戦略的広報を目指し「みらい戦略課」を発足
ワイヤーサービス導入後は記事化の連鎖に感嘆
―「みらい戦略課」という部署名が目を引きます。広報業務は同課で行っていらっしゃるのでしょうか?
羽染 はい、企画財政課のような部署が企画と財政に分かれ、もともと総務課にあった広報もより戦略的にやっていこうと、平成27(2015)年に企画部門と合わさって「みらい戦略課」が発足しました。それまでは、いわゆる行政の「お知らせ広報」から抜け出せていなかったと思いますが、みらい戦略課になったことをきっかけに、より市の思いをお伝えできるようになったのかなと思います。
―現在の広報体制は?
羽染 広報広聴係で、基本的には私と上司と2人で担当しています。市報、ホームページ、Facebook、報道機関への情報提供などを担当しています。
―2019年の共同通信PRワイヤー導入前は、どのようにプレスリリース対応をされていたのですか?
羽染 PRワイヤーは年間5回までのコースを契約しているため、その他の広報については米沢記者クラブなど地元の報道機関、中央紙や通信社へは山形市にある山形支局の方にFAXで差し上げています。
―メディアの反応はどうですか?
羽染 新しい取り組みは取り上げてもらえることが多いですが、毎年開催しているお祭りなどはストーリー性も少なく、地元紙以外の反応は鈍いことが多いですね。PRワイヤーの導入後は、共同通信社発行の「プレスリリースの書き方」という本なども参考にしながら、記者の方にポイントをつかんでいただけるように少しずつ実践を重ねています。
―PRワイヤーをご契約いただくあたり、何かきっかけがあったのでしょうか?
羽染 別の事業でご一緒していた市外の方から「(プレスリリース配信について)そういったサービスがありますよ」と情報提供を受けました。その後、庁内でも割ととんとん拍子で導入しようということになりました。
―導入時に感じていたメリットは?
羽染 県外の方にも情報が届くということ、です。以前は、情報提供先は山形県内に限られていましたが、PRワイヤーで発信すると、運が良ければ県外の方が取り上げてくださいます。それに、配信すると全国の方にすぐに情報が届くのは驚きでした。
―県外に届くということと配信する際の簡便さ、そしてスピード、それがメリットということですね。
羽染 そうですね。記事が記事を呼んで連鎖していく。どこかで取り上げられると、反響が波のように広がっていくなということも実感しました。
―共同通信PRワイヤーに感じた独自性は何かありますか?
羽染 いただいたサービス資料が良かったこともありますが、料金プランも私どものような小さな自治体でもとても確保しやすい予算でした。広告費としてお金に換算したら、とても市の予算規模で出せる額ではないので、広報に大いにご協力いただいていると感じています。全国に届くことを考えると、費用対効果としては安価なのかなという気もします。
―庁内からの反応はどうでしたか?
羽染 「こんなに届くんですね」「埼玉の新聞にこんなふうに載ってますよ」など、素直な驚きの声が多いです。多くの方の目に留まるのであれば、こんなにうれしいことはありません。内容に力があれば、メディアの方も取り上げてくださると実感しています。
SNSでも拡散した「ラーメンカードラリー」や
白竜湖の環境再生PRには県外からの反応も続々と
―特に印象的だった広報事案はありますか?
羽染 「ラーメン課R&Rプロジェクト」という、市内にたくさんあるラーメン店をPRするプロジェクトがあります。その取り組みの一環で、人気ラーメン漫画の「ラーメン大好き小泉さん」とコラボレーションさせていただきました。「市内でラーメンを食べてオリジナルカードを集め豪華景品の当たる応募ができる『ラーメンカードラリー』を開催します」とPRしたところ、全国の小泉さんファンやラーメン好きの方々に大きな反響がありました。SNSでも「南陽市に行ってラーメンを食べました」「カードが集まりました」とつぶやいてくださったので口コミでも拡散して、南陽市の名前を多くの方々に知っていただけたのかなと思っています。
―地元ラーメン業界の活性化につながっていますか?
羽染 ええ、ラリーの参加者の半分は市外からでしたし、広い地域の方に支持いただけました。もともと60店舗近くのラーメン店が「辛味噌ラーメン」を筆頭にさまざまなラーメンでしのぎを削っていました。漫画とのコラボでラーメンファンと主人公の小泉さんファンの両方を取り込めたのかなと思っています。
―漫画には、南陽市も登場したんですよね。
羽染 ええ、1話まるごとだったので驚きました。南陽市には、何かあった時にラーメンを出前してみんなで食べる「出前の文化」があるんです。丁寧な取材で、その文化も漫画の中で取り上げていただきました。作者の鳴見なる先生には大変感謝しています。カードラリーは、2021年12月~2022年2月末まで第3弾も開催しました。
―今回の「ラーメンカードラリー」も盛況でしたか?
羽染 はい。コロナで県外からの来訪は若干減った印象ですが、開催期間中に参加全36店を食べつくし制覇した方が20人もいらっしゃいました。1日10杯食べた方もいらっしゃいます。
―ほかに「ラーメン課R&Rプロジェクト」について反響はありましたか?
羽染 カードラリー第2弾で小泉さんの描きおろしキャラクターを市報の表紙に使わせていただき、コラボを進めることをお知らせしたところ、県外の方から「市報を送ってくれませんか」と問い合わせがありました。中央のメディアに取り上げていただけてないと、なかなかなかった反響です。
―ほかに印象に残るリリースはありますか?
羽染 市内の白竜湖という湖で水草のヒシが大量発生して湖水面積が減少したため、巻き取り作業で除去する必要があり、ふるさと納税を利用して行うクラウドファンディングの「ガバメント・クラウドファンディング」で費用を募ろうという企画がありました。プレスリリースで広報したところ、「故郷なので頑張ってください」と県外の方からも反響をいただき、無事に目標金額を達成することができました。「南陽市ガンバレ」と多くの温かいメッセージをいただきました。うれしい驚きでしたね。
―高校生と進める「南陽高校市役所部」の活動も面白いですね。
羽染 はい、市民の方やメディアの方にも注目していただいています。生徒の皆さんが前向きに意見を出して、いろいろなことに取り組んでいただいています。そのパワーに驚いています。
市の観光資源を武器に、継続的な広報で
県外での知名度をさらに向上させたい
―広報としてPRする場合に、どのようなことに気を付けていますか?
羽染 「プレスリリースの書き方」という本も参考にしておりますし、記者の方が書きやすい文言や、新聞の記事に限りなく近づけた文体なども使うようにしています。各企画の担当課が作成したリリースにも広報が目を通していますが、一度目を通すだけで「記者の方は、本当はここを聞きたい」という部分が分かるようになってきたので、広報担当者から担当課にアドバイスして直してもらうことも増えてきました。
―担当課の広報マインドを高めたり書き方を教えたりする研修はされていますか?
羽染 広報研修に外部の講師の方をお呼びしていますが、まだまだ今後の市の課題ですね。
―千本桜や熊野大社など行きたいと思わせる場所がいっぱいあります。今後、観光面で取り組みたいことは?
羽染 いくつかありますが、南陽市には個性豊かな6つのワイナリーがありますので、そういった資源を生かした事業や催しをぜひPRワイヤーで発信していきたいですね。
―最後に広報業務について感じられている点を教えてください。
羽染 単発での記事化も大切ですが、山形の中で米沢市、山形市、酒田市に比べると南陽市は知名度が低いので、継続的な広報で南陽市の知名度をじわじわと向上させていくことも重要だと考えています。
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