19年IPO市場は地政学上の不確実性と貿易摩擦に影響を受けたが、20年には再び活性化の兆し(19年第4四半期)
20191220
EY Japan
19年のIPO市場は地政学上の不確実性と貿易摩擦に影響を受けたが、20年には再び活性化の兆し(19年第4四半期)
■2019年はIPO活動が、件数、調達額ともに全体的に低下
■2019年に最も活況を呈したのはテクノロジーセクターで、263件のIPOが合計628億米ドルを調達
■2020年のIPO活動は、特に年の前半に、より活発化する模様
地政学上の不確実性および貿易摩擦が、2019年のIPO市場に大きな影響を与え、件数、調達額の両方でIPO活動は停滞しました。2019年に行われたIPOの件数は1,115件で、調達額は合計1,980億米ドルでした。これは、件数では前年度比19%の落ち込み、調達額では4%の減少となりました。しかし、現在懸念材料となっている米国、欧州連合(EU)、中国間の貿易摩擦、経済減速の不安、英国のEU離脱や香港での社会不安を含む地政学上の問題が、2020年には鎮静化すると見られることから、IPO活動が活発化することが期待されます。特に、2020年前半にはこの兆しが顕著になるでしょう。米国大統領選挙を目前に控えた年の後半にはマーケットのボラティリティの上昇が予想されるからです。
Asia-Pacificエリアにおける2019年のIPO活動は、前年度比で、件数が1%減、調達額が8%減と全体的には下降傾向であったものの、最もIPOが活況を呈したエリアとなりました。そして、同エリアのあとにEMEIA、Americasが続きました。セクター別では、テクノロジー業界が2019年も引き続きIPO活動が最も盛んに行われたセクターとなり、263件のIPOが合計628億米ドルを調達しました。件数では、ヘルスケアと製造業がそれぞれ174件、147件と、2019年も活発に推移しました。一方、調達額では、エネルギーとヘルスケアセクターが好調で、それぞれ合計320億米ドル、225億米ドルを調達しました。
2019年第4四半期(以下、4Q)のIPO活動は、件数が353件で調達額が合計845億米ドルと、前年同期比較で件数では5%減少しましたが、調達額では53%の増加となりました。2019年4Qには同年最大のIPOが2件行われたため、当期のIPO活動が好転しました。本分析結果を含むより詳細な分析データについては、EYが12月12日に発表した『Global IPO trends: Q4 2019』)をご覧ください。
EY Global IPOリーダーのPaul Goは次のように述べています。
「2019年4Qでは、待ち望まれていた、今年最大のIPOが2件行われ、盛り上がりを待っていた2019年に好転の機会が与えられました。2020年になると、IPOマーケットに影響を与えた地政学上の不確実性と貿易摩擦は一部鎮静化すると、私たちは予想しています。しかし、マーケットのボラティリティは続くと見られていることから、近い将来IPOを成功させたいと考えている経営者は、2020年初頭に見込まれるIPOの活性化という格好のチャンスを確実なものにしておく必要があります。」
【地政学上の不確実性と貿易摩擦により、AmericasのIPO活動は低下】
Americasの2019年のIPO市場は、件数が213件で前年度比20%の減少、調達額が合計539億米ドルで前年度比10%の減少でした。2019年、本エリアで最もIPO活動が盛んだったのは引き続き米国で、同国は、24社のユニコーン企業によるIPOを含め、件数ではAmericas全体のIPOの77%、調達額では93%を占めるに至りました。
カナダのトロント証券取引所と新興企業向け取引所で実施された計18件のIPOでは、合計で2億9,500万米ドルが調達されましたが、これは、Americas全体のIPO件数の8%を占めました。ブラジルのサンパウロ証券取引所(B3)では5件のIPOが行われ、合計23億米ドルが調達されました。チリでは2件のIPOが行われ、調達額は合計11億米ドルとなりました。
EY AmericasのIPOリーダーであるJackie Kelleyは次のように述べています。
「例年通り、2019年もAmericasのIPO活動の多くが米国で行われましたが、その他にもブラジル、チリ、カナダなど広範なマーケットで活動が行われました。2019年も終わろうとする今、これらすべてのマーケットでIPOが活性化する兆しが見えています。私たちは、2020年に上場を目指しているビジネスリーダーにとって、Americas全体で力強いマーケット環境が期待できるとみています。」
【Asia-PacificエリアのIPO市場は回復力(レジリエンス)を維持】
Asia-Pacificエリアは、グローバルのIPO活動において引き続き他エリアを圧倒しており、2019年、IPO件数で世界トップ10となった証券取引所のうち7つ、資金調達額では5つを、同エリアの取引所が占めました。しかし、2019年の件数は668件で前年度比1%の減少、また調達額は899億米ドルで8%の減少となりました。
日本の証券取引所では、2019年89件(REIT含む)のIPOが合計36億米ドルを調達しましたが、前年度比では件数で9%の減少、調達額では87%の減少となりました。一方、中国本土では、上海の科創板(スターマーケット)が早期に成功したことから、2019年4QのIPO活動は増加しました。これにより2019年のIPO件数は、前年から89%増加し197件を記録、また357億米ドルの調達額は69%の増加となりました。香港証券取引所では、IPO件数は154件で25%の減少となりましたが、調達額は379億米ドルに上り4%増加しました。
EY Asia-Pacific IPO リーダー、Ringo Choiは次のように述べています。
