp/
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