新聞社、テレビ局、通信社などの記者が集まる団体が「記者クラブ」です。
広報担当者は、記者クラブへの投げ込みの際に関わることになります。記者クラブへの投げ込み方法や関連用語もあわせて詳しく説明していきます。
目次
記者クラブとは
記者クラブとは、新聞社やテレビ局、通信社などから派遣された報道機関の記者で構成される任意組織です。各大手メディアの記者が常駐する拠点でもあり、継続的な情報収集と取材活動を行っています。
現在約800の記者クラブが各地に存在し、中央省庁・国会・政党、企業・業界団体、地方自治体などに設置され、それぞれ各機関に特化した情報の収集と取材活動を行なっています。
記者クラブは主に3種類
任意団体である記者クラブは全国各地に存在しています。数ある記者クラブを分かりやすく分類すると、下記の3種類に分かれます。それぞれ詳しく説明していきます。
民間系記者クラブ
企業広報の担当者に一番関わりが深い記者クラブが、民間系の記者クラブです。例えば下記があります。
- 兜倶楽部(かぶとくらぶ)……東京証券取引所の中にあり、上場会社や証券会社、運用会社などを担当。経済系記者クラブの中では常駐人数が最大規模。
- 重工業研究会(重工クラブ)……日本鉄鋼連盟(東京・中央区)内にあり、鉄鋼以外にも非鉄金属や化学、繊維、紙、ガラス、化粧品、医薬品、アパレルなどを担当。経済系の記者クラブの中では担当範囲が最も広い。
- 経済団体記者会(財界クラブ)……経団連ビルの中にあり、日本経団連、経済同友会、日本商工会議所などを担当。
- 東商記者クラブ……東京商工会議所の中にあり、東京商工会議所に加盟する流通、小売、通販、食品関連企業など全ての企業の広範な分野を担当。
官公庁系記者クラブ
官公庁関係の記者クラブの一例に下記のものがあります。
- 総務省記者クラブ……総務省内にあり、情報通信、ネット関係、放送、郵政、地方自治などを担当。
- 日銀クラブ……日本銀行内にあり、日銀だけでなく銀行、保険など民間金融機関も担当。
- 農政クラブ・農林記者会……農林水産省内にあり、食品や農業、畜産関係を担当。
- 東京都庁記者クラブ……東京都庁内にあり、都政に関わる情報を担当。
政党関連系記者クラブ
政党関連の記者クラブは、政党本部や国会内にあります。例えば下記があります。
- 平河クラブ……主に自民党、公明党の取材を担当する。
- 野党クラブ……主に野党の取材を担当する。
このほか記者クラブは、各都道府県庁や政令指定都市などの主要自治体、法務局や税務署など国の出先機関などにも設置されています。
記者クラブの役割と歴史
記者クラブの役割は、記者クラブが誕生した背景と密接に関係しています。記者クラブの歴史を追いながら記者クラブの役割を説明していきます。
記者クラブが生まれた背景
記者クラブは、1890年(明治23年)に誕生した組織です。
明治中期、第1回帝国議会の取材禁止に対抗し、傍聴取材の権利を求め新聞記者が団体を結成。「記者クラブ」という形態で取材や情報開示を求めたことが始まりです。
記者クラブが担う役割
情報開示を求め誕生した背景の通り、記者クラブは個人では難しい取材アプローチを団体として行ってきた事例があります。
政治や公的機関、企業などの取材拒否に対し、個人ではなく記者クラブ団体で交渉を求めることにより、取材や会見・報道が可能になります。
一方で、記者クラブは閉鎖的で複雑な組織構造が批判されている事実もあります。
記者クラブに所属できるのは既存の報道機関のみで、フリージャーナリストやWebメディアの加入は議論されています。
ただしインターネットが主流の社会になり、国民の知る権利をさらに充実させる時代の岐路にある今、記者クラブにも変化が訪れているようです。フリージャーナリストやWebメディアの加入許可を検討するなど、少しずつ門戸が開かれつつあるようです。
記者クラブの活用方法「投げ込み」をするには
