AI時代の広報KPIの再定義|PV・掲載数から「質と積み上がり」へ

資料のグラフとノートパソコンで作業する手。「AI時代の広報KPIの再定義 PV・掲載数から『質と積み上がり』へ」の文字

掲載件数もページビューも毎期きちんと報告しているのに、経営層から「で、事業にはどう効いたのか」と問われると答えに詰まってしまう。そんな広報担当者の方は、少なくないのではないでしょうか。これは成果が出ていないからではなく、成果を測る物差しが「アクセスの量」に寄っているために起きます。本記事では、その物差しを「量」から「質と積み上がり」へ組み替える考え方を、経営層に説明できる形で整理します。

広報の効果測定はPV・掲載数だけでは不十分

四半期ごとの報告で「メディア掲載○件、ページビュー○万」と並べても、経営層がほんとうに知りたいのは、その数字が受注や商談にどう結びついたのかです。露出の件数と、事業成長に紐づく成果。この二つをつなぐ説明までは、なかなか用意できません。

しかし、説明がつかないままだと、次の施策に必要な予算も通りにくくなります。露出が増えたことは数字で示せても、その露出が売上や問い合わせにつながったという証拠までは出せないと、広報の努力が、社内で正しく評価されません。

この行き詰まりには、多くの広報がすでに気づいているのではないでしょうか。例えば、検索結果の上位に表示されることを目的としたSEO記事を量産し、アクセス自体はしっかり伸ばせたが、問い合わせには紐づかなかったという話はよく耳にします。数を集めること自体には成功しても、そこから事業の次の一歩へ進む人は、ごくわずかです。せっかく増やした訪問も、成果の手前で止まってしまいます。アクセスを増やすことと事業が伸びることは同じではありません。

アクセス数と事業成果は紐づかないことを示す図。広報が報告できるアクセス(PV・掲載数)はたくさん集まるが、経営層が知りたい問い合わせ・商談はごくわずか。問題は成果が出ていないことではなく、アクセスの量で測っていること

だとすれば、いま向き合うべき問題は、成果が出ていないことではありません。成果を「アクセスの量」で測っていること、そのものです。

広報KPIは事業成果に紐づける

前章では、成果をアクセスの量で測っていること自体が問題だと分かりました。ただし、これは量を測るのが悪いという意味ではありません。掲載やアクセスを増やすことは、事業を伸ばすための手段であって、目的そのものではないからです。手段である以上、いくら数字が伸びても事業成長に紐づくことがわからなければ、成果を上げたことにはなりません。

そこで、目的を置き換えます。件数を増やすこと自体ではなく、その掲載をきっかけに問い合わせや商談が生まれたか、事業成長に紐づく指標を成果として見にいきます。

ただし、これは掲載やアクセスの量を全く見ないという話ではありません。多くの人に届き、たくさんの場所に載るという到達や露出は、成果を生むための土台です。そもそも知られていない状態からは、深い関心も、名前で思い出してもらう認知も生まれようがありません。アクセス量はこれからも必要であり、変えるのは、それ自体を最終の目的にしないということだけです。

この「量だけでなく、その後の行動まで見る」という考え方は、これからの広報KPIを考えるうえで、より重要になっています。なぜなら、AIの登場によって、情報に触れた人が必ずしも自社サイトを訪れるとは限らなくなったからです。従来のようにアクセス数だけを見ていると、実際には見込み客との接点が生まれていても、その価値を捉えきれないケースが増えています。

LLMOは「大量アクセス」を稼ぐ施策ではない

その変化が分かりやすく表れているのが、AI検索です。これまで人は、検索結果の一覧から自分でサイトを開き、中身を読んでいました。ところが最近は、質問すればAIが要点をまとめて答えるようになり、自社サイトにたどり着くまでの道筋が変わりました。それに伴い、問い合わせや資料請求へつなげる入り口も、以前とは変わっています。

「検索」から「AIに質問」へ情報の探し方が変わったことを示す図。これまでは、検索する人がたくさんのサイトから選び、開いて読み、問い合わせる流れ。現在は、AIに質問する人がAIの回答を読み(多くはここで完結)、引用されたURLからサイトを開いて読み、問い合わせる流れ

