2021年第1四半期、流動性が高いIPO市場は記録を更新

EY Japan

・2021年第1四半期、世界全体のIPOは前年比で件数は85%増加、調達額は271%増加

・SPAC(特別買収目的会社)の2021年第1四半期のIPO実績は2020年通年の実績を超える

・2021年第1四半期は、四半期としては過去20年間で最高

 

IPO市場はこれまでのところ魅力的な状況が続いており、件数、調達額ともに第1四半期としては過去20年で最高となりました。例年、第1四半期は低調ですが、今年はその傾向に反して活況を呈しています。従来型のIPO市場も極めて好調でしたが、SPAC(特別買収目的会社)によるIPOも第1四半期には過去最高を更新し、2020年通年での実績を上回る件数、調達額を達成しました。2021年第1四半期、世界全体のIPO件数は430件(前年比85%増)、調達額は1,056億米ドル(前年比271%増)に達しました。

 

この勢いの背後にあるのは、コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを契機に生じた十分な流動性と新たな機会です。また、投機的取引や楽観的取引に加え、若年層を含む一般の人々の間でリテール投資プラットフォームが普及したことで、投資がこれまで以上に身近なものになりました。今後は市場の調整が懸念されており、投資家心理は不安定な状態が続いています。この点を踏まえると、投資家は引き続き流動性が十分なうちに流動性を活かせる投資リターンを求めていくと見られます。

 

Americasでは第1四半期も回復基調が継続し、IPO件数は121件、調達額は452億米ドルでした。Americasの全取引所の合計では、件数と調達額がともに過去20年以上で最高となりました。Asia-Pacificでは、IPO件数は200件、343億米ドルの調達額でした。この調達額は過去20年間の記録を更新するものです。2020年には低調だったEMEIAのIPO市場は、2021年第1四半期には活況を取り戻し、IPO件数は109件、調達額は261億米ドルとなりました。

 

セクター別に見ると、テクノロジーが件数(111件)、調達額(461億米ドル)ともに他を引き離して第1四半期も引き続き首位となりました。ヘルスケアがこれに続き、件数は78件、調達額は140億米ドルでした。3位には製造業が続き、IPO件数は57件、調達額は63億米ドルでした。これらを含む調査結果は、EYの四半期レポートGlobal IPO Trends: Q1 2021で公表しています。

 

EY Global IPOリーダーのPaul Goは次のように述べています。

「市場に大規模な流動性が供給されるなか、世界のIPOの件数・調達額はここ20年で最高となっています。しかし、ボラティリティをもたらしIPO市場に影響を及ぼしかねない不確定要素も多数残っています。例えば、ワクチン接種の遅れや新たなパンデミックの波が実体経済の回復を遅延させる可能性、規制強化によるIPO申請の減少や撤回、銀行のレバレッジ縮小による資本市場の不安定化リスクなどが考えられます。企業は可能であるうちに市場にアクセスできるよう、十分に準備をしておく必要があります」

 

2021年第1四半期、AmericasIPO市場は、件数、調達額の両方で記録を更新:

 

AmericasのIPO活動では、件数が2020年第1四半期と比較して3倍超(121件、218%増)に増加しました。調達額は452億米ドルに達し、増加率は446%と過去最大の伸びとなりました。セクター別では、第1四半期、ヘルスケアでIPOが44件、調達額は87億米ドルで、件数では引き続き首位となりましたが、調達額ではテクノロジーが214億米ドル(33件)となり、他のセクターを大きく引き離しています。

 

世界市場と同様に米国でも、第1四半期は低調となる傾向があります。しかし2021年の第1四半期には、2020年からの継続案件やテクノロジー企業を中心に高バリュエーションを生かそうとする発行体があり、米国全体で99件のIPOが実施され、411億米ドルの調達額でした。SPACのIPO活動は2021年第1四半期も依然として爆発的に増加しており、2020年に更新した記録を既に上回っています。2021年第1四半期には米国の証券取引所では従来型のIPOも急増しましたが、SPACによるIPOはその3倍の件数が実施されました。2021年第1四半期に米国ではSPACによるIPOの実施が300件、934億米ドルの調達額でした。

 

