
8月8日、8月10日。
カレンダーの上では数日しか違わないが、この二つの日には、人の気持ちや企業の発信を動かす「意味」がある。
令和8年8月8日は、「8」が重なる特別な日。「八」は末広がりで縁起がよいとされることから、結婚や入籍など、人生の節目の日としても意識される。
そして8月10日は、「ハット」「ハト」「ハート」など、語呂合わせからさまざまな記念日が生まれる日。企業が業種を超えて一つの企画に集まる動きも見られた。
どちらにも共通しているのは、日付そのものが、行動したり、発信したりする理由になっていることだ。
広報では、商品発売やイベント開催など「出来事」を起点にニュースをつくることが多い。
しかし、ときにはカレンダーの中に、ニュースのきっかけがすでに用意されている。
記念日や語呂合わせ、縁起のよい日は、広報にどんな力を与えてくれるのだろうか。
「令和8年8月8日」が人を動かす
2026年8月8日は、「令和8年8月8日」。
「8」が3つ並ぶ、少し特別な日だった。
漢数字の「八」は下に向かって広がる形から「末広がり」とされ、古くから繁栄や発展を連想させる縁起のよい数字として親しまれてきた。
そのため、結婚や入籍など、人生の節目の日として8月8日を選ぶ人もいる。
ここで興味深いのは、日付そのものが何か新しい価値を生み出したわけではないということだ。
それでも、
- 「せっかくなら、この日にしよう」
- 「覚えやすい日がいい」
- 「縁起のよい日に始めたい」
という気持ちが、人の行動を後押しする。
実は8月8日は、記念日そのものが非常に多い日でもある。2026年8月現在、日本記念日協会のサイトで8月8日の登録記念日を確認すると88件ある。
そして、日付の意味を活用しているのは企業だけではない。
東京都は2026年、末広がりで縁起がよいとされる「八」と令和8年を掛け合わせた結婚応援キャンペーン「TOKYO八結び」を展開。8が3つ重なる令和8年8月8日を「はちみつ結びの日」とし、結婚を応援するイベントやキャンペーンを実施した。
令和8年8月8日に結婚したカップルを対象に、東京ポイント8,888ポイントをプレゼントする企画も行われた。
ここでも、「8」という数字と日付そのものが、施策を伝えるための分かりやすいストーリーになっている。
日付は、企業だけでなく、自治体の施策にも「なぜ今なのか」を与えることができる。
これは企業の発信にも通じる。
通常であれば発信のきっかけを見つけにくい商品やサービスでも、「記念日」「節目」「語呂のよい日」と組み合わせることで、今伝える理由が生まれる。
つまり日付には、情報に「なぜ今なのか」を与える力がある。
8月10日に見る、記念日広報 ―「ハット」「ハート」「ハト」が同じ日に集まる
そして、日付の読み方が発信の切り口を生むのは、8月8日だけではない。その二日後の8月10日も、記念日広報を考えるうえで興味深い日だ。
「8(ハ)」「10(ト)」という音を起点に、「ハット」「ハート」「ハト」など、同じ日付にさまざまな意味が生まれる。
たとえば、イエローハットにとっては「ハットの日」。健康ハートの日実行委員会にとっては「健康ハートの日」。ハトのマークの引越センターにとっては「ハトの日」と、それぞれまったく異なる事業や活動を行う企業・団体が、8月10日という一つの日付と接点を持っている。イエローハットの2026年企画でも、こうした「810」の異なる意味を持つ企業・団体が一緒に参加している。
一般社団法人日本記念日協会には、企業や団体などが制定したさまざまな記念日が登録されている。8月10日はもともと登録数の多い日の一つで、語呂合わせをはじめ、商品名、企業名、出来事など、多様な理由から記念日が生まれている。なお、登録件数は新規登録や登録終了などによって変動する。
同じ8月10日でも、
- 「ハット」と読めば帽子や社名につながり、
- 「ハート」と読めば健康や気持ちにつながり、
- 「ハト」と読めば企業名や商品につながる。
つまり、日付には一つの意味しかないわけではない。
同じ数字をどう読み、どのように自社との接点を見つけるかによって、発信の切り口を増やすことができる。
実際、8月10日の「鳩の日」には、鳩サブレーで知られる豊島屋も限定商品を展開している。2026年は、鳩サブレー1枚が入るシリコンポーチ「はとっこ」を販売し、店頭だけでなくオンラインでも24時間限定で受注した。創業日、商品そのものの「鳩」、そして8月10日という日付が重なっている点も興味深い。
【関連記事】豊島屋、きょう8月10日「鳩の日」限定 鳩サブレー1枚が入るポーチ「はとっこ」を販売、オンラインは24時間受注
記念日は、「今日は○○の日です」と発信するためだけのものではない。
自社の商品名や社名、事業、歴史と日付との接点を探すことで、普段とは違う角度から情報を届けるきっかけになる。
参考:
記念日は「異業種コラボ」の接着剤になる
さらに面白いのは、記念日が一社だけの発信にとどまらず、企業同士をつなぐきっかけにもなることだ。
2026年の「ボクらは810」には、イエローハットをはじめ、ハトのマークの引越センター、レッドハット、健康ハートの日実行委員会、食品、人材、ウエディング、自治体の観光PRキャラクターなど、11の企業・団体が参加した。
そこにある共通点は、業種ではない。
カー用品、引越し、IT、健康啓発、ウエディング、食品、人材サービス、自治体の観光PRなど、それぞれの事業領域は大きく異なる。
