大気中の二酸化炭素を大量回収可能にする革新的低エネルギーDACシステムの開発プロジェクトを産学連携チームで開始

(概要)

東京都立大学、株式会社大気社、株式会社パンタレイ、長岡技術科学大学、小島プレス工業株式会社、九州大学からなる研究グループが、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(以下「CSTI」という。)が決定し国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下「NEDO」という。)が公募する、「ムーンショット型研究開発事業(※1)/2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現(目標4)」に2024年12月16日付で採択され、研究を開始しました。

 

(詳細)

研究課題名

パッシブDAC技術の研究開発

研究代表者名

東京都立大学 理学研究科 化学専攻 教授 山添誠司

事業実施期間

2024年度~2029年度

※2027年度に中間審査あり

事業実施機関

東京都立大学、株式会社大気社、長岡技術科学大学、株式会社パンタレイ、小島プレス工業株式会社、九州大学

事業総額

約19億円

 

(研究概要)

本プロジェクトでは、大気中の二酸化炭素を炭素源とした資源循環社会の実現とカーボンネガティブ達成のため、Direct Air Capture(DAC)技術(※2)でこれまでネックとなっていた送風エネルギーを必要としない、自然風や走行風を利用したパッシブDACによる大量の二酸化炭素を回収可能な低エネルギーシステムを新たに構築・実証します。本研究を達成するために以下の3つの技術を開発します。

 

 

1.固定型パッシブDACシステムの開発

 全方向集風技術とアミンが示す液固相分離現象による高速CO2吸収技術(※3)を融合することで、送風コストゼロのパッシブDACシステムを開発するとともに、固体カルバミン酸として回収された二酸化炭素の貯蓄・輸送を可能にします。

 

2.移動型パッシブDACシステムの確立

 トラックや船舶などの走行風を利用し、無動力で大気中の二酸化炭素を吸収・回収する技術を確立します。

 

3.マイクロ波によるCO2脱離回収システムの開発

 パッシブDACより生成した固体カルバミン酸をエネルギー効率の高いマイクロ波で直接加熱することにより二酸化炭素の脱離・回収を行うシステムを開発します。二酸化炭素を脱離して再生したアミン吸収剤は再利用します。

 

・本研究により、2029年までに年間1.2トンの二酸化炭素を空気から回収し、エネルギー消費を4.5 GJ/tCO2以下に抑えるパッシブDACシステムを開発します。将来的には、回収した二酸化炭素を有用な炭化水素(e-fuelや化成品)に変換する技術と組み合わせ、2050年までに1.5億トンの二酸化炭素を回収し、0.5億トンを貯蔵、1.0億トンを資源化することで、カーボンネガティブな社会を実現していきます。

 

 

関係HP

・採択課題:https://www.nedo.go.jp/koubo/SM3_100001_00066.html

・ムーンショット:https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100161.html

・山添研究室:https://yamazoelab.cpark.tmu.ac.jp/yamazoelab/ja/index.html

 

(用語解説)

※1 ムーンショット型研究開発事業

我が国発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進するものとして創設されました。NEDOは、ムーンショット型研究開発事業に関する業務を行う研究推進法人として、CSTIが決定したムーンショット目標と、経済産業省が策定した研究開発構想を踏まえ、ムーンショット目標4「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現」を達成するために、挑戦的な研究開発を実施しています。今回の公募では、2024年度、事業の後半を迎えるにあたり、「2050年までの地球環境再生に向けた持続可能な資源循環」の確実な実現に向け、地球温暖化問題の要因となる大気中の二酸化炭素を工学プロセス又は自然プロセスの人為的加速により効率的に回収・吸収する技術の強化、またその回収・吸収された二酸化炭素を有益な資源として人為的に利活用するための資源転換技術、無害化技術を社会実装まで見据え充足させることを目的に研究開発をマネジメントするプロジェクトマネージャー及び研究開発実施者を公募・選定し、研究開発を実施するものです。

 

※2 Direct Air Capture(DAC)技術

大気中の二酸化炭素を直接吸収・除去する技術のことを指します。地球温暖化の原因物質とされる二酸化炭素は大気中に低濃度で存在しますが、DAC術技術により、低濃度の二酸化炭素を高濃度の二酸化炭素として回収することができます。回収した二酸化炭素は地中に貯蔵したり、二酸化炭素から直接、樹脂や溶媒、医薬品の原料として有用な化学品である尿素誘導体を合成(カルバミンに固定)することで二酸化炭素の排出量を削減することができます。山添教授のグループはこれまでに相分離を利用することで新たなDAC技術を開発してきた実績を持っています。

(S. Kikkawa, et al.“Direct Air Capture of CO2 Using Liquid Amine–Solid Carbamic Acid Phase-Separation System Using Diamines Bearing Aminocyclohexyl Group”, ACS Environmental Au, 2, 354-362 (2022), F. Cao, et al., “Low-Temperature Desorption of CO2 from Carbamic Acid for CO2 Condensation by Direct Air Capture”, ACS Omega, 9, 40075 (2024)).

 

※3 一部のアミンが示す液固相分離現象による高速CO2吸収技術

液体のアミンが二酸化炭素を捕捉する際に固体のカルバミン酸を形成する相分離現象を用いることで、二酸化炭素をより速く捕捉し効率的に、かつ高速で回収します。

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