広報担当者にとってマスメディアは、重要なコミュニケーション対象です。日常のPR活動において、マスメディア関係者と連絡を取り合うことも多くなるでしょう。
本記事では、マスメディアの本来の意味から4大マスメディア・Webメディアの解説、さらにマスメディアの役割や影響まで詳しく解説していきます。
目次
マスメディアとは?
マスメディアは「不特定多数に対し、多様な情報を伝達する手段・媒体」のことです。
語源から見てみましょう。「マスメディア」は英語で「mass media」と書きます。「mass」は大衆・大勢・集団という意味、「media」は媒体。直訳すると大衆の媒体となります。
一般的に認知されているマスメディアには、新聞・テレビ・雑誌・ラジオがあります。
この新聞・テレビ・雑誌・ラジオの4つのマスメディアは「4大マスメディア」と呼ばれています。「4大メディア」や「4マス」、さらに略して「マス」と言われることもあります。覚えておくと役立つでしょう。
メディアとマスメディアの違いは
「メディア」と「マスメディア」は、同じ場面でよく耳にしますが、言葉の使い分けはどうなっているのでしょうか。
まずは「メディア」の意味を押さえておきましょう。
メディア(media)とは、「情報を伝える媒体」や「情報のやり取りをする手段、媒介するもの」のことです。分かりやすい例を挙げると、SDカードやUSB、DVDのことを指します。さらに手紙や書籍、電話、メールなどもメディアに含まれます。
「メディア」と「マスメディア」は、実際には混同して使われることが多い用語です。例えば新聞やテレビを指して「メディア」と言われることも多々あります。
言葉の使い分けとしては、「伝達する相手が不特定多数であれば、マスメディア」、「不特定多数でなければ、メディア」となります。言葉が混在して使用されている傾向はありますが、臨機応変に対応していくようにしましょう。
メディアとマスメディアの違いや言葉の使い分けについては、下記の記事でも解説しています。あわせてご確認ください。
「メディア」と「マスメディア」、「マスコミ」の違いは?似ている言葉の使い方を解説 の記事を見る
4大マスメディアの種類を解説
マスメディアには、覚えておきたい分類として「4大マスメディア」と呼ばれるものがあります。
4大マスメディアには以下のものがあります。
各メディアについて特徴を中心に、詳しく解説していきます。
新聞
新聞の特徴は以下の通りです。
広報と新聞の関わり方は、記者からの取材対応や情報提供、記者発表会の実施などが挙げられます。
■新聞の特徴
- 老若男女問わず社会的信頼度が高い媒体
- 一般紙に分類されるのは「全国紙」「ブロック紙」「地方紙」
- 全国紙とは、読売、朝日、毎日、産経、日経新聞(総称:5大紙)
- 専門紙は、ターゲットが別に分類されている(経済紙、スポーツ紙、業界紙など)
- 日本独自のシステム「戸別新聞配達制度」がある
- 近年では「電子版」も普及、スマートフォンやタブレットでも購読可能
テレビ
テレビの特徴は以下の通りです。
広報との関係では、テレビ局からの取材を受ける、フリーパブリシティを実施する、といったことが挙げられます。テレビはインパクトの強い、訴求力のあるメディアです。
■テレビの特徴
- 速報性が高い
- 映像や音声の利用で視聴者に大きなインパクトを与えることができる
- 放送局の分類は、NHKと民放
- さらに民放は「日本テレビ」「テレビ朝日」「TBSテレビ」「フジテレビジョン」「テレビ東京」「BS放送」などに分類される
- 近年では「TVer(ティーバー)」や「Paravi(パラビ)」などのインターネット視聴ができる民放ポータルサイトが登場し、人気
雑誌
雑誌の特徴は以下の通りです。
