実用性の高いカーボンリサイクル製品として、 海水とCO2を原料とした全く新しいコンクリートを開発

早稲田大学

2024年9月17日

早稲田大学

株式会社ササクラ

実用性の高いカーボンリサイクル製品として、
海水とCO2を原料とした全く新しいコンクリートを開発

 

詳細は早稲田大学HPよりご確認ください。

発表のポイント

〇 海水中のマグネシウムを用いてCO2を炭酸塩として固定したカーボンリサイクル材料「WMaCS(ダブルマックス)®」を開発しました。

〇 WMaCS応用製品として、「普通ポルトランドセメント」※1を用いた従来のコンクリートとは全く異なる新しい世界初のコンクリートの開発に成功しました。配合により、 凝結時間と施工性、あるいは圧縮強度は、普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートと同等です。

〇 新開発のコンクリートなど、WMaCS製の建設材料は、1m3あたり約20~110kgのCO2を長期間固定化できます。

 

早稲田大学理工学術院の中垣隆雄(なかがきたかお)教授と秋山充良(あきやまみつよし)教授の研究グループ(以下、本研究グループとする)は、海水中のマグネシウムを用いてCO2を炭酸塩として固定したカーボンリサイクル材料「WMaCS(ダブルマックス)®」を開発しました(Waseda Magnesium-based Carbon Sequestration materialsの略、登録商標)。WMaCSを応用した建設材料は、1m3あたり約20-110kgのCO2を長期間固定化できます。WMaCSの応用製品として新たに開発したコンクリートは、石灰由来のクリンカ※2を一切含まない独自の製法のため、従来の普通ポルトランドセメントを用いたコンクリートと硬化メカニズムは全く異なりますが、配合により、普通コンクリートと同等の施工性(約1-2時間の凝結時間)、あるいは、建設材料として十分な圧縮強度(25-75MPa)を実現しました。

図:WMaCS製造プロセスフロー

本研究成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDOとする)から2022年度に受託した「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発/研究拠点におけるCO2有効利用技術開発・実証事業」(実証研究エリア)におけるプロジェクト「海水を用いた有価物併産カーボンリサイクル技術実証と応用製品の研究開発(※)」(プロジェクトマネージャ:中垣隆雄教授、株式会社ササクラとの共同実施、以下、本プロジェクトとする)の研究活動によって得られたものです。

 

現在、本プロジェクトでは、広島県・大崎上島の実証研究エリアにおいて20トン/日の海水を用いたカーボンリサイクル技術のパイロットスケールの試験を開始しており、同エリアにて供給される石炭ガス化複合発電由来のCO2を用いて同様のコンクリートを製造する予定です。さらに、商用化を見据え、モルタルやボード材など様々な応用製品も開発中で、これらの製品の実用化を通して、カーボンリサイクル技術の早期社会実装を目指します。

※参考:「海水を用いた有価物併産カーボンリサイクル技術実証と応用製品の研究開発を目指す」
(2022年11月16日プレスリリース、https://www.waseda.jp/top/news/85546

図:WMaCSを用いたコンクリ―ト材の混錬
図:WMaCSを用いた様々なプレキャストコンクリート製品 図:材齢7日の円柱供試体の圧縮強度

 

(1) 研究の背景

CO2を分離回収し資源として有効活用するカーボンリサイクル技術は、日本政府によって2021年6月に策定された「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、カーボンニュートラル社会を実現するためのキーテクノロジーとして位置付けられています。そのうち、現時点ではまだ高価なグリーン水素を用いず、再放出しない炭酸塩等へのCO2固定化は、先行して実現可能な技術として期待されています。CO2固定化材料には、CaO(酸化カルシウム)かMgO(酸化マグネシウム)が適しています。カルシウムもマグネシウムも海水中にイオンとして多く含まれており、本プロジェクトでは、カルシウムを石膏(CaSO4・2H2O)として、マグネシウムを塩化マグネシウム水和物(MgCl2・2H2O)としてそれぞれ回収し、後者を熱分解して得られるMgOを原料とした炭酸マグネシウムの応用製品の開発に取り組んできました.これらの一連の工程をグリーン電力等によって駆動し,コンクリート化することで1m3あたり約20~110kgのCO2を固定化できます。この炭酸マグネシウム材料は、前事業(※)の成果を基に得られたものであり、カーボンリサイクル材料「WMaCS(ダブルマックス)®(Waseda Magnesium-based Carbon Sequestration materialsの略)と名付けて商標(第6829796号)も登録しました。

