単層カーボンナノチューブの成長にガドリニウム添加触媒の有効性を確認

早稲田大学

2019年11月8日

早稲田大学

単層カーボンナノチューブの成長にガドリニウム添加触媒の有効性を確認

長尺成長技術開発への一歩

【発表のポイント】

■単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は優れた物性を持ち、様々な分野での応用が期待されているが長尺に成長させることが難しく実用化を妨げている。

■従来SWCNTを基板上に成長させるにはアルミナ(Al2O3)下地上の鉄(Fe)触媒が知られていたが、これにガドリニウム(Gd)を微量に添加することで性能が向上することを示した。

■最適なGdの添加量を求めると共に、触媒の化学結合状態を調べることでGdの役割とSWCNTの成長停止のメカニズムの理解を進めた。

早稲田大学ナノ・ライフ創新研究機構の杉目 恒志(すぎめ ひさし)次席研究員は、

Istituto Officina dei Materiali (イタリア)と共同で、これまで単層カーボンナノチューブ(SWCNT)(※1)の成長に有効とされていたアルミナ(Al2O3)下地上の鉄(Fe)触媒にガドリニウム(Gd)を添加することで寿命が約3倍に伸びることを確認し、従来の性能を上回る触媒を開発しました。

SWCNTは軽量で強靭でありながら高い電気伝導性や熱伝導性を持つ素材として様々な応用が期待されています。枯渇の心配がない炭素で高機能なデバイスなどが実現できれば、持続可能な社会を実現する技術開発につながります。しかし、長尺化や効率よく成長させることが難しいことから、用途が限られることや高コストであることなどが問題となっています。長尺化できない大きな理由として成長の停止が挙げられ、これに成長中の触媒の構造変化が大きく関わっていることが分かっていました。

本研究では、多層カーボンナノチューブの成長で有効とされていたGdの添加が、SWCNTの成長にも有効であることを確認し、その最適値を求めると共に化学結合状態を調べることでそのメカニズムを明らかにしました。その結果、GdにはCNTの成長中に起こる触媒構造の変化を抑える効果があることが確認されました。今後、本研究で構築した理論をもとにさらに高性能な触媒開発と成長手法に応用することで、より効率的な長尺SWCNTの成長を可能とする手法の開発につなげ実用化を目指します。

本研究成果は、『ACS Nano』に2019年11月1日にオンライン掲載されました。

【論文情報】

雑誌名:ACS Nano 

論文名:Gd-Enhanced Growth of Multi-Millimeter-Tall Forests of Single-Wall Carbon Nanotubes

執筆者名(所属機関名):Hisashi Sugime (早稲田大学)、Toshihiro Sato (早稲田大学)、Rei Nakagawa (早稲田大学)、Cinzia Cepek (Istituto Officina dei Materiali)、Suguru Noda (早稲田大学)

掲載URL:https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsnano.9b06181

DOI:10.1021/acsnano.9b06181

詳細は早稲田大学ウェブサイトでご確認いただけます。

https://www.waseda.jp/top/news/67173

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