米国同様ブラジルでもIPO活動は勢いを増しており、四半期としては2007年以降で最高となりました。2021年第1四半期、ブラジルではAmericasのIPO総件数の12%を占める15件のIPOを実施、35億米ドルの調達額でした。

 

EY Americas IPOリーダーのRachel Gerringは次のように述べています。

「AmericasのIPO活動は2021年に入っても、高バリュエーションと流通市場の活況に牽引され、力強さを維持しています。SPACによるIPOが急増し注目を集めていますが、従来型のIPOも勢いを維持し、2021年第1四半期には件数と調達額のいずれも過去20年超で最大になりました。引き続き従来型のIPOの変革が進んでおり、非従来型の公募市場へのアプローチが現れたことから健全な競争が促進されています。現在も進化は進行中で、発行体の選択肢も増え、公募市場への最適なアプローチを選ぶことが可能となりました」

 

Asia-PacificIPO市場は予想に反して好調を維持:

 

Asia-Pacificは第1四半期に世界全体のIPO活動のほぼ半分(47%)を占めて2021年のスタート切りました。当地域のIPO件数は200件、調達額は343億米ドルでした。調達額は第1四半期としては過去20年間で最高となり、2010年第1四半期の記録を更新しました。セクター別では、テクノロジーが件数(51件)、調達額(177億米ドル)の両方で他のセクターを上回りました。

 

中華圏の経済成長の強さが、好調なIPOの勢いに反映されています。中国規制当局が新たな審査プロセスを導入したにもかかわらず、中華圏では前年比でIPO件数が51%増加し(133件)、調達額は121%増加しました(289億米ドル)。

 

日本のIPO活動も同様に堅調に推移し、引き続き資金がハイテク・スタートアップ企業に流れ、IPOを検討する企業が着実に増加しました。日本ではIPO件数が20件、調達額は10億米ドルでした。

 

EY Asia-Pacific IPOリーダーのRingo Choiは次のように述べています。

「この四半期は新年度最初の四半期です。米国の新政権元年でもあり、新たに米中関係を担当するチームも態勢は整っています。また、COVID-19パンデミックは2年目に入りました。楽観的な見方もある一方で、不確定要素も残っており、それが今年のAsia-PacificのIPO市場のボラティリティにつながるかもしれません。Asia-Pacificの企業がIPOを成功させるためには、この種の問題に迅速に対応する必要があるでしょう」

 

EMEIAIPO市場では第1四半期を通して勢いが加速し、楽観主義が強まり、ユニコーン企業が増加:

 

2020年第4四半期の勢いに乗り、EMEIAは2021年第1四半期に極めて好調なスタートを切りました。高バリュエーション、低ボラティリティ、景気回復に向けての信頼感の高まりが当地域の好調さに寄与したと見られます。EMEIA全体のIPO件数は109件、前年比179%増でした。調達額は261億米ドルで前年比646%増です。

 

欧州は、COVID-19パンデミックのために課された制約にもかかわらず引き続き力強さを見せ、投資家心理も改善しました。欧州のIPO活動は第1四半期には大きく回復し、件数は315%増(83件)、調達額は1,814%増(231億米ドル)となりました。英国では、投資家の意欲は衰えず、企業はパンデミックにより加速した成長と高水準の流動性の恩恵を受けました。英国は2021年1四半期を、IPO件数17件(467%増)、調達額75億米ドル(1,031%増)で終えました。

 

EY EMEIA IPOリーダーのMartin Steinbachは次のように述べています。

「高バリュエーション、低ボラティリティ、景気回復についての楽観的な見方の増加により2021年第1四半期のIPO活動は好調となり、複数のユニコーン企業がこの好機を捉えました。この勢いは第2四半期にも続くと予想しています。景気刺激策や地域全体でのワクチン接種の実施が追い風となり、世界経済が2021年から2022年にかけて回復するという期待が高まっています。しかし、COVID-19パンデミックの第3波や市場調整が発生すれば、第2四半期以降のIPOの機会に影響が及ぶかもしれません。IPOを検討している企業は早急に態勢を整え、あらゆる選択肢を検討する必要があります」

 