広報活動としては、フリーパブリシティやペイドパブリシティ、タイアップなどが挙げられます。雑誌ごとに読者ターゲットが明確なため、対象を絞ったPR展開が可能です。
■雑誌の特徴
- 定期的に発行される刊行物
- 月刊、週刊、季刊などがある
- 分類は多く、文芸・ビジネス誌などの専門雑誌、ファッション・料理・スポーツなどの娯楽雑誌、総合雑誌、教育雑誌、各団体の機関誌など多岐に渡る
- ティーンズ向け、男性向け、主婦向けなど年齢層や男女別でも分類が可能
- 分類が多いため、各誌ごとにターゲットが明確
- 雑誌も電子版があり
ラジオ
ラジオの特徴は以下の通りです。
広報の関わりでは、雑誌と同様、フリーパブリシティやペイドパブリシティ、タイアップなどが挙げられます。ラジオは、テレビほどのインパクトはありませんが、固定層のリスナーを狙ったPRが可能です。
■ラジオの特徴
- テレビと同じく、大衆向けの媒体
- 音声だけで情報を伝えるため、テレビよりは訴求力が低い
- 運転や勉強、料理などの作業と平行しながら聴取する人が多い
- 近年では「radiko(ラジコ)」や「ポッドキャスト」といったインターネット音声サービスが普及し、配信地域に関わらず聴取できるように
4大マスメディアについては、下記の記事からも確認できます。あわせてご参照ください。
「メディア」と「マスメディア」、「マスコミ」の違いは?似ている言葉の使い方を解説 の記事を見る
またこの4大マスメディアは、プレスリリースの主要配信先となります。
プレスリリースについては、下記の記事がお役立ていただけます。プレスリリースの知識を深めたい方はぜひご覧ください。
「プレスリリースの書き方11のポイント!基本の5構成と記者に取り上げられるコツ」の記事を見る
「プレスリリースの配信先メディアを選ぶヒント!媒体の種類や特徴を解説」の記事を見る
Webメディアとマスメディア
広報担当者として、4大マスメディアと同等に重要なステークホルダーとなるのが「Webメディア」です。
Webメディアについても詳しく知っておきましょう。
Webメディアの種類と定義
インターネットを活用して情報を伝える媒体が、インターネットメディアです。さまざまな考え方がありますが、本記事では、インターネットを活用して情報発信や情報の交換をしているサイト全般を「Webメディア」と定義し話を進めていきます。
Webメディアには、以下の種類があります。
■Webメディアの種類
・ニュースサイト
・ポータルサイト
・コーポレートサイト(ホームページ)
・キュレーションサイト
・ソーシャルメディア(Twitter・InstagramなどのSNS、ブログ)など
それぞれのメディアが広報対象となったり、また自社SNSや自社ホームページでは、自らが発信することもあります。覚えておきましょう。
Webメディアはマスメディアに含まれるのか、それとも別か?
Webメディアは「第5のマスメディア」と呼ばれています。
「第5」と言われていることから分かるように、Webメディアは4大マスメディアとは別に分類されていますが、現在の動向を見ていると今後、4大メディアに追加され5大メディアになる可能性も考えられます。
特にここ数年では、4大メディアを超える存在になりつつあります。それは、媒体別広告費の推移を見ても明らかです。
広告大手電通による「日本の広告費」の報告には、「2022年のインターネット広告媒体費は3兆円を超え、マスコミ4媒体の広告費の総計を上回る結果になる」と発表がありました。
Webメディア広告が4大メディアを上回る状況は、2021年から始まり、2年連続を記録。2023年以降もさらに拡大する予想にあります。
Webメディアの存在感はさらに増大しつつあります。
マスメディアが与える影響はどこまで?