「地政学上および貿易の不確実性が2019年の大半を覆っていたにもかかわらず、Asia-Pacificエリアの市場は2019年、ある程度は好調に推移したと言えます。しかし、2020年に向かう中、私たちは、地政学上の逆風の継続と投資家の懐疑的な見方の強まりによって、IPO活動は減速すると予測しています。特に2020年の後半はその傾向が顕著となるでしょう。」
【EMEIAのIPO市場4Qの活況によって浮上】
EMEIAでは、2019年のIPO件数は前年度比47%減少の234件にとどまりました。一方、調達額では14%増の542億米ドルを記録、2019年、調達額が唯一増加したエリアとなりました。また、EMEIAの証券取引所も堅調さをキープし、2019年の調達額で世界トップ10の証券取引所に3つ(サウジアラビア、英国、 ドイツ)の証券取引所がランクインしました。また、調達額で世界トップ10のIPOのうち4件がEMEIAで実施されました。EMEIAの IPO調達額は、2019年4Q、サウジアラムコをはじめとする4件の超大型IPOによって大きく勢いづき174%増加しましたが、件数では前年同期比で45%減少しました。
EY EMEIAのIPOリーダー、Martin Steinbachは次のように述べています。
「EMEIAでは、史上最大となったサウジアラムコのIPOが実施されました。これは、同エリアのIPO調達額の年間合計の14%増加に大きく貢献するものとなりました。IPO活動を減速させたディスラプティブな向かい風が沈静化していることから、IPO市場に対する投資家心理にポジティブに作用し、2020年EMEIAのIPO活動は緩やかに上昇すると見ています。全体として、投資家はクオリティの高いエクイティストーリーの選択に際し、厳選する傾向が高まると予測しています。加えて、IPOを目指している事業主や経営幹部にとっては、マーケットのボラティリティに直面する状況が続くでしょう。狭いIPOの窓が開いたときに素早く行動できるよう、彼らは、早めに準備を行い、包括的なアプローチを用意して、いつでもIPOが行える態勢にしておく必要があります。」
【2020年の見通し:特に年の前半にIPO活動はますます活況になる】
今後、2020年には一部の不確実性が沈静化すると見られています。米国、中国、EU間の貿易摩擦、英国のEU離脱の先行き、そして、欧州の一部の国での経済不安などは、2020年の初めには落ち着き、IPO全体に対する投資家心理にポジティブな影響をもたらすでしょう。
パイプラインに健全なIPO候補企業が控えているということは、機が熟した期間内で、IPO活動がすべてのエリアで活発化することを意味しています。特にAmericasでは、2020年前半に米国で多くの大型ユニコーンがIPOに乗り出す見通しであることから、同国のIPO市場は活況を帯びると見られています。従って、2020年のIPO件数は2019年のレベルを上回るはずです。
グラフ:2010年~2019年全世界のIPO活動
付録:2019年1月~9月における全世界のIPOの実績-セクター別 ※四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。https://www.eyjapan.jp/newsroom/2019/2019-12-20.html
※本プレスリリースは、2019年12月12日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
英語版プレスリリース:
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EY is a leader in helping companies go public worldwide. With decades of experience, our global network is dedicated to serving market leaders and helping businesses evaluate the pros and cons of an initial public offering (IPO). We demystify the process by offering IPO readiness assessments, IPO preparation, project management and execution services, all of which help prepare you for life in the public spotlight. Our Global IPO Center of Excellence is a virtual hub, which provides access to our IPO knowledge, tools, thought leadership and contacts from around the world in one easy-to-use source. ey.com/ipocenter
〈About the data〉
The data presented in the Global IPO trends: Q4 2019 report and press release is from Dealogic and EY teams. Q4 2019 (i.e., October-December) and 2019 (January-December) is based on priced IPOs as of 4 December 2019 and expected IPOs in December. Data is up to 5 December 2019, 9 a.m. UK time. All data contained in this document is sourced to Dealogic, CB Insights, Crunchbase and EY unless otherwise noted.
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