2021年第2四半期の展望:不確定要素により市場のボラティリティが極限まで高まれば、パーフェクトストーム(最悪の事態)への引き金になり得る:

 

地合いは良好ですが、引き続き不確定要素の影響が増し、市場のボラティリティが高まるでしょう。ワクチン接種の進捗が国ごとに異なる状況下でCOVID-19パンデミックの新たな波が世界各地で発生する可能性、地政学的緊張、インフレーション、金利、グローバル金融システムが予期せぬ市場の動揺を乗り切れるか否かは、すべてがパーフェクトストームの潜在的な要因です。従来型のIPO、SPACによる買収、直接上場のいずれを選択するにしても、評判のよいセクターに属し、適切なストーリーを備え、態勢が整っている企業は、チャンスがあるうちに機会をつかむよう、今動くべきです。

 

EY Japanのウェブサイト:

https://www.ey.com/ja_jp/news/2021/05/ey-japan-news-release-2021-05-11

 

※本プレスリリースは、2021年4月15日(現地時間)にEYが発表したプレスリリースを翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

 

英語版プレスリリース:

https://www.ey.com/en_gl/news/2021/04/liquidity-fueled-ipo-markets-break-records-in-q1-2021

 

 

2012年~2020年は通年です。

出典:Dealogic EY

 

1四半期の IPO 活動

/四半期

IPO件数

調達額(単位:10億米ドル)

2019年1月

57

$3.1

2019年2月

61

$3.1

2019年3月

93

$8.9

20191Q

211

$15.1

2020年1月

77

$9.8

2020年2月

78

$11.8

2020年3月

78

$6.9

20201Q

233

$28.5

2021年1月

104

$28.3

2021年2月

141

$34.7

2021年3月

185

$42.6

20211Q

430

$105.6

出典: DealogicEY

 

付録: 20211月から20213月における全世界のIPOのセクター別実績

セクター

IPO件数

全世界の件数に占める割合

調達額(単位:10億米ドル)

全世界の調達額に占める割合

消費者製品

32

7.5%

8.0

7.6%

生活必需品

19

4.4%

4.2

4.0%

エネルギー

33

7.7%

8.0

7.5%

金融

18

4.2%

5.1

4.8%

ヘルスケア

78

18.1%

14.0

13.3%

製造業

57

13.3%

6.3

5.9%

素材

41

9.5%

4.2

4.0%

メディア・エンターテイメント

8

1.9%

0.5

0.5%

不動産

16

3.7%

2.7

2.5%

小売

10

2.3%

3.1

3.0%

テクノロジー

111

25.8%

46.1

43.7%

情報通信

7

1.6%

3.4

3.2%

グローバル合計

430

100.0%

105.6

100.0%

出典:DealogicEY

四捨五入しているため、合計は必ずしも100%にはなりません。



〈EYについて〉

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EYは、「Building a better working world(より良い社会の構築を目指して)」をパーパスとしています。クライアント、人々、そして社会のために長期的価値を創出し、資本市場における信頼の構築に貢献します。

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IPOは企業の経営計画における画期的な節目です。EYのチームはIPOサービス業界トップのアドバイザーとして世界中の志ある企業にIPOを成功に導くための助言を行っています。信頼されるビジネスアドバイザーとして、起業からIPO完了までのプロセス、限られたチャンスのなかで目標を達成するための戦略的ポジショニング、公開企業になった際の態勢作りを支援します。2020年に行われた全IPOの総調達額のうち、EYアドバイザーがサービスを提供した企業の調達額は58%を占めました。ey.com/ipo

 

<データについて>

Global IPO trends: Q1 2021レポートおよびニュースリリースに示されたデータはDealogicおよびEYによるものです。2021年Q1(すなわち1月~3月)のデータは、2021年3月24日時点で完了しているIPOおよび2021年3月31日までに完了すると予想されるIPOに基づいています。データは英国時間2021年3月25日午前9時時点のものです。本書に含まれるすべてのデータは、特に断りのない限り、Dealogic、CB Insights、CrunchbaseおよびEYを出典としています。SPAC(特別買収目的会社)によるIPOは、特に記載のない限り、本レポートのすべてのデータから除外されています。

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