高カカオチョコレートの摂取が認知機能のパフォーマンスの維持と脳の効率的な活用に寄与することを示唆

カカオポリフェノールを豊富に含む高カカオチョコレートで日本人男女を対象とした介入研究により判明

meiji

 株式会社 明治(代表取締役社長:松田 克也)と国立研究開発法人理化学研究所(理事長:五神 真)生命機能科学研究センター健康・病態科学研究チーム※1の共同研究グループは、ヒトを対象とした2つの研究を行い、高カカオチョコレートの摂取が、集中力を維持し、連続的な認知課題時における認知機能のパフォーマンスの低下を抑制したこと、また脳の認知資源※2の効率的利用に寄与したことを明らかにしました。当研究成果は、国際学術誌Heliyon (2024年1月11日、Sasaki et al., Heliyon 2024.E24430)およびNutrients (2023年12月21日、Sasaki et al., Nutrients 2024, 16(1), 41)に掲載されました。

 

【研究成果の概要】

研究① 行動評価

 カカオポリフェノール※3を豊富に含む高カカオチョコレート(カカオポリフェノールとして635 mg)の摂取が課題遂行時の認知機能に与える効果を調べました。

・高カカオチョコレートの摂取は、連続的な認知課題遂行時の認知機能のパフォーマンスの低下を抑制しました。

・高カカオチョコレートの摂取は、課題遂行前後において集中力を維持しました。

 

研究② 脳活動解析

 カカオポリフェノールを豊富に含む高カカオチョコレート(カカオポリフェノールとして635 mg)の摂取が認知課題遂行中の脳活動量に及ぼす影響を調べました。

・高カカオチョコレートの摂取は、注意機能(注意の抑制・配分)に関係する脳の領域において、同じパフォーマンスを維持しつつ、一方で、脳の活動量を軽減することによりエネルギーを節約し、人によって量が決まっているとされる「認知資源」を効率的に利用することが示唆されました。

 

※1 研究当時

※2 認知資源:注意力や集中力が必要な作業を行うことに対応するために脳が蓄えているエネルギー資源

※3 カカオポリフェノール:チョコレートの原料であるカカオ豆に含まれるポリフェノール

 

【研究背景と今後の活用】

 カカオポリフェノールを含む食品が認知機能に及ぼす影響を示す論文は国内外で数多く報告されていますが、間食として適切な用量のチョコレートで認知機能の維持について報告した事例はほとんどありません。本研究では、認知機能検査成績および自律神経活動が指標となる脳機能のうち、特に集中力(注意力)に及ぼす影響を明らかにすることを目的としました。また近年、「脳の認知資源」という考え方が注目されており、認知資源の消費が、仕事や学習のパフォーマンスに影響を与えると考えられています。今回の研究では、カカオポリフェノールを多く含む高カカオチョコレートの摂取により、連続的な課題遂行時の認知機能のパフォーマンスが維持されたこと、また特定の脳領域において認知資源の効率的利用がなされていたことを明らかにしました。仕事や学習シーンなどでの作業効率アップ、生活充実、ウェルネスの実現に寄与していきたいと考えています。

 

【論文内容】

研究①行動評価

【タイトル】

認知的要求度の高い課題中の認知能力に対するダークチョコレートの影響

(The effects of dark chocolate on cognitive performance during cognitively demanding tasks: A randomized, single-blinded, crossover, dose-comparison study, Heliyon, 2024, 10(2), https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e24430

 

【方法】

 20歳以上50歳未満の日本人男女22名(最終的な有効性解析対象者は18名)を対象に、2群2期ランダム化クロスオーバー試験※4を実施しました。試験食品としてカカオポリフェノール濃度の異なる2種類のチョコレート【高カカオチョコレート(総ポリフェノール量 635 mg)、低カカオチョコレート(総ポリフェノール量 212 mg)】を各25 g※5摂取した後、高い認知的要求(ここでは反応抑制と選択的注意を指す)を必要とするストループ課題※6のセッションを2回実施しました。試験食品摂取前とセッション2回目終了後に自律神経機能と主観評価を測定し、疲労や集中力などの状態を評価しました。

 

【主な結果】

 ストループ課題の正答率は、低カカオチョコレートを摂取した時にはセッション2回目で有意に低下しましたが、高カカオチョコレート摂取をした時はセッション1回目と2回目で有意な変化はありませんでした(図1)。また、主観的な集中力も低カカオチョコレートを摂取した時にセッション2回目の終了後に有意に低下しましたが、高カカオチョコレート摂取をした時は、チョコレート摂取前とセッション2回目終了後で有意な変化はありませんでした(図2)。

