
「自社のプレスリリースが、たくさんのリリースに埋もれてしまう」。BtoB企業の広報担当者であれば、こうした悩みを感じたことがあるのではないでしょうか。ChatGPTやGoogleの「AIによる概要」が企業情報の入口になる中で、この「埋もれる」問題は、新しい意味を持ち始めています。本記事では、海外の大規模調査データとプレスリリースの実例をもとに、BtoB広報がAI時代に取るべき配信戦略を解説します。
目次
BtoB広報が抱える「埋もれる」問題と新たな不利益構造
BtoB広報が構造的に不利な状況
BtoB企業の広報担当者であれば、次のような悩みに心当たりがあるかもしれません。派手なネタが少ない。届けたい相手が業界記者や意思決定者に限られる。それなのに、届けたい相手にリリースが届いていない実感がある。
BtoBの情報は、本来一般消費者にとって親和性のある情報ではありません。ただし、業界記者・専門記者に届けば、意思決定者に届きやすく、成果につながります。この構造は、ニッチな情報をニッチな層に届けることで成立します。
しかし、1日に大量のリリースが流れる拡散型の配信サービスでは、記者の目に触れる前に埋もれてしまいます。ゆえに、肝心な届けたい相手に届くことなく、配信したという事実だけが残ることになります。これが、長年BtoB広報が抱えてきた構造的な課題です。

AI検索時代に生まれた新しいリスク
AI検索の普及により、この問題に新しい意味が加わりました。「記者に届かない」だった問題が、いまでは「AIに認識されない」というリスクも含むようになっています。ChatGPTやGoogleの「AIによる概要」で、「自社について検索しても情報が出てこない」、「古い情報が表示される」。こうした声が増えてきました。
AIの回答に出てこない企業は、コーポレートサイトなど、自社の情報への入口を失います。これにより、商談機会が見えないところで失われ、競合との認知差が時間とともに、業績差という形で広がっていくのです。
ただし、この変化はBtoB広報にとって追い風でもあります。AIに引用される情報源には明確な傾向があり、その傾向はBtoBの強みと響き合うところがあるのです。
関連記事:AI引用される機会は業界によって10倍以上の差があります。詳しくは「AIに引用されるチャンスは業界で10倍違う──広報担当者のためのAI検索コンテンツ戦略」もあわせてご覧ください。
AI検索でBtoB企業はどう扱われているか
BtoBの購買行動にAIが入り込んでいる
近年、BtoBの購買行動における情報収集で、AIの利用が急速に広がっています。Loganixが2026年4月に公表した統合分析によると、BtoB業態のバイヤーでは、約73%が購買リサーチにAIツールを利用していることがわかりました(出典:Loganix「2026 B2B AI Buying Behavior Analysis」 。

商品やサービスを比較するとき、AIに「○○の企業について教えて」「△△の選定基準は」と尋ねる行動が、意思決定者の間で標準的になりつつあります。AIの回答で自社が言及されるかどうかが、商談リストに上がるかどうかを左右し始めているのです。
AIは「公式サイトより第三者メディア」を優先する
ではAIは、企業の情報をどこから取得しているのでしょうか。
AI検索最適化を手がけるxFunnel.aiが2025年に発表した調査では、ChatGPT・Gemini・Perplexityの主要3プラットフォームにおける約25万件の引用データ(4万件のAI回答)を分析しました。その結果、企業の公式サイトやUGCなどを含むすべての情報源の中で、第三者メディアによる報道・記事(アーンドメディア)が最も多く引用されることがわかりました。この傾向は3つのプラットフォームすべてに共通して確認されています(出典:xFunnel.ai「What sources do AI Search Engines cite?」2025年)。

