適時開示とは、有価証券取引所規則に基づく、重要な企業情報の開示制度です。適時開示すべき内容は、有価証券上場規程・同施行規則などにより定められています。
任意開示や法定開示との違いも含め、適時開示に必要な情報を詳しく解説します。
目次
適時開示・法定開示・任意開示の概要
まずは基本となる「適時開示」「法定開示」「任意開示」の内容について、それぞれ詳しく説明していきます。
適時開示とは
適時開示とは、株式市場に上場している企業に義務付けられている情報開示制度です。
証券取引所の規則に基づいた「重要事実」と定義されたことが発生し次第、速やかに開示しなければなりません。その性質から「タイムリー・ディスクロージャー」とも呼ばれています。
適時開示は、投資家などに向け、投資の判断材料を提供する目的で行われます。情報の開示方法は、TDnet(ティーディーネット:Timely Disclosurenetwork)を通じて行います。
法定開示とは
法定開示とは、会社法や金融商品取引法などに基づいた情報開示制度です。
投資家保護および株主などの権利行使保護を目的に行う発信で、財務・企業情報等の開示を行います。
法定開示はディスクロージャーの中で最も基盤となる活動で、開示方法は、EDINET(エディネット:Electronic Disclosure for Investors’ NETwork)などを通じて開示されます。
法定開示はあくまで必要最低限の情報開示となり、タイムリーとは言えない内容とされています。
任意開示とは
任意開示(ボランタリー・ディスクロージャー)とは、企業が自発的に実施する情報提供のことです。
ステークホルダー(利害関係者)に対し、事業活動の状況やPRなどを行います。
任意開示は法的な義務付けはなく、自社独自の方針・戦略に基づくものであり、発信情報の工夫次第で他社との差別化を図ることができるものとされています。
開示方法は、TDnetに「PR情報」として掲載するほか、プレスリリース配信、自社ホームページ内のIRサイトに掲載する方法が一般的です。法令に定められてはいませんが、すべての投資家に公平に提供する必要があります。
適時開示するべき内容
適時開示する内容は、以下の3つの区分に分類されます。それぞれ説明していきます。
※適時開示の具体的な項目の詳細は、東証のホームページや適時開示ガイドブックに記載されています。あわせてご確認ください。
決定事実
決定事実とは、企業の業務遂行を決定する機関が意思決定した事実のことです。
項目としては「資本金の額の減少」「解散や合併」「業務上の提携又は業務上の提携の解消」「新株発行」「株式分割」「剰余金の配当」などが挙げられます。
発生事実
発生事実とは、企業の意思とは関係なく発生した事案のことです。
例えば「主要株主の異動」「訴訟の提起又は判決等」「取引先との取引停止」「株主総会の招集請求」などが挙げられます。
決算情報
決算情報は、企業の決算に関するものです。項目としては「決算短信」「四半期決算短信」「業績予想」「配当予想の開示・修正」などが挙げられます。
決定事実 | 資本金の額の減少 解散や合併 業務上の提携又は業務上の提携の解消 新株発行 株式分割 剰余金の配当など |
発生事実 | 主要株主の異動 訴訟の提起又は判決等 取引先との取引停止 株主総会の招集請求など |
決算事実 | 決算短信 四半期決算短信 業績予想 配当予想の開示・修正など |
これら適時開示情報を、TDnetにて行います。
適時開示は投資者保護のため、法定開示の不十分さを補完するという意味も持ち合わせています。
法定開示の内容
法定開示の内容は、金融商品取引法に基づく開示書類と定められています。
例えば「有価証券報告書」「四半期報告書」「半期報告書」「臨時報告書」「公開買付届出書」などが挙げられます。
これらの法定開示情報は、EDINETを通じて開示することが定められています。
プレスリリースで任意開示する内容
任意開示に該当する情報で、プレスリリースにて情報開示する内容には以下のものがあります。
- CSR報告書
- 中期経営計画
- 新規事業
- R&Dの進捗情報
- アニュアルレポート
- IR活動(※)など
これらはステークホルダーやすべての投資家に公平に提供することが求められます。
そのためプレスリリース配信や自社サイトのIR情報、場合によってはTDnetに「PR情報」としての配信が望ましい情報となります。
(※)インベスターリレーションズ(IR)とは
IRとは「Investor Relations(インベスター・リレーションズ」)の略です。
株主・投資家向けに、投資判断に必要な情報を開示する広報活動のことで、例えば「財務状況」「事業の計画」「経営戦略」などの情報を伝えます。また社会や顧客に、経営方針や事業の成果、企業の展望や社会貢献活動などを説明し、株式投資の判断材料を適宜提供していく活動も行っています。
独自性のある任意開示を
「任意開示は他社との差別化を図り、優位性を発揮できる情報」とお伝えしましたが、特にIR活動において巧拙が問われます。
IR活動のポリシーを定め、多くの投資家から求められる情報、例えば中期経営計画や新規事業情報、R&Dの進捗情報などを積極的に開示していくと、投資家との良好な関係が構築できる期待が持てます。
またリスク情報の開示も必要です。
リスク情報には、収益の低下、株価の変動、労働ストライキ、リコール、ゴシップ、主要工場の事故や操業停止、情報の流出などが挙げられます。
企業にとってリスク情報を開示することは、時に株価の形成に影響が出ることも考えられます。しかしリスク情報を前向きに開示することは、投資家にとってのリスク軽減となり、企業との信頼関係を作り上げることになります。結果として株価の安定や企業側の資本コストを低減させることにつながります。
