
クラシエが7月31日から8月2日まで、クイーンズスクエア横浜で「魔女さんのおうちでねるねるパーティー!」を開いた。1986年発売の「ねるねるねるね」が今年で40周年を迎えるのに合わせた催しで、テレビCMでおなじみの『魔女さん』の家に見立てた空間に、写真を撮れるスポットや参加型のショーを並べた。
その『魔女さん』は、2月から姿が変わっている。髪はカラフルになり、眼鏡も明るい色になり、胸元には大きなリボンが付いた。1986年の発売当初からテレビCMに出ているキャラクターが、40周年の年に描き替えられた。
クラシエが公表した「ブキミ」「あやしげ」
発端は、子どもを対象とした調査だった。2025年8月6日のリリースには、『魔女さん』が「ブキミ」「あやしげ」といった印象を持たれていることが分かった、とある。
40周年のスペシャルサイトでは、同じことを『魔女さん』本人の一人称で説明している。「昔はもっと人気者だった(と思う)んだけど、実はブキミで、あやしげに思われていたみたい」という調子だ。全文にふりがなが振ってあり、読み手が子どもであることが前提になっている。
自社の看板キャラクターが子どもにどう見られているか。その調査結果を、クラシエは自ら明かした。しかもリリースでは、「プロジェクト発足の背景」の項に置いている。
変身アイディアを公募 集まった4,000件超
プロジェクトが動き出したのは2025年8月5日。クラシエ フーズの公式Xでハッシュタグを付けて変身アイディアを募り、同時に、仕事体験施設「カンドゥー幕張」で「おかしクリエイター」を体験した子どもからも集めた。Xでは同月31日まで、施設側は9月30日まで受け付けた。
翌2026年2月16日の発表リリースによれば、寄せられたアイディアは計4,000件以上。髪の色、眼鏡、服、胸元のリボンという変身の4点について、どんな声を反映したのかが並んでいる。「カラフルな魔女さんが見たい」「大きなリボンでおしゃれに変身」といった具合だ。
長く続いたキャラクターの姿を変えると、「勝手に変えた」といった反発が起きがちだ。公募にすれば、なぜ変えたのかを、社内の判断ではなく集まった声で説明できる。反発をどれだけ抑えられたのかは分からない。ただ、先に声を集め、それから新しい姿を見せるという順番そのものが、発表の一部になっている。
2010年、魔女のCMは一度復活している
2010年12月21日、当時のクラシエフーズ株式会社が「ねるねるねるね ブドウ味」のリニューアルを発表している。副題は「懐かしの魔女のCMも復活」。最近の子どもは強い酸味が苦手だという調査結果を受けて味を甘く改めたうえで、発売当初のCMに出ていた魔女を復活させる、という内容だった。リリースの本文にはこう書かれている。「ご自分のこどもの頃を思い出しながら、お子さんと一緒にお楽しみください」。
呼びかけの相手は、子どもではない。1986年に自分が食べていた世代、つまり当時の買い手になっていた親だ。専門誌「AdverTimes.」によれば、当時の調査では保護者に「体に悪そう」という不安もあった。同じリリースには、パッケージの裏面に色が変わる仕組みや膨らむ仕組みを載せたとある。不安の中身に、そのまま答えている。
この時期の売上を、クラシエは公式には発表していない。同誌は、こうしたリニューアルを行った2010年から2011年にかけてシリーズの売上が約1.7倍に伸びたと報じている。味の改良もパッケージの刷新も同時に進めた時期の数字で、『魔女さん』を戻したから売れた、という単純な話ではないだろう。
復刻メロン味は「令和の子ども」に合わせた
40周年が子ども一本に振り切ったわけではない。6月15日に発売した「復刻メロンの味」は、1986年の初代フレーバーを再現し、発売当時のデザインを使った復刻パッケージと、現在のキャラクターを載せたパッケージの2種類を用意した。ただし味のほうは「令和の子どもたちにも食べやすいよう」調整したとリリースにある。懐かしさは絵柄で出し、口に入るものは今の子に合わせる。2010年のブドウ味と同じ組み立てだ。
大人には、別の商品で呼びかけている。2025年9月に発売した「大人のねるねるねるね レアチーズケーキ味」だ。40周年サイトにも、子ども向けの文章と並んで「大人のみなさん、最近“ねるねる”してますか?」というページがある。
親の記憶に向けた発信をやめたわけではない。変わったのは、それを『魔女さん』に背負わせなくなったことだ。2010年の『魔女さん』は、親の記憶を呼び起こす役だった。40周年の『魔女さん』は、いまの子どものほうを向いて話している。
終売した商品を戻すときに企業が頼るのも、同じ記憶の力だ。永谷園が8月3日に12年ぶりに再発売した「モコモコ」は、寄せられた500件超の要望が根拠になっていた。
ただし記憶に頼れるのは、その商品を知っている世代だけだ。40年続いた商品は、いまの子どもにとっては生まれる前からある菓子という認識しかない。クラシエが登録商標として展開する「知育菓子」の入り口にあたる商品だけに、次の世代を取り逃せないという判断はあり得るだろう。
変身が子どもの印象を実際に変えたのかどうかは、本稿の時点で発表されていない。
自社の看板は、いま届けたい相手にどう見えているだろうか。愛されている前提で周年を祝う前に、一度聞いてみる価値はある。答えが「ブキミ」でも、それは発表の材料になり得る。
この記事の著者:金光成珠
出典:クラシエ株式会社(フーズカンパニー)「あの”魔女さん”が再デビュー!?新たな姿をみんなで考えるねるねるねるねの「魔女さん変身プロジェクト」が始動!」(2025年8月6日)/「ねるねるねるねの“あの魔女さん”が大変身!?カラフルでおしゃれに変身した姿で40周年を記念した新CMに2月16日から登場!!」(2026年2月16日)/「初代「ねるねるねるね」が復刻!!40年だそーだパウダーで変化する「ねるねるねるね 復刻メロンの味」2026年6月15日(月)より発売!」(2026年5月28日)/「大人の味覚に響く、濃厚スイーツ仕立て。「大人のねるねるねるね レアチーズケーキ味」が2025年9月1日(月)に新登場!」(2025年8月7日)/「この夏3日間限定!“魔女さんのおうち”が横浜に出現!40周年記念イベント「魔女さんのおうちでねるねるパーティー!」詳細公開」(2026年7月16日)/クラシエフーズ株式会社「人気のフレーバーが酸味を抑えてリニューアル発売「ねるねるねるね ブドウ味」」(2010年12月21日)/「ねるねるねるね40周年スペシャルサイト」/2010年当時の保護者調査と売上に関する数字は宣伝会議「AdverTimes.」(2026年7月31日公開)による

