伐採跡地の再造林を加速し、国内林業の活性化へ~「林業×金融」で経済性を高めた森林経営を実現~

住友林業

2025年1月27日

住友林業株式会社

三井住友信託銀行株式会社

 住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区、以下住友林業)と三井住友信託銀行株式会社(取締役社長:大山 一也 本社:東京都千代田区、以下三井住友信託銀行)の合弁会社「日本森林アセット株式会社」(以下日本森林アセット)は再造林事業を加速します。日本森林アセットは2024年1月の設立以降、東北や九州の森林※1を中心に伐採跡地を取得し、各地で再造林を開始しています。三井住友信託銀行は2025年1月27日、出資比率を5%から40%へ引き上げました。住友林業の森林経営の知見を活かし、三井住友信託銀行が金融面で支援することで2030年までに目標3,000ha の再造林を目指します。J-クレジット※2を活用しながら、将来的には森林ファンドの組成も視野に経済性の高い持続可能な森林経営を実現します。

 

■概要

 日本森林アセットは森林を売却したい個人や法人から伐採跡地を取得します。伐採跡地で再造林が計画されていない森林を日本森林アセットが取得して一定の森林面積を確保し、循環型林業に取り組みます。住友林業が持つ森林経営の知見を活用し、再造林で取り戻した豊かな緑を長期間にわたって保有・管理します。

 住友林業グループの他事業とのシナジー創出に向け、木材・建材の製造工場、木質バイオマス発電所があるエリアや今後事業進出予定の周辺地域で取得を進め、保有面積を継続的に拡大します。創出される炭素クレジットや木材生産の収益を見込み、J-クレジット制度で複数の削減活動をとりまとめて登録できるプログラム型※3を活用して申請・創出にかかるコストを削減。経済性の高い森林経営を目指します。

 

 


※1. 北海道、青森、岩手、宮城、福島、大分、宮崎、鹿児島の一部地域

※2. 国が認証する制度に基づき、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2等の排出削減量や適切な森林管理によるCO2等の吸収量をクレジット化したもの

※3. 2022年8月に新設された「再造林活動」という方法論。小規模な削減・吸収活動をまとめて一つのプロジェクトとし、随時追加することができるのがプログラム型の特徴。

 

 

■背景・課題

 日本では長らく続いた木材価格の低迷から森林所有者の経営意欲が低下。近年では毎年約9万haの森林が主伐されているのに対して再造林は約3万haに留まり※4、伐採後の再造林率は30~40%で推移しています※5。植林前の地拵え(じごしらえ)作業、苗木の運搬と植え付け、下刈り作業などを含む再造林初期費用の負担が大きく、伐採後の再造林が進まない要因になっています。林業従事者も減少し管理不十分な森林が増えた結果、経済的・環境的価値を十分に発揮できない森林が増加しています。長期的な戦略をもつ企業や組織が持続的に森林を保有・管理することが重要です。

 森林の経済的・環境的価値を発揮するにはJ-クレジット制度の活用が有効です。森林由来のJ-クレジットは気候変動対策だけでなく水源涵養・土砂災害の防止・生物多様性の保全などにも貢献する公益的価値の高いクレジットですが、その創出量は再エネ・省エネ由来の削減系クレジットの約10%に留まっています。さらに創出された森林クレジットのうち、実際にオフセットなどの目的で償却された量についても削減系クレジットの5%程度※6となっており、創出量・流通量ともに少ないことが課題です。

 

■今後の展開

 三井住友信託銀行が持つ信託スキーム※7やネットワークも活用して森林取得、再造林、J-クレジット創出という一連の事業モデルを早期に確立します。住友林業グループが組成し三井住友信託銀行が参画する米国の森林ファンド※8をモデルに、森林の環境的価値を評価する企業等の投資資金を活用した日本の森林資産のファンド化も検討していきます。

 

 

※4. 出典:林野庁/森林・林業統計要覧2024(https://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/youran.html)

※5. 出典:令和5年版 森林・林業白書(林野庁編) 第1部 第1章 第2節 森林整備の動向(1):林野庁 (maff.go.jp)

※6. J-クレジット制度事務局HP統計資料 J-クレジットの活用(無効化・償却量)の状況

出典:J-クレジット制度ホームページ(https://japancredit.go.jp/data/pdf/credit_002.pdf)

※7. 受託者として森林所有者から森林の信託を受け、名義上所有者の立場となった三井住友信託銀行に対し、住友林業が林業の専門家として森林管理手法や施業の効率化、木材の販売促進等について経営サポートするスキーム。

※8. 2023年7月10日「日本企業10社 住友林業グループ組成の森林ファンドへ共同出資~600億円規模、脱炭素社会の実現に貢献~」(https://sfc.jp/information/news/2023/2023-07-10.html

 

 

 住友林業グループは森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」で住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。長期ビジョンで掲げた「循環型森林ビジネスの加速」に向け、森林ファンド組成や森林面積拡大を進めます。

 

 三井住友トラストグループは「託された未来をひらく」をパーパスとして掲げ、これまでに複数の森林ファンドへの出資や森林信託の開発など、信託ならではのSDGsへの取り組みを行ってきました。これからも資産運用・資産管理のノウハウや専業信託銀行グループのネットワークを活用して社会課題の解決に貢献する活動を展開し、「資金・資産・資本の好循環」の実現を目指していきます。

 

 

■日本森林アセット株式会社

本 社: 東京都新宿区西新宿1-23-7(新宿ファーストウェスト5階)

代表者: 石村 藤夫

設 立: 2024年1月5日

事業概要: 森林の経営管理、再造林事業

出資比率: 住友林業(60.0%)、三井住友信託銀行(40.0%)

H P:https://www.jfa.co.jp/

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