また、英文リリースの特徴として、欧米のジャーナリズムの取材体制や習慣、
さらには欧米の伝統や文化が反映していると点などが挙げられます。
この章では、英文リリースを作成する際に知っておきたい、
欧米のジャーナリズムや英文記事の豆知識について紹介します。
情報ソースの明示 ~オンレコとオフレコ~
米国の取材には、次の通り「ソースについて4つの基本原則」があります。
- On the Record
- 情報ソースが個人の発言の場合、その所属組織・肩書・氏名が特定できる。
- On Background
- 個人名は特定できないが、例えば「政府関係者によると・・・」のような表現でコメントの背景を示す。
場合によっては、“on condition of anonymity”(匿名であることを前提に)や “who declined to be identified”(身元を特定されるのを拒否した)という文言の補足つきで、背景が記載される。 - On Deep Background
- 発言者の特定や発言そのものを記事にすることはできないが、地の分に記載される背景説明などに盛り込む。
- Off the Record
- いわゆる「オフレコ」。米国の政府取材などでは、記者団がオフレコに同意した場合、記者全員のICレコーダーがオフにならないと会見が始まらないというように、情報ソースを明示できない取材方法。
以上は、一般的な英文記事の取材現場での原則ですが、企業・団体が自ら発信するプレスリリースにおいては、当然ながらその情報の根拠を示す必要があり、1.On the Recordの原則にそって記事を書ける文書として作成することが重要です。
また、英文リリースにおいては発表に伴う数値データや統計、これまでの沿革など背景説明に必要な情報があるとよりよいでしょう。
クオート文化 ~好まれるのは “おいしいコメント” ~
先に、英文記事の情報ソースについての原則を紹介しましたが、それに関連して英文記事では “Quote(引用)” が多くみられるのも特徴のひとつといえます。
和文リリースでは、ほとんどの場合、企業名で発信するリリースには「組織としての取り組み」に関する記述はあるものの、組織内の個人の発言を大きく記載することはありません。
しかし、客観的なトーンで書かれる英文リリースにおいては、読み手を納得させる具体的な材料として、CEOやCOOに相当する人物の見解がコメントとして盛り込まれることが多くあります。
そして、そのコメントがそのまま英文記事の見出しや本文にも引用されています。
こうした個人の発言が重用されるのは、「個の個性」を重視する欧米の文化に由来するものと考えられます。