タンパク質のリン酸化を抑制することで損傷した視神経の再生を促進
2019年5月14日
早稲田大学
タンパク質のリン酸化を抑制することで損傷した視神経の再生を促進
外力による損傷以外の緑内障などの疾患への有効性検証に期待
【発表のポイント】
■脳や脊髄などの中枢神経系は、一度ダメージを受けると再生しにくく、治療が難しい。
■研究グループは、神経の軸索の形態を支えるタンパク質の一つであるCRMP2のリン酸化を抑制することが中枢神経の一部である視神経の再生に有効であることを明らかにした。
■患者数の多い緑内障などでも外力による視神経損傷と同様の病態が起きている可能性があり、今後の検証が期待される。
早稲田大学理工学術院の大島登志男(おおしまとしお)教授、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所の荒木敏之(あらきとしゆき)部長、公立大学法人横浜市立大学大学院医学研究科の五嶋良郎(ごしまよしお)教授らの研究グループは、外力によって損傷した視神経の再生が、CRMP2 (collapsin response mediator protein)というタンパク質のリン酸化を抑制することで促進されることを明らかにしました。
中枢神経系は、一度ダメージを受けると再生しにくく、これが神経疾患の治療を難しくしています。本研究グループは、中枢神経系が損傷を受けた際に神経細胞側でリン酸化するCRMP2というタンパク質に着目し、これまでも脊髄の損傷モデルで、独自に開発したCRMP2のリン酸化を抑制した遺伝子改変マウスは、野生型のマウスよりも運動機能回復が良好であることを報告してきました。今回の研究では、視神経の損傷モデルでこの遺伝子改変マウスを用いて、CRMP2のリン酸化抑制が損傷後の神経軸索再生に有効かを検討し、神経再生が顕著に促進されていることを見出しました。
今後、緑内障などの疾患に対しても、CRMP2のリン酸化抑制が病気の進行を抑制できるか遺伝子改変マウスを用いて検証するとともに、CRMP2のリン酸化を抑制する薬剤の同疾患への有効性を検証することが期待されます。
なお、本研究成果は、英国のオンライン科学雑誌『Scientific Reports』に2019年5月10日午前10時(現地時間)に掲載されました。
詳細は、早稲田大学ウェブサイトでご確認いただけます。
■早稲田大学ウェブサイト
https://www.waseda.jp/top/news/64897
■掲載論文
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