仕事内容が近いイメージのある広報とマーケティングですが、その役割や目的には大きな違いがあります。業務の詳細を見ながらそれぞれの違いを理解しましょう。広報とマーケティングの戦略的連携についても解説していきます。
目次
広報とマーケティングの本質的な違い
広報とマーケティングは混同されることの多い職務ですが、業務の目的や狙いに違いがあります。
まずはそれぞれの定義を挙げながら、広報とマーケティングの違いについて解説していきます。
広報とは
日本広報学会によると、広報の定義は「組織や個人が、目的達成や課題解決のため、多様なステークホルダーと社会的な関係を構築・維持する経営機能(一部略)」と言われています。
つまり広報は、プレスリリースなどを通して情報発信をしながら、生活者、メディア、株主、取引先などのステークホルダーとコミュニケーションを行うこと、またそれぞれと良好な関係を築くこと、という役割があると言えます。
広報は、英語で「Public Relations(パブリックリレーションズ)」です。省略して「PR」とも呼ばれます。
広報・PRは、自社の利害関係者と良い関係を作り、企業の信頼性アップや認知度拡大など、企業価値を高めるための活動を行っていきます。詳しくは下章「広報とマーケティングの役割・目的」でも説明していきます。
広報について、以下の記事も参考になります。あわせてご確認ください。
「広報とは?定義や役割、仕事内容を解説」の記事を見る
パブリックリレーションズについて、以下の記事がお役立ていただけます。ご参照ください。
「パブリックリレーションズとは?広報担当者が知っておくべき意味や定義を解説」の記事を見る
マーケティングとは
マーケティングは、自社商品やサービスの販売向上のため、戦略的に売れる仕組みを作り、実施することです。市場の規模やニーズを探り、調査や分析を行いながら、商品やサービスの企画開発から販売まで行います。
マーケティングは広告や販促活動と間違われることもありますが、「商品やサービスが売れるようにする一連のプロセス」がマーケティングです。広告や販促活動はマーケティング活動の一部にあたり、さらに分析や評価といった効果測定も行う点が、マーケティング活動の特徴として挙げられます。
広報とマーケティングの仕事内容を比較
広報とマーケティングの仕事内容を比較しながら、それぞれの違いを理解しましょう。広報とマーケティングの具体的な仕事内容を解説します。
広報の仕事内容
広報の仕事内容には、以下のものがあります。
- プレスリリースの作成・配信
- メディア対応、取材時の対応、情報提供
- SNSなどからの自社情報の発信
- 社内情報の共有、社内報などの作成・配信
広報の仕事は「社内広報」と「社外広報」に分類され、「社内情報の共有」が社内広報、その他の業務は社外広報になります。
社内広報では、企業理念やビジョン、ミッションなどの社内浸透を目的に、社内コミュニケーションの活性化を促進するための活動を行います。
社外広報では、メイン業務のプレスリリースの作成・配信を中心に、自社情報の発信業務とメディアへの対応を行います。
メディア対応は、メディアとの良好な関係を構築する「メディアリレーションズ」を基本とし、自社情報を取り上げてもらえるよう、メディアとコミュニケーションをとりながら活動を行っていきます。
また生活者などステークホルダーに対して、自社メディアから自社情報の発信を行います。
プレスリリースとは
プレスリリースとは、新商品の発売や新サービス、新規事業の開始、経営・人事情報などの新情報を、ニュース素材となるようまとめた文書や資料のことです。
自社情報を新聞やテレビ、雑誌、ラジオ、Webメディアなどにニュースとして取り上げてもらうことにより、自社商品やサービスの認知拡大を図ります。
客観的な視点を持つメディアから報道される情報は、生活者の信頼や共感を得る効果があります。広報は普段よりメディアと良好な関係を築き、プレスリリースを記事化してもらえるよう活動していきます。
プレスリリースのより詳しい説明は、以下の記事にまとめてあります。ぜひご一読ください。