AIは情報の網羅性や公平性、第三者検証の有無を重視するため、複数の選択肢を整理した第三者メディアの記事を優先するのです。
この事実は、BtoB企業にとって追い風になりえます。記者の手で書かれた業界誌の記事、専門紙の解説、地方紙の地域企業紹介。これらは長年BtoB広報が獲得してきたパブリシティそのものであり、AI時代にこそ価値を増している情報資産と言えるでしょう。
なぜ業界誌・専門紙・地方紙の記事こそAIに引用されやすいのか
大規模調査が示す「専門紙の再評価」
AIが選ぶ第三者メディアの中でも、特に評価されているのが業界特化メディアです。5W Public Relations & Everything-PRが2026年5月に発表した「Trade Press AI Index 2026」は、既存の主要6調査(合計6.8億件超のAI引用に相当)を統合分析し、業界特化メディアが知名度の高い一般大手メディアを上回って引用される事実を示しました(出典:5W Public Relations「The Trade Press AI Index 2026」)。

人間にとっての「有名な媒体」と、AIにとっての「引用したい媒体」は、必ずしも一致しないのです。
AIが業界特化メディアを選ぶ理由
AIが業界特化メディアを高く評価する理由は大きく4つあります。①第三者性:独立した媒体による記事は、利害から離れた検証済みの情報として扱われる。②専門性:業界知識を持つ記者が編集する記事は、内容の正確さと文脈の豊かさを備えている。③網羅性:複数の企業や選択肢を比較する視点を持つため、AIが公平な情報源として参照しやすい。④アーカイブの蓄積:長年積み重ねられた記事ストックが、AIにとっての厚いデータ層になる。
地方紙が持つもうひとつの強み
地方紙もBtoB企業にとって見逃せない引用源です。地域に根ざした企業・工場・研究所の情報は、ほかでは得られない固有性を持ち、AIの回答の網羅性を高める材料になります。地方に拠点を持つBtoB企業にとって、地方紙ネットワークへの露出はAI時代の認知形成において大きな意味を持つと言えるでしょう。

BtoB企業の配信設計の考え方:目的に応じた使い分け
「BtoBだからプレスリリース配信は不要」という誤解
「業界が狭いから配信で広く届けても意味がない」と考える担当者もいますが、BtoB企業こそ、プレスリリース配信で業界記者・専門記者・意思決定者に情報を届ける価値があります。考えるべきことは「配信するかどうか」ではなく、「どの情報を、どの目的で、どこに配信するか」を使い分けられているかどうかです。
配信を考える4つの軸
自社のリリースをどう配信するかは、次の4つの軸で考えると整理しやすくなります。
- 配信目的:注目を集めたいのか、記事化してほしいのか、AI引用を狙うのか、IR・適時開示か
- ネタの性質:新規性(今らしさ)、社会性(世論)、業界文脈(トレンド)、有益性(お役立ちノウハウ)のどれか
- 読み手:一般消費者、企業の意思決定者、記者、投資家のどれか
- 時間軸:一時的に消費される情報か、長期的に蓄積して価値が出る情報か
この4つの軸を意識することで、すべてのリリースを同じやり方で配信するのではなく、目的に応じた使い分けができるようになります。

