ナラティブとは
ナラティブ(narrative)とは、出来事や情報を「点」ではなく「流れ」としてつなげて伝える考え方です。単なる事実の羅列ではなく、背景や課題、意思決定の理由、結果として起きた変化までを筋道立てて示すことで、受け手が意味を理解しやすくなります。広報では、発表が単発で終わらず「この組織は何を大切にし、どこへ向かうのか」が一貫して伝わる状態を指します。
たとえば同じ情報でも、伝わり方は変わります。
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ナラティブ:現場で〇〇の課題が増えた→既存手段では解決しづらかった→だからこの設計にした→その結果、誰がどう良くなったか。
ナラティブが求められる背景と課題
求められる背景
情報が増えるほど、受け手は「何が起きたか」だけでなく「なぜそれを行うのか」「どんな意義があるのか」を含めて理解しようとします。広報でも、単発の成果発表より、取り組みの背景や判断の根拠、継続的な変化が説明されているほど、ニュースとして理解されやすく、信頼にもつながります。ナラティブは、その説明を支える枠組みになります。
企業内で起きやすい課題
- 発表が点在してつながらず、取り組みの全体像が見えない
- 事実と主張が混ざり、宣伝的、恣意的に受け取られやすい
- 部署ごとに語り口が変わり、メッセージが分断される
- 背景や検証が不足し、次の発表につながる材料が残らない
取り組みの目的
- 背景から結果までを一貫して説明できる状態をつくり、理解と信頼を積み上げる
- 誤解や過度な期待を避け、問い合わせや取材に耐える説明可能性を整える
- 継続的な発信により、取り組みの意味を社会に定着させる
ナラティブの関連知識
広報におけるナラティブは、印象的な物語を作ることが目的ではありません。最小セットは次の四つです。
- 背景:何が起きているか
- 課題:何に困っているか
- 意思決定:なぜその選択をしたか
- 変化:結果、誰がどう変わるか
この四つがそろうと、受け手は発表を自分の文脈で理解しやすくなり、報道機関も事実関係と意義を整理しやすくなります。
広報・PRにおける実務ポイント
1. 核となる一文を先に決める(広報メッセージ設計)
誰のどんな課題に向き合い、何を実現したいのかを一文で定義し、以降の発表はその一文に回収される構造にします。
2. ファクトと意義を分けて書く(一次情報の信頼性を高める)
数値、対象、期間、比較条件などの事実を先に置き、判断の理由や狙いは後段で補足します。受け手が検証できる形に整えると、恣意的に見えるリスクを下げられます。
3. プレスリリースの構成を統一する
背景→課題→意思決定→結果の順に配置し、読み手が迷わない構造にします。単発の告知でも「なぜ」と「変化」を一段落でも入れると、理解が変わります。
4. プレスリリースの継続発信でナラティブを育てる
発表→進捗→検証→次の一手という更新の型を持つと、ナラティブが継続します。小さな変化も蓄積され、次のニュースの根拠になります。
5. メディア向けと一般向けで情報を書き分ける
同じ事実でも、メディアが必要とする情報と一般の読み手が知りたい情報は異なります。骨子は揃えつつ、背景説明や取材価値、利用者視点など、重点を変えて書き分けると伝達精度が上がります。書き分けの考え方は、関連記事「〈メディア向け・生活者向け〉プレスリリース書き分けのメリット」も参考になります。
6. ニュースレター配信で定期的に更新を届ける
プレスリリースにしにくい小さな進捗や補足情報は、ニュースレターで定期発信することでナラティブの空白を埋めることができます。特に、背景の追加説明、検証の途中経過、現場の声などは、ニュースレターで継続的に伝えることで理解が深まりやすくなります。
共同通信PRワイヤーでは、プレスリリース配信だけでなくニュースレター配信も可能です。ニュースレターの企画は、関連記事「ニュースレターとは?ネタの選び方や作り方のポイント」も参考になります。
プレスリリースとニュースレターでナラティブを継続発信する
ナラティブ(伝え方の設計)は、発表を点の告知で終わらせず、背景から変化までを一貫して伝えるための枠組みです。広報では、事実に基づく説明を積み重ねるほど理解と信頼が育ち、取材や問い合わせにもつながりやすくなります。
プレスリリースで公式情報を確実に届け、ニュースレターで継続的に更新を伝える運用を検討する際は、下記資料から詳細機能を確認してください。
関連用語
PR(パブリック・リレーションズ)、プレスリリース、ニュースレター、アーンドメディア、PESO(ペソ)モデル、プロセスエコノミー
