
大阪府中南部に位置する政令指定都市・堺市。2008年から共同通信PRワイヤーを活用し、世界遺産である百舌鳥・古市古墳群をはじめ、堺打刃物や千利休が大成した茶の湯文化など、多彩な魅力を発信してきました。近年は、都市像として掲げる「未来を創るイノベーティブ都市」のもと、SNSや市独自のキャラクター活用など、戦略的なプロモーションを展開しています。
今回は“攻めの自治体のPR”を支える考え方や取り組みについて、広報戦略部広報課の三石様、小松様、ハニワ部長にお話を伺いました。
戦略的広報を支える体制づくりと市外向け情報発信の強化
全国からの反応に効果を実感
―堺市の現在の広報体制は?
小松 現在、広報課内には、企画係・報道係・広報係・広報戦略係の4つの係があり、私の所属する広報戦略係では、係長以下5名が連携しながら、PRワイヤーのプレスリリース作成や配信、Instagramやキャラクターなどを活用した市外向けプロモーション業務などに取り組んでいます。
―2008年から長年にわたりご利用いただくワイヤーサービスの位置づけは?
三石 全国のメディアに情報を展開するための手法として、PRワイヤーを位置づけています。マスメディア以外にも、観光やビジネスなどの専門メディアにアプローチできる点も高く評価しています。
小松 PRワイヤーでは画像や動画、資料の添付が複数可能なため、詳細な情報を伝えることができます。最適なタイミングで発信できる時間設定機能にも満足しています。
―今年度は、年24回と昨年の2倍のプランでご契約。情報発信を増加する背景は?
三石 都市間競争が高まる中、市外に向けた情報発信の重要性はここ数年で一層増しています。広報課では、今年度、特に人口流入に関するプロモーションに重点的に取り組んでおり、市ホームページに堺の居住魅力を取りまとめた特設ページを開設します。こうした背景を踏まえ、市外向けプロモーションを更に強化するため、年間配信回数を前年度の2倍に増やしました。

(右)2026年4月にリニューアルオープンした堺市博物館。常設展示が充実し、新作映像も公開。隣接してガス気球も運行中
―プレスリリース配信を行う情報はどのような考え方で選定していますか?
三石 プレスリリースでは、市外や全国に向けて発信することを前提に情報を選定しています。メディアに取り上げてもらいやすいよう堺市独自の取り組みや話題性のある取り組みを積極的に発信することを心がけています。直近では「堺市公式Instagram写真投稿キャンペーン開催」や「堺市博物館のリニューアルオープン」などを配信しました。
―反響が大きかったプレスリリースはありますか?
小松 昨年度、特に反響が大きかったのは「さいとう・たかを劇画の世界」と「堺刃物まつり」の二つです。「さいとう・たかを劇画の世界」では、全国から多くの方にご来場いただき、目標来場者数を大幅に上回る結果となりました。もちろん、広報紙など複数のツールを活用して情報発信を行っていましたが、全国からの集客という点ではPRワイヤーによる発信効果も大きかったと感じています。また「堺刃物まつり」では、クリッピング数が80件を超え、他の企画と比べても大きな反響がありました。

(右)刃物産地をPRする「堺刃物まつり」。毎年行っている堺市の人気イベント
Instagramのフォロワー数約3.6万人 !
成功の秘訣は徹底したユーザー目線
―堺市のInstagramはフォロワー数約3.5万人越えと、行政の運営するSNSのなかでも人気を博していますね
三石 ありがとうございます。2021年から運用を開始し、観光情報だけでなく、カフェやグルメなど近隣エリアからのお出かけ需要も意識した発信を行い、現在では約3.6万人の方にフォローいただいています。
―写真や映像も美しく、プロ並みの腕前です。Instagramの運用ポイントはありますか?
小松 堺市Instagramでは、職員が実際に足を運んでリサーチしたスポットを数多く紹介しています。映える写真の撮り方なども日々勉強しています。
三石 運用面で特に意識しているのは、投稿ごとの反応をしっかり振り返ることです。どの投稿が多くの方に見ていただけたのか、保存やコメントにつながったのかなどを分析し、次の発信に生かしています。自治体として伝えたい情報を発信するだけではなく、閲覧者の関心やニーズを踏まえながら改善を重ね、より多くの方に堺の魅力が届くよう工夫しています。
小松 投稿内容の選定にあたっては、「休日や空き時間のおすすめの過ごし方」をコンセプトに、こちらが伝えたい内容を発信するだけではなく、閲覧者にとって役立つ情報かどうかといった視点で、部内で議論を重ねながら決めています。「堺市公式Instagram」で検索いただくと、堺の魅力やおすすめの情報が数多くご覧いただけますので、ぜひフォローしていただきたいです。
世界遺産百舌鳥・古市古墳群をはじめとする堺の魅力をPR
大阪・関西万博でも活躍するハニワ部長
―堺市のPRキャラクター「ハニワ部長」が人気です。どのようにして誕生したのでしょうか?
ハニワ部長 2014年6月に、百舌鳥・古市古墳群の世界遺産登録に向けた機運醸成を目的として、その魅力や価値をPRするキャラクター「ハニワ課長」としての活動が始まりました。2019年に百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録されたことを受け、同年8(ハ)月28(ニワ)日に、それまでの活動が評価され、「ハニワ部長」に昇進しました。その後テレビのバラエティー番組などでも取り上げていただき知名度が上がり、現在では世界遺産だけでなく、堺全体の魅力を発信するPRキャラクターとして活動しています。