こうした変化を受けて、AIが答えを組み立てるときに自社の情報が取り上げられるよう働きかける動きが出てきました。この、AIに自社の情報を見つけてもらいやすくする取り組みが、LLMOと呼ばれるものです。

ただ、正直に言えば、LLMOは大量のアクセスを稼ぐための施策ではありません。PRワイヤーのコーポレートサイトの観測でも、AI経由の流入は全体の約0.6%にとどまります(調査詳細は後述)。

流入が小さいのには、はっきりした理由があります。

  • AIが答えをその場で示す:回答の中で名前が出ても、わざわざ元のサイトまで来る人は少ない。
  • AIで調べる習慣がまだ定着していない:情報探しの中心は、いまも従来型の検索。
  • AIが根拠に挙げるサイトは限られる:検索結果のように何十件も並ぶわけではなく、自社が示される機会そのものが少ない。

これはPRワイヤーだけの傾向ではありません。世界の6,500サイトを対象にした調査でも、AI経由の流入は全体の約0.2%にとどまり、この経路がまだ小さいことを裏づけています(出典:Web担当者Forum「『AI経由』の流入が前年比632%増! オーガニック検索は減少傾向【Contentsquare Japan調べ】」2026年3月)。

AI経由の流入は再訪率・CVRで評価する

では、流入数の少ないAI経由を、広報KPIではどう評価すればよいのでしょうか。事業やフェーズによっては、アクセス数も指標の一つになります。ただ、AI経由のように量が小さい経路では、それだけで判断すると価値を見誤ります。見るべきなのは、アクセスの量だけでなく、サイトを訪れた人がその後どれだけ事業成長に近い行動をとったかです。

具体的には、一度訪れた人が再びサイトに戻ってきたかを示す「再訪率」と、問い合わせや資料請求など次の行動に進んだ割合を示す「CVR」です。もともと大量のアクセスを集める施策ではないLLMOを流入数だけで評価すると、その価値を見落としてしまいます。

そこで、同じAI経由の流入を「質」という視点から見てみましょう。PRワイヤーの観測(下記表)では、AI経由から来た人のうち約16%が、一度きりで終わらずもう一度サイトに戻ってきていました。この再訪率は、検索から来た人の約2倍にあたります。

戻ってくるだけではありません。CVR(次の行動に進んだ割合)も際立っています。新規でも約1.3%と、検索(約0.2%)のおよそ6倍。再訪ではさらに高い約2.6%です。数は少なくても、よく決まり、よく戻る経路だということです。

経路流入比率再訪率新規CVR再訪CVR
AI0.62%15.8%1.30%2.59%
検索(オーガニック)71%8.1%0.21%0.76%
ダイレクト21%16.0%0.43%0.78%
リファラル3.2%8.1%0.64%0.65%
メール2.5%5.0%0.30%0.68%

※共同通信PRワイヤーのコーポレートサイト(kyodonewsprwire.jp/corp/)を対象に、2025年8月から2026年7月までの1年間、各経路のデータを調査(広告経由は除く)。生成AIは、ChatGPT・Gemini・Perplexity・Copilot・Claude経由などのセッションを集計した数値。各比率は期間合計で算出(PRワイヤー調べ)。

表を縦に見ると、量の多い経路ほど質が高いわけではないと分かります。流入の大半を占める検索でも、再訪率は約8%、次の一歩に進んだ割合は1%に届きません。一方、流入量の少ないAI経由は、再訪率・CVRともに高い水準にあります。

同じ経路でも、量で見れば最下位、CVRで見れば最上位です。見る指標を替えるだけで、評価はこれほど変わります。成果が出ていなかったのではなく、見ていた指標がずれていたのです。

経路別の流入比率と新規CVRの横棒グラフ。流入比率は検索(オーガニック)71%、ダイレクト21%、リファラル3.2%、メール2.5%、AI0.62%でAIが最下位。新規CVRはAI1.30%、リファラル0.64%、ダイレクト0.43%、メール0.30%、検索(オーガニック)0.21%でAIが最上位(検索の約6倍)

