広報を担当するならば、メディア(マスメディア)との関わりは必須です。
時代とともに変化してきたメディア環境と、マスメディアを活用して行われるマスコミュニケーション。メディアとマスコミの基礎知識を知っておけば、今後の広報活動に役立つことになるでしょう。
本記事では、マスコミュニケーションの歴史を解説していきます。
目次
マスコミュニケーションの歴史
新聞やテレビ、雑誌、ラジオ、Webメディアなどのメディア(マスメディア)を通じて、不特定多数の人に情報を伝えることを「マスコミュニケーション」と言います。
マスコミュニケーション(マスコミ)の歴史や背景について解説していきます。
マスコミュニケーションの始まりは古代エジプト
大衆に情報を伝えるマスコミの始まりは、紀元前・古代エジプト文明の時代にさかのぼります。
当時は「クライヤー(叫び屋)」と呼ばれる職人が、王の発布する法令を伝えたり、貿易船が持ち込んだ海外の名産品を伝え回る、という活動をしていました。
新聞などの印刷物がなく、識字率も低かったこの時代、クライヤーは重要なマスコミュニケーションの役割を果たしていました。
クライヤー制度は中世ヨーロッパ時代まで続きました。国王の認可機関に認定されるほど、信頼された地位にあったようです。
13世紀に新聞の元祖、15世紀に印刷機が登場
手書きメディアの登場は、13世紀末になります。
イタリアのジェノバやヴェネツィアで、地中海貿易の手書きニュース新聞が販売されました。
さらに14世紀後半にはドイツ南部の権力家・フッガー家が、世界の情報を収集し、顧客への情報提供サービスを行っていました。
このように情報に対するニーズが高まる中、15世紀半ば、ドイツ人のグーテンベルクが金属活字を使った活版印刷技術を発明します。
ここから印刷革命が始まりました。グーテンベルグの発明は、中世で最も重要な出来事の一つとされており、ルネサンス、宗教改革、啓蒙時代、科学革命などの発展に大きく寄与することになったと言われています。
アジアの状況も見てみましょう。
中国では8世紀・唐時代に木版印刷が登場し、仏教の経典など、宗教の書物が印刷されていました。
日本では飛鳥時代に木版印刷技術が伝わり、法隆寺の「百万塔陀羅尼」は現存する世界最古の印刷物と言われています。
新聞の歴史
世界最古の新聞の登場は、17世紀、ドイツのアウグスブルクやライプチヒの新聞が最初と言われています。
17世紀にはイギリスでも「週刊新聞」が数多く発行されました。さらに18世紀に入ると、「政党新聞」や「ゴシップ紙」が登場します。
アメリカでは19世紀後半、南北戦争を経て識字率が上昇し、新聞産業が盛んになります。二色印刷が登場し、新聞はさらに大衆化路線へ。部数拡大を求め、扇情的な内容の記事を掲載する「イエロージャーナリズム」という言葉の起源はここが始まりとなります。
余談:イギリスの「コーヒーハウス」
当時のイギリスで新聞を無料閲覧できる場所が「コーヒーハウス」でした。
コーヒーハウスはその名の通り、コーヒーを楽しむ社交場。当時のイギリス人はここで、投資家の情報交換や商談を行っていました。新聞記者による経済情報の取材なども行われていたようです。
ラジオからテレビの時代へ
ラジオ・テレビの登場で、マスコミ環境は大きな変貌を遂げていきます。
ニュースを配信する通信社とラジオ、テレビの歴史や背景を解説します。
通信社とラジオの登場
通信社(一般向けニュースの取材・配信をする組織)の始まりは、19世紀半ばのドイツです。プロイセン政府により整備され、商業通信用に民間にも開放されました。
20世紀初頭になると、写真や映画、ラジオといったメディアの多様化が進みます。ラジオやテレビは、人々が情報を得るメイン媒体の一つになりました。
特にラジオの登場は画期的で、当時の大衆生活の一部に溶け込みます。時のルーズベルト大統領やヒトラーなどは、ラジオ演説を盛んに利用した人物の一人です。
テレビの登場
テレビの登場は20世紀半ばになります。日本初の放送は1953年、NHKにより地上波放送が始まりました。
日本においてテレビが一般的に普及し始めたのは1950年代です。冷蔵庫、洗濯機、白黒テレビの3つの家電は「三種の神器」と呼ばれ、一般家庭へのテレビ普及へとつながっていきます。
さらにテレビは技術の進歩が著しく、時代と共に変化。白黒テレビからカラーテレビ、BS放送、CSデジタル放送、さらにワンセグやインターネットテレビと、目まぐるしく様変わりしています。
インターネットの登場でメディアも変化の過渡期に
インターネットの登場で、マスコミ環境はさらなる変化を遂げていきます。
世界と日本のインターネットの歴史と、その背景を解説します。
インターネットの歴史
インターネットの登場は、1958年のアメリカです。冷戦対抗のための軍事開発として始まりました。
日本では1984年、大学や企業の研究機関をインターネットで接続する試みが、実験的に行われ始めました。
インターネットの世界的な普及は1995年、マイクロソフト社の「Windows95」の登場によるものです。ここからのインターネットを取り巻く環境変化のスピードは、下記の年表からも分かります。
- 1999年 2ちゃんねる登場
- 2004年 Facebook・mixi登場
- 2005年 YouTube登場
- 2006年 Twitter登場
- 2010年 Instagram登場
- 2011年 LINE登場
- 2016年 Tik Tok登場
- 2022年 Chat gpt登場
Webメディアの中でも、SNSと言われるソーシャルメディアの開発・登場は目まぐるしいものとなっています。今後も新たなサービスが登場し、受け入れられていくことでしょう。
メディアの変化と広報活動
時代の変化とともに、広報活動も変わってきました。
特にインターネットがない時代においては、企業を取り巻くステークホルダーへの直接的な情報伝達は、手法も乏しく難しいものがありました。
そこでメディアを通して間接的にアプローチするパブリシティが重要な広報活動として位置付けられていました。メディアとの関係作りが広報活動の基本であると言われるのは、このような事情によるものです。
この「メディアとの良好な関係作り」という任務は、昔も今も変わりません。
ただ、インターネットが主流となってきた現代では、新聞・テレビ・雑誌・ラジオの4大マスメディアの他、Webメディアとの関係作りも必須のミッションです。
自社サイトやオウンドメディアを制作・運用するだけでなく、SNSの自社アカウントを開設して運用したり、あるいは新聞・雑誌のクリッピングに加えて、ニュースサイトやSNSでの発言などからも情報収集するなど、業務は多様化しています。広報活動は今、大きな過渡期を迎えていると言えます。
時代の変化・メディアの変化に対応できる広報活動を
時代とともにメディアを取り巻く環境は変化し、それに対応してマスコミュニケーションの手法も様変わりしてきました。
さらに近年ではWebメディアも登場し、広報とメディアとの関係はさらに複雑化してきています。
時代の変化にあわせ、PR活動も変化が求められていることは明らかです。広報担当者は各メディアにあわせ、適切なコミュニケーションを行うようにしましょう。
メディアについてより詳しく知りたい方は下記の記事も参考になります。ぜひご覧ください。
「メディアの意味は?マスメディア、報道との違いなど、広報がおさえておきたい言葉を解説」の記事を見る
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