企業のリスクの際の広報活動やプレスリリース配信について、以下の記事がお役立ていただけます。ご参照ください。
「危機管理広報で大切なこととは?トラブル対応のために備えるポイント」の記事を見る
適時開示のタイミング
適時開示のタイミングは「速やかに」というルールがあります。
「速やかに」とは、当該事実の決定・発生した日の当日中の開示を指しています。
一部では株式市場で取引が終了する平日15時以降に発表するケースも見受けられますが、これは翌日の株式市場において、投資家等が判断材料となるようにという考えからです。
いずれにしろ開示が遅れると、不適正な開示として東証から罰則措置を受けることもあります。時間厳守で開示を行いましょう。
任意開示のタイミング
任意開示の配信タイミングは特に決まりはありませんが、一般的な常識として、ビジネスタイムに配信することをおすすめします。
具体的には「平日の10時~15時台」です。これはプレスリリースの配信に最適なタイミングでもあります。多くの企業が活動している平日のビジネスアワーにあわせ、配信するようにしましょう。
ただし、事件や事故、製品回収など緊急性の高いプレスリリースの場合は例外です。可能な限りタイムリーに配信する必要があるので注意しましょう。
プレスリリースの配信タイミングについて、以下の記事にまとめてあります。あわせてご参照ください。
「 プレスリリースの配信タイミングはいつ?最適な曜日と時間を決めて効果的に配信しよう」の記事を見る
情報開示にはプレスリリースの使用もある
情報開示方法はEDINET・TDnetでの「PR情報」として開示するほかに、プレスリリースでも配信した方が良い場合もあります。
また適時開示や法定開示の場合でも、内容によってはプレスリリース配信も併用した方が望ましいこともあります。
具体的には、株主・投資家だけでなく、広くメディアを通して生活者や消費者にも情報を届けた方が良いようなケースです。例えば、適時開示情報の中の合併や提携、製品回収などのリスク情報、訴訟判決などです。
プレスリリースすべき案件か否か、広報(PR)とIRは連携して方針を決め、対応していきましょう。
メディア向けに配信するプレスリリースには、一般的な書き方のルールがあります。プレスリリースを書く際の基本について説明していきます。
プレスリリースとは
「プレスリリース」とは、新商品の発売や新サービス、新規事業の開始などの企業情報を伝える公式文書です。ニュース素材としてメディア(報道機関)が利用しやすいよう、文書や資料としてまとめたもので、広報の情報発信活動における基本的な手段の一つです。
プレスリリースについては以下の記事により詳しく解説しています。ご参照ください。
「プレスリリースとは?配信の効果、メディア掲載のポイントを解説」の記事を見る
プレスリリースとニュースリリースとの違い
プレスリリースとニュースリリースはほとんど同じ意味です。一般的に、どちらも企業や団体などの最新情報を発表・公開するための公式文書という意味で使われています。
ただし最近では、メディアに対して発信するものを「プレスリリース」、メディアを介さず生活者に直接発信するものを「ニュースリリース」と使い分ける傾向もあります。どちらの意味で使っても間違いではありません。
ニュースリリースについてより詳しく知りたい方は、以下の記事が参考になります。あわせてご覧ください。
「プレスリリースとニュースリリースの違いとは?似た言葉との違いを解説」の記事を見る
プレスリリースの書き方
プレスリリースには、基本となる書き方があります。具体的には以下の5つです。この基本構成を守って作成すると、誰もが読みやすいプレスリリースが完成します。
■プレスリリースの基本構成
- 発信日・発信者
- タイトル・見出し
- リード文
- 本文
- 問い合わせ先
上記に加え、「タイトルは30文字前後にまとめる」「本文やリード文は結論を先に書く」「画像や図、グラフ、空白などを活用する」「専門用語や余分な形容詞は極力避ける」「具体的な数値や根拠を盛り込む」などのポイントを守って作成すると、さらに読みやすいプレスリリースとなります。誰もが読みやすいプレスリリースの作成を心掛けましょう。
プレスリリース作成のポイントについて、以下の記事が参考になります。ご参照ください。
「 プレスリリースの構成とは?基本構成と注意するポイントも合わせて解説!」の記事を見る
プレスリリースの書き方や取り上げられるためのコツについては、以下の記事が参考になります。基本構成も詳しく解説していますので、ご参照ください。
「プレスリリースの書き方11のポイント!基本の5構成と記者に取り上げられるコツ」の記事を見る
IRとPRの連携を
広報(PR)とIRの、2つの機能を持っている企業では、両者の連携を行いましょう。
例えば、広報が日々行っているメディアとのコミュニケーション活動から得た情報をIRにも共有したり、IRが投資家から得た要望や情報を広報に共有することで、企業の新たな課題や展望が見えることもあります。
企業のステークホルダー(利害関係者)には、投資家や株主だけではなく、メディア関係者も含まれます。PRとIRのそれぞれの得意分野が連携することで、企業の全体戦略と一貫性のある情報開示が可能になります。
広報(PR)とIRの連携で適切なプレスリリース配信を
適時開示情報の中でも、株主・投資家だけでなく、消費者・生活者や取引先などにも知らせた方が望ましいと思われる情報は、プレスリリースを使って配信しましょう。メディアを通して広く情報を伝えることが可能になります。
どのような情報をプレスリリース配信するかについては、広報(PR)とIRで連携して方針を決め対応していきましょう。
情報を正しく確実に配信するために、事前にプレスリリースの書き方を覚えておくことをおすすめします。
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