マスメディアの影響は、私たちの生活の隅々にまで及びます。今回は以下の3点において、社会に対する影響を見ていきましょう。
それぞれ詳しく解説していきます。
政治面に対する影響
マスメディア報道で知る政治的な事実や活動は、私たちの生活にはなくてはならないものです。私たちは報道により、中央政府や地方自治、政界、官界の動きを知ることができます。最近では新型コロナにおけるマスク着用の推奨やワクチン接種などの報道が記憶に新しくあります。
マスメディアによる報道は、その影響力の大きさから、立法・司法・行政と並んで「第四の権力」と言われることもあります。また世論を代表する存在として、民意を汲み上げ報道することで、政治に影響を与え世論を形成することもあり、大きな影響力が伺えます。
経済面に対する影響
マスメディアの影響力は、経済にも及びます。
例えばテレビや雑誌で取り上げられたスポットが、大人気の観光地になるといった事例や、特定のスイーツがブームになり、流行りのデザートとして行列ができることもあります。
また広報においては、取材など広報活動の結果が実り、商品が売れる事例はもちろん、Webメディアからの影響力も大きく、TwitterやInstagramなどSNSでのつぶやきから、ヒット商品が生まれることもあります。PR活動においては、マスメディアにおける恩恵のひとつ、とも言えます。
また企業側から見ると、これらマスコミの報道状況から、消費者ニーズを把握することにも役立っています。
文化・教養面に対する影響
マスメディアは時に文化を生み出します。
例えばテレビのバラエティ番組を通じて、流行ポーズや流行語が生まれることもあります。派生して大衆文化のひとつになる事例もあるでしょう。また新聞やニュース報道で知る情報が学習意欲を刺激し、教養の土壌作りになることもあります。
企業側からすると、マスコミ報道を見てトレンドを把握することもあります。広報活動では、マスメディア報道により巻き起こったトレンドに乗り、PR活動を行うことも考えられます。マスメディアによる文化の影響は、広報担当者にも多大に関わってきます。
マスメディアの役割と広報との関係
マスメディアには、下記の3つの役割があります。
■マスメディアの役割
- 見張りの機能
- 討論の機能
- 教師の機能
各役割の詳しい説明と、広報・マスメディアの関係性について考えていきます。
マスメディアの役割
マスメディアの役割について、「コミュニケーション学の父」と呼ばれるアメリカの学者ウィルバー・シュラムは次のように言っています。
マスメディアには「見張りの機能」「討論の機能」「教師の機能」の3つの機能が考えられます。
「見張りの機能」とは、警告を発し見張りをすることを意味します。
例えばマスメディアの報道で知った事件などによって、危機感を感じたり、自身の考えるきっかけを与えられることもあるでしょう。政治や社会問題においては、この見張りの機能が汚職への抑止力に繋がっているとも考えられます。
次に「討論の機能」とは、いわゆる世論の形成です。新聞の評論、テレビのコメンテーターの意見などをはじめ、現在では「第5のマスメディア」であるWebメディアでも活発な意見交換を目にすることが増えました。Twitterの投稿がきっかけでテレビに取り上げられ、社会問題として認知されるようになった事象も数多くあります。
最後に「教師の機能」は、社会的規範や知識、価値観などを次世代へ繋ぐ役割です。
これはWebメディアがない時代、4大マスメディアの一つである新聞が、絶大な力を誇っていた時代の考え方ですが、知識や価値観の形成においては、Webメディアにも言えることかもしれません。
他にも多くの学者がマスメディアの役割について語っています。
これらの役割はWebメディアにおいても該当する箇所が多いため、Webメディアを利用する際にも頭の片隅に入れておくと良いでしょう。
広報活動の基本はマスメディアとの関係づくり
生活者や株主、取引先などさまざまなステークホルダーは、企業からの情報を得る際、マスメディアを通じて情報を受け取ることも多くあります。マスメディアがステークホルダーに与える影響は多大であると言っても過言ではありません。
広報担当としてはマスメディアとの良好な関係を作り上げ、維持していくことが非常に重要な任務になってきます。
具体的には、「それぞれのメディアの特性を理解すること」そして「各メディアにあわせた情報提供を行うこと」が大切になってきます。
例えばテレビにおいての情報提供では、写真だけよりは動画がある方が良く、TwitterなどのWebメディアでは、文字だけでは訴求力が低くなってしまうため、画像があった方が良いでしょう。
各マスメディアが取り上げやすいように考えて情報を提供する、という行為もマスメディアとの良好なコミュニケーションの一つです。お互いに良い関係が構築できるよう、努力していきましょう。
広報担当者はマスメディアの変化に注目し、対応を
マスメディアが及ぼす影響は、幅広く絶大です。
広報担当としては、企業の情報や商品の認知を広げるためにも、マスメディアへのアプローチがとても重要なものになってきます。
また新聞や雑誌だけでなく、テレビやラジオもWebメディアを取り入れる時代となり、これからもマスメディアを取り巻く環境は変化し続けていくことが予想されます。
常にマスメディアの動向に注目しながら、お互いに良いコミュニケーションを築いていくことができる、相互に良好な広報活動を心掛けていきましょう。
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