つないでいるのは、「8月10日=810」という日付だ。それぞれが「810」という日付との異なる接点を持っている。
普段であれば一つの広告に並ぶことのない企業や団体でも、「同じ日を持っている」というだけで、一緒に企画をする理由が生まれる。
2026年の企画では、こうした企業・団体から107名が参加し、オリジナルソングを歌う広告企画へと発展した。
イエローハットの特設サイトには、「業種の垣根を超えて、同じ日を祝おう」という考え方も示されている。
これは、記念日広報の大きな特徴の一つだ。
通常、企業同士がコラボレーションするときには、
- 「同じ顧客を持っている」
- 「商品を一緒に使える」
- 「事業領域が近い」
といった理由を探すことが多い。
一方、記念日は、事業とは別の共通項を企業同士につくることができる。
そして、業種が離れているほど、「なぜこの会社とこの会社が一緒に?」という意外性が生まれ、それ自体が話題になる。
記念日は、
- 共通の日付を見つける
- → 企業同士につながりが生まれる
- → 普段は見られない組み合わせが生まれる
- → 企画そのものがニュースになる
という流れをつくる「接着剤」にもなり得る。
参考:
「何を発表するか」だけでなく「いつ発表するか」
広報では、新商品発売や新サービス開始、調査結果の発表など、まず「何を発信するか」を考える。
しかし、同じ情報でも「いつ発信するか」によって、受け取られ方が変わることがある。
たとえば、
- 2月22日に猫に関する商品や調査を発表する
- 6月5日の環境の日に環境施策を紹介する
- 11月11日に「1」や棒状の商品に関連した企画を実施する
など、日付と情報の関係がひと目で伝われば、それ自体がニュースを理解する入口になる。
メディア側にとっても、「○月○日は○○の日」という切り口は、企画を組み立てる一つの材料になる。
日付は、情報そのものをニュースに変えるわけではない。
しかし、その情報を見る理由、話す理由、取り上げる理由を少し増やしてくれる。
記念日を使うなら「日付に乗る」だけで終わらせない
ただし、「今日は○○の日なので投稿しました」だけでは、企業広報としては弱い。
記念日を使うときは、自社との関係を一段掘り下げたい。
たとえば、
- その日に関連する自社データを出す
- 利用者へのアンケート結果を発表する
- 社員や専門家の知見を紹介する
- 過去から現在までの変化を振り返る
- 同じ記念日を持つ企業と協業する
- 記念日に合わせて新しい取り組みを始める
などだ。
「今日は○○の日です」と知らせるだけではなく、「○○の日だからこそ、自社から何を伝えられるか」まで考えることで、記念日が広報企画になる。
カレンダーを「広報ネタ帳」として見る
では、自社でも記念日を広報に活用できないだろうか。
その第一歩として使えるのが、一般社団法人日本記念日協会のサイトだ。
日本記念日協会では、企業、団体、個人などが制定した記念日を認定・登録しており、日付やキーワードから記念日を検索することができる。また、企業などが新たな記念日を申請する登録制度や、創業・発売などの日付を残す「周年記念登録制度」も設けている。
▼一般社団法人 日本記念日協会
広報担当者なら、自社に関係する記念日を探してみるだけでも、発信のヒントが見つかるかもしれない。
たとえば、
- 商品カテゴリーに関係する記念日はないか
- 社名や商品名と同じ語呂の記念日はないか
- 創業日や発売日に意味を持たせられないか
- 自社が持つデータを発表できる日はないか
- 同じ記念日を持つ企業と一緒に何かできないか
といった視点だ。
そして記念日を探すときは、自社と完全に一致するものだけを見る必要もない。言葉の響き、数字、商品名、創業日など、少し視点をずらすことで、思いがけない企業やテーマとの接点が見つかることもある。
カレンダーには、記念日、語呂合わせ、季節の節目、祝日、周年、創業日、発売日。さまざまな「今、発信する理由」が並んでいる。
重要なのは、記念日当日になって「今日は何の日だろう」と調べることではない。
数カ月先のカレンダーを眺めながら、
- 「この日に自社が出せる情報はないか」
- 「この日に合わせて調査をできないか」
- 「同じ日を持つ企業はいないか」
と考えてみる。
日付は、情報そのものをニュースに変えるわけではない。しかし、その情報を「なぜ今伝えるのか」をつくってくれる。
カレンダーを予定表としてだけではなく、「広報ネタ帳」として眺めてみる。
そこから、まだ気づいていないニュースの種が見つかるかもしれない。
出典:
- 東京都「令和八年 結婚おうえんキャンペーン「TOKYO 八結び」第7回」(報道発表資料2026年7月3日)
- 東京都結婚支援ポータルサイト TOKYOふたりSTORY「TOKYO八結びキャンペーン」特設サイト
- イエローハット「ボクらは810」特設サイト
- 一般社団法人日本記念日協会掲載記事「1年でいちばん認定記念日の多い日は8月8日です。2位は10月10日。3位は11月11日です。その共通点は?」(2025年8月1日公開)
- 同サイト掲載記事「今、8月8日は「一年でいちばん記念日登録が多い日」です。「きのこの山の日2021」「日本きくらげの日」「がま口の日」「プチプチの日」など、その件数は53件。そしてその理由は・・・。」(2021年8月5日公開)