広報担当が記者クラブと関わる活動の一つに「投げ込み」があります。投げ込みのメリットと共に、投げ込みの説明をしていきます。
「プレスリリースの投げ込み」とは
プレスリリースの投げ込みとは、記者クラブにプレスリリースを直接持ち込むことを意味する、広報の業界用語です。
広報担当者としてはプレスリリースを投げ込むことにより、記者の目に留まるよう働きかけることができます。
プレスリリースを受け取った各記者は、プレスリリースの内容を精査した上で、記事として取り上げる価値があると判断されれば、企業への取材打診など記事にする行動を起こしていきます。
記者クラブへ「投げ込み」をするメリット
記者クラブへの投げ込みを行うメリットは以下の3点があります。
- 一度で複数の記者に伝えることができる
- 記者との関係や接点を作りやすい
- コストがほとんどかからない
記者クラブには業界の担当記者が在籍しているため、1回の投げ込みで多くの記者に情報を伝えることができます。情報を伝えたい関係者を中心に、効率的なアプローチが可能になります。
また記者との関係や接点を作りやすい点も大きなメリットです。広報担当者の重要なミッションである記者との関係づくり「メディアリレーションズ」を確実に実現することができます。
さらに投げ込みは、コストがほとんどかかりません。移動費用やプレスリリースのコピー代のみで、効率的なプレスリリースのアプローチができる点は、投げ込みが利用される理由の一つです。
プレスリリースの投げ込み方法
プレスリリースの投げ込み方法を具体的に説明していきます。
1 投げ込み先を探す
自社の業界やプレスリリースの内容に相応しい、適切な投げ込み先を探します。
投げ込み先の連絡先は、日本パブリック・リレーションズ協会が企画・編集する「広報・マスコミハンドブック(PR手帳)」などを活用して調べましょう。例えば下記のように分かれています。
- 兜倶楽部:上場会社や証券会社、運用会社など
- 東商記者クラブ:同クラブに入会している流通(百貨店、コンビニ等)や小売、通販、信販、食品関連企業
- 重工業研究会(重工クラブ):同クラブに加盟している鉄鋼、化学、非鉄金属、鉱業、製薬、ゴム、セメント、化粧品などに属する加盟企業
- 本町記者会:医療や薬剤関係の企業
- 日銀金融記者クラブ:銀行や保険会社などの金融機関
- 自動車産業記者会:自動車産業
官公庁・自治体の記者クラブでは、行政や地域に関連のある公共性の高いプレスリリースに限られることが多いので注意しましょう。
また新商品などの営利目的のものは受け付けてもらえない場合があります。事前に幹事社に問い合わせ確認してください。
2 記者クラブの幹事社に連絡して投げ込みの許可を得る
投げ込み先が決まったら、記者クラブに連絡をします。
「幹事社」に投げ込みしたい旨を伝え、手順を確認します。「幹事社」とは、記者クラブで企業側とクラブ側との調整を担当する事務担当者です。
幹事社には下記の内容を確認しておきましょう。
- 投げ込み方法
- プレスリリースの必要部数
- 投げ込みが可能な日時
記者クラブはルールが異なる場合があります。郵送可能な場合や、挨拶禁止の記者クラブもあります。各ルールに従い、投げ込みを行いましょう。
3 記者クラブへプレスリリースを投げ込みに行く
確認した方法で、記者クラブに投げ込みに向かいます。
記者クラブの事務所には、各メディア専用の棚や箱が並んでいます。幹事社や受付の職員に許可を得てから、プレスリリースを棚に入れます。
投げ込み後は幹事社にお礼を伝えて退出するとスマートです。お礼がてら挨拶や、名刺交換ができる場合もあります。貴重な機会を逃すことないようコミュニケーションを図っておきましょう。
プレスリリースの投げ込み方法は、下記の記事も参考になります。あわせてご確認ください。
「プレスリリースの投げ込みとは?記者クラブへ配布する方法と注意点」の記事を見る
記者クラブへ投げ込みする際のポイント・注意点