―2025年に開催された大阪・関西万博は、堺にどのような影響がありましたか?
三石 大阪・関西万博では、会場内で堺市主催催事等を開催し、堺の歴史文化としての茶の湯や伝統産業などの魅力を新たな切り口で発信しました。また、万博を契機に堺市内への来場者を増加させることにも注力し、世界遺産「百舌鳥・古市古墳群」をはじめとする観光資源のPRや周遊促進に力を入れました。結果、万博期間中は仁徳天皇陵古墳のある大仙公園エリアへの来訪者数が増加するなど、一定の誘客効果が見られました。
ハニワ部長 私も「大阪・関西万博 勝手に応援し大使」として活動し、公式キャラクターのミャクミャクとの共演をはじめ、さまざまな場面で万博を盛り上げながら堺市のPRに取り組みました。堺の魅力を多くの方に知っていただく機会になったと嬉しく思っています。
―万博で他国とコミュニケーションを取られたと聞きましたが、どのようなものですか?
三石 例えば、万博会場ではヨルダンパビリオンと連携し、堺の伝統産業である「堺五月鯉幟(さかいごがつこいのぼり)」のワークショップを実施しました。
その交流をきっかけに関係性が深まり、世界遺産の魅力発信を目的に毎年実施している「古墳サミット」では、「大阪・関西万博開催記念」と位置づけて万博で交流した国の遺跡を講演で取り上げ、その際、ヨルダンパビリオンで使用した砂を展示するなど、万博でのつながりを堺市の取り組みに生かしています。
―万博で関係を構築し、次につなげて展開されたのですね
三石 万博を一過性のイベントとして終わらせるのではなく、万博を通じて培われた国際交流や子どもたちの学びの機会、新たな挑戦を通じて得られた経験をレガシーとして継承・活用することが重要だと考えています。
全庁に戦略的広報の浸透を図る
ターゲットやタッチポイントを意識し、効果検証を徹底
―自治体広報としての役割や課題について、日々感じられていることはありますか?
小松 私は今年度から広報課に配属され、広報の役割について改めて考える機会が増えました。これまでは情報を発信すること自体に意識が向きがちでしたが、実際にプロモーションに取り組む中で、事業の目的やターゲット、その人たちに届くタッチポイントなどを意識しながら戦略的に進めることの難しさを実感しています。
三石 戦略的広報は、広報課の職員だけが実践していても十分ではありません。全ての職員が事業を進める中で、目的やターゲットを明確にし、それに応じた広報を展開することが重要だと考えています。特に大切なのは、情報を発信して終わりではなく、当初設定した事業目標にどのように寄与したのかを検証し、改善することです。その積み重ねが、より効果的な広報や成果の向上につながると考えています。
―効果検証は、どのようなことを意識して行っていますか?
三石 事業の達成状況を振り返ることはもちろんですが、個々の情報発信の効果についても検証することが重要だと考えています。例えば、プレスリリースであれば、配信後のメディア掲載件数やホームページ等への流入件数、問い合わせの件数を確認し、どのような内容が反響につながったのかを分析します。またイベントであれば、アンケートなどを実施したうえで、どの広報媒体をきっかけに来場されたかを分析することもあります。もちろん、全ての広報活動について詳細な検証を行うことは難しいですが、どういう意図や目的を持って広報活動を行ったのか、そしてそれが期待した役割を果たしたのかを可能な限り振り返ることが重要だと考えています。
―今後のPR展開も楽しみです。次はどのような魅力を発信していく予定でしょうか?
小松 先ほどもお伝えしたとおり、今年度は市ホームページに堺の居住魅力を取りまとめた特設ページを開設します。今後は、開設したページをより多くの方に見ていただけるよう、プレスリリースやSNSなどを活用しながら効果的に誘導を図り、プロモーションを展開していきたいと考えています。
三石 プレスリリースでは、写真や動画、キャッチコピーなどを効果的に活用して、移住を検討している方にとって、「堺にはどのような魅力があるのか」「どのような暮らしができるのか」といった具体的なイメージを持っていただけるよう情報を発信したいと考えています。今後も市民や事業者をはじめ、移住検討者や来訪者など、さまざまなステークホルダーに対して、それぞれのニーズや関心に応じた形で堺の魅力を戦略的に届けていきたいと思います。
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