目的別:使い分けの考え方
具体的にはどう使い分ければよいのでしょうか。配信サービスは、大きく「拡散型」と「届ける型」の2つに分けられます。
- 「拡散型」の配信が活きる場面:BtoC向けの新商品発表、SNSで話題になりやすいキャンペーン、消費者向けの調査結果など。短期的なアクセス数やSNS反応を狙うのに向いています。
- 「届ける型」が活きる場面:業界記者・専門記者に直接届けたい技術的な成果の発表、業界調査、IR・適時開示、社会的な取り組み、継続的な事業スタンスの発信など。記者が選別しやすい構造を持ち、報道機関のネットワークとしっかり接続したサービスがこの目的に適しています。
重要なのは、両者は対立する選択肢ではないということです。BtoB企業であっても、目的によって使い分けたり、両方を併用したりすることが現実的です。
実例:目的に応じて使い分ける
実際の使い分けの例として、大鵬薬品工業様の事例があります。同社は2006年から共同通信PRワイヤーを利用し、医薬品の承認・発売情報、生活者向けヘルスケア製品の新発売、SDGs関連の取り組みなど、幅広い内容のプレスリリースを配信してきました。
特徴的なのは、業界外のメディアにも記事化されている点です。SDGs関連のリリースは医薬品業界外の、環境に向き合うメディアに記事化され、そこから別のメディア取材へとつながっています。地方紙では配信から2〜3カ月後に時間差で記事化されたケースもあるとのことです。詳しくは「導入事例:大鵬薬品工業株式会社様」をご覧ください。
「記者に届くプレスリリース」がAIの引用を生む3つのメカニズム
プレスリリースがAIに引用されるまでの3ステップ
プレスリリースがAIに引用されるまでの流れは、3つのステップとして整理できます。
- 一次情報の発信:プレスリリースで公式な一次情報を世に出す。
- 情報の広がり:その情報が複数のニュースサイトや業界メディアに転載・記事化される。
- AIによる認識:複数の信頼できるサイトに掲載されることで、AIの回答に拾われる可能性が高まる。
自社サイトだけで発信していると、情報の発信元は1つに限られます。プレスリリースなら、一度の配信で複数のメディアに情報が広がり、AIに見つけてもらえる「面」を効率的に増やすことができます。背景にある3つのメカニズムを順に見ていきましょう。
メカニズム1:発見と検証で異なる、AIの情報源の使い分け
まず大切なポイントとして、オウンドメディアとアーンドメディアは、AIに引用される過程でそれぞれ異なる役割を果たします。公式発表は一次情報の出典として、第三者の報道はその裏付けとして働くためです。企業を認識する基盤情報や事実検証の場面では公式ソースとしてオウンドメディアが参照され、複数の選択肢を比較・推奨する場面では第三者による報道が優先されます。両者は競合関係ではなく、補い合う関係です。
特に「○○の企業について教えて」「△△を比較したい」といった発見・推奨のフェーズで、AIは第三者の報道を強く参照します。Muck Rack社が100万件以上のAI引用を分析した調査では、引用の82%がアーンドメディアから来ていることが報告されました(出典:Muck Rack「What Is AI Reading?」 2025年12月)。

企業自身の発信に加えて記者が取材した記事という第三者の検証があると、AIはより自信を持って情報を引用できます。BtoB広報の「記者に取材され、記事にしてもらう」活動は、まさにこの裏付けを生む行為と言えます。
メカニズム2:複数のメディアへの転載が、AI引用率を引き上げる
その効果は数字にも表れています。Stacker社とScrunch社が2025年12月に発表した調査では、同じ記事をオウンドメディアのみに掲載した場合の引用率が8%だったのに対し、複数の第三者ニュースサイトにも展開した場合は34%に上昇しました。約4.25倍(原典の表現では「325%の引用増」)の差です(出典:Stacker「How Earned Media Distribution Expands AI Visibility」)。

1本のリリースが複数のメディアに転載されれば、それぞれが独立した信頼ソースとしてAIに認識されるのです。
メカニズム3:第三者からの言及の蓄積が、AIの「認識」を確立する
AIが特定の企業を引用するためには、まずその企業を「認識」している必要があります。この「認識」が意味するのは、信頼できる独立したソースを通じて存在が確認できたときに生まれます。
Ahrefs社が75,000ブランドを分析した調査では、ブランドに対するWeb上の言及(メンション)が、被リンク(バックリンク)以上に、AIの可視性と強く相関することが報告されています(言及の相関0.664に対し、被リンクは0.218)。(出典:Ahrefs「An Analysis of AI Overview Brand Visibility Factors」)
一度アーンドメディアで記事化された情報は、メディアのアーカイブに残り続けます。発信を重ねるほど第三者からの言及が蓄積され、その企業が少しずつ「AIに認識される存在」へと近づいていきます。単発のヒットではなく、積み重ねが効いてくるのです。
3つのメカニズムが生む「引用の連鎖」
3つのメカニズムをまとめると、次のような連鎖が見えてきます。1本のプレスリリースが記者に届き、記事化される。その記事が複数の報道機関ドメインに転載される。そして言及が蓄積されていく。この「引用の連鎖」を組み立てていくことこそが、AI時代のBtoB広報が獲得すべき構造です。