記者クラブへ投げ込みをする際、確認しておきたい重要な注意点があります。また各記者クラブでは独自のルールを設けている場合があります。それぞれ説明していきます。
所属機関に関連する社会性のある内容か
プレスリリースの投げ込みを行う前に、どの所属機関に関連する内容なのか確認しましょう。プレスリリースの内容と合致する記者クラブに届けなければ、情報を取り上げてもらうことは難しくなります。
また記者クラブは、社会性や公共性の高い情報を届けるための組織です。
プレスリリースの内容が社会の求める適切な内容であるか、今一度確認しておきましょう。
許可なく投げ込みNGなど、記者クラブのルールを確認
記者クラブは、独自の禁止事項を設けている場合があります。例えば「挨拶禁止」や「私語禁止」などの決まりを用いている組織もあります。
規則を破ると、受け入れを拒否されてしまう可能性もあります。事前にルールを確認し、規程に則って投げ込みを行うようにしましょう。
プレスリリースは未発表の内容か
記者クラブに投げ込みをするプレスリリースは、投げ込み前に発表や配信をすることはご法度です。メディア各社に一斉・平等に発表するというルールがあります。覚えておきましょう。
広告や宣伝行為はNG
記者クラブに投げ込むプレスリリースは、広告的な内容のものや社会的に必要な情報でないものは避けましょう。
記者クラブは広告・宣伝のための組織ではなく、世の中に必要な情報を届けるために存在しています。
広告的なプレスリリースは投げ込みを受け付けてもらえないこともあります。社会性や公共性のある情報であるか、客観的な視点で判断しましょう。
プレスリリースと広告の違いについて、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご参照ください。
「プレスリリースとは?配信の効果、メディア掲載のポイントを解説」の記事を見る
投げ込み時にあると役立つもの
投げ込みの際には、下記のものがあると役立ちます。
- プレスリリースの補足資料
- プレスリリースの内容に関連する写真や会社案内
- 広報担当者の名刺
各記者クラブによりますが、これらを手渡しできることもあります。万全に準備しておきましょう。
記者クラブの活用方法「レク付き配布」「記者会見」
記者クラブの活用方法は、投げ込みの他に「レク付き配布」「記者会見」があります。
それぞれ説明していきます。
「レク付き配布」とは
レク付き配布とは、レクチャー付き資料配布の略で、記者クラブへの投げ込みの一つです。
ニュースリリースなどの発表資料に説明を加えながらリリース配布することで、記者とコミュニケーションをとりながら商品やサービスの説明が可能になります。
レク付き配布を行いたい場合、幹事社の了承が必要です。事前連絡をした際に許可を得ておきましょう。
「記者会見」とは
記者会見とは、企業のトップが記者クラブに出向いて直接発表する場のことです。記者会見を行う者は原則役員以上というルールがあります。
記者会見のメリットは、直接的な説明と質疑応答を行うことにより、正確な情報を伝えることができる点です。
記者クラブでは主に兜倶楽部、東商記者クラブ、日銀金融記者クラブなどで記者会見が行われています。
また企業が記者クラブを通して記者会見を行う場合は、幹事社の承諾が必要になります。
記者クラブと関係を築き自社のPRを行おう
記者クラブへのアプローチは、一度で複数のメディアに情報伝達を行うことができるため効率的な方法です。
ただし記者クラブの多くは、上場企業や大企業を取材対象としている場合が多く、自社事業に関連する記者クラブがうまく該当しないこともあります。
その際は「プレスリリース配信サービス」の利用が有効です。今まで知り得なかったメディアに広くプレスリリースを配布することができます。
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