 この結果から、高カカオチョコレートの摂取が、継続的かつ努力を要する認知課題におけるパフォーマンスと集中力の維持に寄与したことが明らかになりました。

 

1. ストループ課題正答率       図2. 集中力(主観評価)

有効性解析対象者18名によるデータ

有意差**: p < 0.01、セッション1回目もしくは試験食品摂取前と比較

n.s: 有意差なし、セッション1回目もしくは試験食品摂取前と比較

 

研究②脳活動解析

【タイトル】

カカオポリフェノールが豊富なダークチョコレートの摂取は、認知課題中の効率的な脳活動に寄与する(Cacao Polyphenol-Rich Dark Chocolate Intake Contributes to Efficient Brain Activity during Cognitive Tasks: A Randomized, Single-Blinded, Crossover, and Dose-Comparison fMRI Study, Nutrients 2024, 16(1), 41; https://doi.org/10.3390/nu16010041

 

【方法】

 30歳以上50歳未満の日本人男女33名(最終的な有効性解析対象者は26名)を対象に、2群2期ランダム化クロスオーバー試験を実施しました。試験食品としてカカオポリフェノール濃度の異なる2種類のチョコレート【高カカオチョコレート(総ポリフェノール量 635 mg)、低カカオチョコレート(総ポリフェノール量 212 mg)】を各25 g摂取した後、機能的核磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging; fMRI)により、脳活動を連続的に計測しながら、かなり強い認知的要求(ここでは反応抑制と選択的注意を指す)を必要とするストループ課題のセッションを2回実施しました。また、試験食品摂取前とセッション2回目の後に自律神経機能と主観評価を測定し、疲労や集中力などの状態を評価しました。

 

【主な結果】

 機能的MRIで撮像した脳活動量解析により、認知課題遂行中の脳活動で有意な交互作用※7を認めた領域として、背外側前頭前野(L_46)および下頭頂小葉(L_PF)を見いだしました(図3)。これらは脳の注意機能(注意の抑制・配分)に関係する領域です。この脳領域の活動量(コントラスト推定値)の定量を行ったところ、低カカオチョコレートを摂取した時には、認知課題の遂行に必要な脳活動量が1回目よりも2回目で増大しました。一方、高カカオチョコレートを摂取した時には、認知課題の遂行に必要な脳活動量がセッション1回目よりも2回目で抑制されました(図4)。

 これは高カカオチョコレートの摂取が、課題遂行の際に必要とする脳の活動量を減少させ、脳の認知資源の効率的利用に寄与した(脳活動のためのエネルギー節約をした)可能性を示唆しています。

図3.認知課題遂行中の脳活動で有意な交互作用を認めた領域

 

 

図4.認知課題実施時のBOLD信号9変化の統計値 (コントラスト推定値 )

有効性解析対象者26名によるデータ

 

 今回、これら2つの研究の結果から高カカオチョコレートの摂取が、認知機能のパフォーマンスの維持に寄与し、認知課題の遂行における労力を低減させる、つまり脳の活動量を軽減することにより消費エネルギーを節約し、認知資源の利用効率を高められる可能性が見いだされました。

 

※4 2群2期ランダム化クロスオーバー試験:試験参加者をランダムに2群に分けて、それぞれの群に試験食品(高カカオチョコレートあるいは低カカオチョコレート)いずれかを摂取させ試験を行う。その後、一定の期間を空けてからもう一方の試験食品を摂取させ試験を行う方法。参加者には、どちらの試験食品が提供されているかは知らされない。

※5 本研究では、厚生労働省が推奨する1日の間食エネルギーの目安(200kcal程度)を踏まえ、これを超えないチョコレート摂取量として各25 gを設定した。

※6 ストループ課題:実行機能を計測するための認知課題で、2つの相反的な要素を含む刺激に対し、誤った指示に反応せず(反応抑制)、正しい選択肢に注意を向ける(選択的注意)課題。

※7 交互作用:2つの因子を組み合わせることによって初めて現れる相乗効果。本解析では、「2種類の試験食品のどちらを摂取したか」と「認知課題の前半か後半か」の2つの因子の組み合わせによる脳活動の差を見いだした。

※8 Cohen‘s d:2群の平均値の差の大きさを示す代表的な効果量(検出したい差の大きさを表す)

※9 BOLD(blood oxygen level dependent)信号:fMRIで計測される、脳の血中酸素濃度に依存して変化する脳活動の二次的な信号。脳神経の活動が増加する領域では酸素の消費量が高まるため、BOLD信号は増加する。

 

研究支援

本研究は、当社による研究費の支援によって行いました。

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