「 プレスリリースとは?配信の効果、メディア掲載のポイントを解説」の記事を見る
広報の仕事内容について、以下の記事内でより詳しく説明しています。あわせてご確認ください。
「広報の仕事とは?必要なスキルを解説」の記事を見る
マーケティングの仕事内容
マーケティングの仕事内容には、以下のものがあります。
- 市場規模や成長性、顧客ニーズや競合サービスの分析調査
- 商品、サービスのコンセプト立案
- 価格、プロモーション、流通経路の選定
- 広告・販売促進活動の実施
- 効果測定 など
マーケティングは自社の商品やサービスの販促のため、分析や企画立案、販売促進を行います。
どのターゲットにどのように届ければ、ターゲットのニーズを満たせるのかを検討し、企画を立案。実施後は効果測定を行い、分析と検証を行う「PDCAサイクル」を繰り返し戦略の見直しと改善を行いながら、最終的に企業や組織の利益向上につながる活動を行っていきます。
広報とマーケティングの役割・目的
広報とマーケティングの役割や目的を明確にし、それぞれの違いを説明していきます。
広報の役割と目的
広報の主な役割は、自社とステークホルダーとの関係作りです。その背景には、自社の信頼度向上や認知度拡大という目的があります。
ステークホルダーとは、消費者・生活者、取引先企業、メディア、株主、自治体や公官庁、消費者団体、NGO・NPOなど、自社と利害関係のある人々です。広報は情報発信を通してこれらステークホルダーとの関係を築き、企業価値の向上を目指す活動を行っていきます。
関係構築活動の中でも、特に報道機関などのメディアとの関係づくりは広報の重要なミッションです。
広報担当者は日頃よりメディアと良好な関係を築く「メディアリレーションズ」を行い、自社情報をメディアに報道してもらえるよう働きかけていきます。
メディアと良好な関係を築く「メディアリレーションズ」について、以下の記事が参考になります。ぜひご参照ください。
「 メディアリレーションズで大切なこととは?メディアとの関係構築に必要なポイント7選」の記事を見る
マーケティングの役割と目的
マーケティングの目的は、自社商品・サービスの販売促進を行い、企業の売上や利益を向上させることです。
そのため、市場を理解し、顧客のニーズに応えるための調査や分析を行い、価値を提供できるよう戦略を考えます。
マーケティングは商品・サービスの一時的な販売ではなく、長期的に売れ続けることを目的としています。マーケティングでも販促のためSNS発信を行うことがありますが、広報と大きく違う点は、マーケティングは自社の利益向上を最終目的としていること、つまり「売る、ではなく売れる仕組みづくり」を役割として担っている点にあると言えます。
リレーションシップ・マーケティングとは
「リレーションシップ・マーケティング」という言葉があります。
「関係性マーケティング(リレーションシップ・マーケティング)」とは、顧客との継続的かつ長期的な取引関係の構築と維持を目的として展開されるマーケティングのことです。
具体的には、新規獲得や一度の売上よりも、見込みのある顧客と継続的で長期的な関係を築くことで利益を出すという戦略です。マーケティングの分野にも、広報のような関係性に着目した手法としてこの戦略を取り入れている企業も増えてきています。
広報とマーケティングの戦略的連携を
新商品・新サービスをテーマにした広報活動においては、広報とマーケティングで連携して行われることが多々あります。
なぜなら社会との関係構築を目的とする広報の視点や、メディアを通して信頼性の高い情報を生活者・消費者に届けるという活動手法が、マーケティング全体戦略の中で活かすことができるからです。
例えば、新商品の発売日というタイミングに合わせて、プレスリリースを配信し、記者発表やプレスイベントなどを行い、その結果メディアに記事として取り上げてもらうことができれば、広告・宣伝とは違ったルートで生活者・消費者に情報を届けることができます。
このように、マーケティングの一環としてプレスリリース配信をはじめとする広報活動が位置付けられ、連携して実施されています。
広報とマーケティングの連携方法