では、なぜAI経由の流入は、その後の行動につながりやすいのでしょうか。一つの理由として考えられるのが、検討に時間がかかる商材との相性です。特にBtoBのように、情報収集や比較検討を重ねてから問い合わせや商談に進む商材では、「広く一度届くこと」だけで成果が決まるわけではありません。一人の見込み客が何度も情報に触れて理解を深め、そのうえで次の行動に進む、という積み重ねが重要になります。

その点、AI経由のユーザーは、AI上である程度情報を収集したうえでサイトを訪れている可能性があります。すでにテーマへの関心や検討度が高まった状態で訪れるため、再訪や問い合わせといった次の行動につながりやすいことが考えられます。

このように、AI経由のような経路は、「どれだけ来たか」だけでなく「来た人がその後どう動いたか」まで見て評価します。

AI時代の広報KPIを経営層に説明する方法

前章で見たとおり、AI経由は数こそ少なくても事業成果に近い経路でした。では、これを日々のKPIに落とすと、経営層には何を報告すればよいのでしょうか。ポイントは、見る指標を二つに絞ることです。

  • 質:来た人が、その後どう動いたか。もう一度サイトに戻ってきたか(再訪率)、問い合わせや資料請求に進んだか(CVR)を見ます。
  • 積み上がり:どれだけ「名前で思い出してもらえる状態」が育ったか。AIに質問したときに自社名が答えに挙がるか、社名で検索する人が増えたかを見ます。

この二つは、経営層が聞きたい言葉に置き換えられます。

質は「獲得効率」の話になります。数は少なくても、受注に近い見込み客を連れてくるからです。何人集めたかより、来た人がどれだけ受注に近いかで語れます。

積み上がりは「資産」の話になります。掲載は載った瞬間に消えますが、AIに引用される立場や、名前で思い出してもらえる認知は残り、来期以降も効きます。一度の費用が資産として残るということです。

また、「ChatGPTで自社名を聞いても出てこない」「競合ばかり挙がる」は、経営層が反応する数少ない広報テーマです。放置すれば見込み客を取りこぼす、守りの投資として説明できます。

こうして広報予算は、「露出を買う費用」ではなく、「受注に近い客を、来期にも効く形で獲得する投資」として語れます。

広報の指標を経営層の言葉に翻訳する図。質(再訪率・CVR)は「獲得効率」に、積み上がり(AIに引用される・社名で検索される)は「資産」に置き換えられる。放置すればAIで自社名が出てこない・競合ばかり挙がる機会損失となり、守りの投資としても説明できる

設計のコツは、いきなり最終目標を追わないことです。たとえば検討に時間がかかるBtoBのサービスでは、契約の申し込みまではハードルが高く、何度も訪れて理解を深めてから決める人が多くなります。そこで資料請求・問い合わせ・説明会やセミナーへの参加といった段階を「中間の目標」に置くと、進み具合が見えてきます。

指標を二つに絞り、経営層の言葉に翻訳する。それだけで、広報の報告は「何件載ったか」から「事業にどう効いたか」に変わります。

広報KPIを「量」から「質」へ切り替える

広報の成果は、どれだけの人が来たか、という量だけでは測りきれません。もう一度戻ってきたか、問い合わせや資料請求に進んだか、という来た人の質。そして、AIの答えに名前が挙がり、名前で検索してもらえる、という残り続ける認知の積み上がり。同じ成果でも、この二つで見れば評価は変わります。

積み上がりをつくるには、AIが答えの根拠を探すときに、信頼できる情報として自社が見つかる状態が要ります。その足がかりになるのが、報道機関のような第三者のメディアに情報が載ることです。

量を追う報告から、質と積み上がりで語る報告へ。物差しを替えることが、広報の成果を経営層に伝える第一歩になります。

PR|共同通信PRワイヤーの記事化率

共同通信PRワイヤーで配信したプレスリリースは、追跡調査で約7割が記事化されていました(※)。記事になった原稿は、地方紙や業界誌など報道機関各社のドメインに転載されます。一本の配信が、AIに根拠として参照されやすい入口を、いくつも生みます。

※記事化率は、2021年12月に国内メディアへ配信した532本を2022年2月まで追跡した数値です。紙媒体・WEBメディアが対象で、提携メディアへの転載は除外しています。

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汐塾編集部

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