 

従来のコンクリートに用いられる普通ポルトランドセメントは、天然にCO2が固定化されている石灰(CaCO3)を熱分解して得られたCaOが主成分のクリンカを使用しており、加熱用の燃料をカーボンニュートラル化しても、石灰由来の非エネルギー起源CO2の発生は避けられません。一方、普通ポルトランドにWMaCSを混ぜただけのコンクリートは施工性が悪化し、ひび割れ等が発生して強度も不足しておりました。

※参考:研究開発テーマ「海水および廃かん水を用いた有価物併産CO2固定化技術の研究開発」

(2020年7月15日プレスリリース、https://www.waseda.jp/top/news/69663

 

(2) 今回の研究成果について

本研究グループは、古くからある非水硬性のソレルセメントの技術にヒントを得て、材料と配合比を変えたコンクリートを作製し、性能評価を実施してきました。今回の研究成果は、混ぜ込むWMaCSの結晶を酸化マグネシウムの生成条件と炭酸塩化の条件によって制御し、ソレルセメントによって作製した粗骨材・細骨材および独自の配合比(特許出願済み)とすることで、コンクリートに求められる1-2時間程度の凝結時間による施工性の確保と25MPa以上の圧縮強度の両立に成功しました。現在、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)にて露天の耐候試験を実施しており、種々の特殊添加剤が材料劣化の抑制に及ぼす影響などを検証中です。現在までに、製造から半年が経過した後でも、開発したコンクリートに特に目立った劣化は確認されておりません。

石灰を一切用いず、海水とCO2だけで作製できる世界初のコンクリートを実現したことで、コンクリートの抱える非エネルギー起源CO2も削減可能となります.

 

(3) 今後の展開このプロジェクトにより期待される波及効果

現在、本プロジェクトでは、(株)ササクラと広島県・大崎上島の実証研究エリアにおいて20トン/日の海水を用いたカーボンリサイクル技術のパイロットスケールの試験を開始しており、2024年度中に同エリアにて供給される石炭ガス化複合発電由来のCO2を用いて同様のコンクリートを作製する予定です。

WMaCSを用いたコンクリートは、消波ブロックやインターロッキングブロックなど、プレキャストコンクリート製品への展開を目指しています。一方、塩化物を大量に含み、従来のコンクリートのような強アルカリ性ではないため、普通鋼鉄筋を用いるのは困難です。そのため、水中への浸漬による溶脱イオンの測定や、ステンレス鋼鉄筋の腐食試験なども継続して実施中です。

さらに、商用化を見据え、モルタルやボード材など様々な応用製品も開発中で、これらの製品の実用化を通して、カーボンリサイクル技術の早期社会実装を目指します。

 

【研究プロジェクトについて】

事業名称:NEDO カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2有効利用拠点における技術開発 /研究拠点におけるCO2有効利用技術開発・実証事業(実証研究エリア)

テーマ「海水を用いた有価物併産カーボンリサイクル技術実証と応用製品の研究開発」

実施期間:2022年度から2024年度までの3年間(予定)

(参考)カーボンリサイクル実証研究拠点 https://osakikamijima-carbon-recycling.nedo.go.jp/

同パンフレットの6ページに本プロジェクトも記載。

https://osakikamijima-carbon-recycling.nedo.go.jp/wp-content/themes/html/docs/panflet.pdf

 

【研究者情報】

学校法人早稲田大学
理工学術院創造理工学部総合機械工学科 中垣隆雄 教授

理工学術院創造理工学部社会環境工学科 秋山充良 教授

 

用語解説】

※1 普通ポルトランドセメント

普通ポルトランドセメントは、建築や土木工事で広く使われているセメントの名称です。石灰石や粘土を高温で焼いた後、粉砕して作られます。このセメントは水,砂,砂利などと混ぜることでコンクリートとなり、建物や橋などの構造物に広く使われています。

 

※2 クリンカ

クリンカは、セメントの製造過程で生まれる中間製品です。石灰石や粘土を高温で焼き上げてできる硬い塊で、これを粉砕して普通ポルトランドセメントが作られます。クリンカの製造には熱エネルギーを必要とし、多くは化石燃料を使っています。例え化石燃料から脱却しても、石灰石(CaCO3)の熱分解由来のCO2発生は回避できません。

 

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