広報とマーケティングにおける情報の共有と連携の方法として、次のような例が挙げられます。
- ターゲットの共有と連携
- アクティビティーの共有と連携
- タイミングの共有と連携
- フィードバックの共有と連携
マーケティングサイドから想定ターゲットが示されたら、広報サイドでは、そのターゲットがよく接触している媒体や番組を調べ、アプローチ先のメディアリストを選定します。
次に、アクティビティー(活動内容)を検討します。プレスリリース、記者発表会、プレスへのサンプル配布、工場見学ツアーなど、予算と効果を考慮しながら企画します。
タイミングの連携も重要です。発表前の広告(ティーザー広告)、正式発表のタイミング、各種イベントのタイミングなど。タイミングを間違うと効果が半減することもあるので慎重に。
最後に、実施後の効果測定結果をフィードバックし、広報だけでなく、マーケティング全体の次回戦略につなげていきます。
このように広報とマーケティングが連携することで、相乗効果と好循環が生まれてきます。
共同通信PRワイヤー「国内配信サービス」をご利用いただいている企業や自治体には、広報とマーケティングが連携した成功例が多数あります。今回は広報とマーケティングにおいて連携や兼任を行い、成功を収めた3社を、当社「導入事例」よりご紹介します。
広報とマーケティングの連携例:新商品発売プレスリリース
■モットーは「一点突破の商品」。プレスリリースを柱に、地方からオリジナル家電をバズらせる【ライソン様】
ライソン株式会社は、「人の思いと一緒に届ける」プレスリリースを配信。「焼きペヤングメーカー」「たべっ子どうぶつカステラメーカー」など、他にはないユニークな商品を次々とヒットさせています。
「モットーは「一点突破の商品」。プレスリリースを柱に、地方からオリジナル家電をバズらせる【ライソン様】」のインタビュー記事を見る
■SNS発信にリリース配信をプラス。メディア取材の影響力を実感【山野楽器様】
山野楽器では、ご当地ギター「笹かまギター」の発売をプレスリリースで配信。リリースの配信直後から取材希望の問い合わせが殺到し、テレビ局や全国紙の新聞社にも取り上げられ、大変な反響を呼びました。
「SNS発信にリリース配信をプラス。メディア取材の影響力を実感【山野楽器様】」のインタビュー記事を見る
広報とマーケティングの連携例:イベント企画
■ラーメン漫画とのコラボなどユニークな施策を発信、記事化を通じ県外での知名度も向上中【南陽市様】
山形県南陽市のみらい戦略課広報広聴係では、人気ラーメン漫画の「ラーメン大好き小泉さん」とコラボレーションしたイベントを企画し、プレスリリースを配信。市外からの参加者は半数以上と、大成功を収めました。
「ラーメン漫画とのコラボなどユニークな施策を発信、記事化を通じ県外での知名度も向上中【南陽市様】」のインタビュー記事を見る
プレスリリースの配信を広報・マーケティングで協力して行おう
広報とマーケティングで連携することにより、市場ニーズやターゲットの把握、認知拡大、効果測定など、得られるメリットが多々あります。また広報とマーケティングの得意分野を活かすことにより、商品・サービスの販売促進、自社の認知度・信頼性向上やブランディングの拡大にもつながります。
両者の目的や業務を理解しながら、積極的に情報共有やサポートを行い、自社に成果をもたらす連携プレーを図っていきましょう。
マーケティングとの連携をスムーズにスタートさせるためにも、広報担当はプレスリリースの書き方を熟知しておくことをおすすめします。
共同通信PRワイヤーでは、広報初心者の方向けに無料セミナーを開催しています。プレスリリース作成の基本的な書き方やネタ作りのコツなど、分かりやすく丁寧にお伝えします。日々の広報活動にぜひお役立てください。
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また「新製品発表」「新サービス発表」「イベント」「キャンペーン開催」などのプレスリリースのテンプレートを、以下の記事にまとめています。ぜひご利用ください。
【解説付き】プレスリリーステンプレート集