BtoBリリースで意思決定者にもAIにも届く設計のポイント
「引用の連鎖」を実際に生み出すために、BtoB企業のプレスリリースをどう設計すればよいのでしょうか。意思決定者にも、AIにも届くリリースの、4つのポイントを整理します。
ポイント1:一次情報を盛り込む
自社にしかない一次情報を持つことが最も大切です。自社で実施した調査データ、サービスの利用実績、実証実験の結果。こうした独自の事実は、記者が記事化する動機になり、AIが引用する根拠にもなります。
ポイント2:業界全体への意義を示す
BtoB企業のリリースは、自社の発表にとどめず、業界全体にとっての意味を語ると記事化されやすくなります。「自社が新製品を出した」だけでなく、「この製品が業界のどんな課題を解決するのか」まで踏み込みましょう。専門記者は、業界の文脈で価値のある情報を探しているからです。
ポイント3:配信先を「読者の質」で選ぶ
配信先は、拡散の数ではなく誰に読まれるかで選びます。BtoB企業であれば、業界の意思決定者や専門記者が見ている媒体に届くかが重要です。AIは業界特化メディアを高く評価するため、そうした媒体に届く配信網を選ぶことが、意思決定者への到達とAI引用の両方につながります。
業界・専門メディアへの配信の重要性は「なぜ今、地方紙・業界誌へのPRが重要なのか?プレスリリースなら“届けたい人に情報が届く”」でも詳しく解説しています。
ポイント4:継続的に発信する
一度のリリースで成果を求めるのではなく、継続的な発信を前提に設計しましょう。第三者メディアでの言及が積み重なるほど、AIに認識されやすくなります。四半期に一度の調査発表や、定期的な事例紹介など、発信のリズムをつくることが、「AIに見つけられる企業」への近道です。
AI時代のBtoB広報は「届ける」から「引用される」へ
BtoB広報の価値は、「どれだけ拡散したか」だけでは測れません。意思決定者の手元に届くためには、専門記者の手で記事になり、AIに引用されること。この連鎖を設計することが、AI時代におけるBtoB広報の新しい仕事です。AIが業界特化メディアや第三者の報道を高く評価する傾向は、長年パブリシティを積み重ねてきたBtoB広報にとって追い風と言える変化です。
まずは現状把握から始めてみましょう
「自社の情報が、AIにどう扱われているか分からない」。そう感じる方は、まずは自社のAI上での見え方を確認してみましょう。自社のリリースが報道機関ドメインに転載されているか、業界記者に届いているか、AIに引用されているか。この点検作業が、AI時代のBtoB広報の出発点になります。
PR|共同通信PRワイヤーが選ばれる理由
本記事で見てきた「記者に届く配信」と「AIによる引用の連鎖」を実現するうえで、共同通信PRワイヤーが多くのBtoB企業に選ばれている理由は3つあります。
- 業界誌・専門紙との強いつながり:共同通信加盟社の地方紙ネットワークに加え、業種別の専門メディアのネットワークを通じて、BtoB企業のリリースを業界記者・専門記者にダイレクトに届けます。
- 記事化率約70%という実績:配信したリリースの約7割が記者によって記事化されており、「配信して終わり」ではなく「記事になって届く」ための配信を実現しています。
- 共同通信のネットワークならではの権威性の高さ:地方紙や業界誌など、報道機関各社のドメインに原文が転載されることで、AIにとって信頼できる引用元として認識されやすい仕組みになっています。
自社広報をAI時代の戦略にアップデートしたい方は、お気軽にご相談ください。
BtoB広報・LLMOに関するお問い合わせはこちらから>
この記事、歌になりました
本記事のメッセージを、リリックビデオ「BtoBの会社を、世に届けようとしている、あなたへ」にしました。読み終えたあとのおさらいに、2分50秒だけお付き合いください。
