日本盲導犬協会が社会の「盲導犬や視覚障害に対する認識」を調査
~視覚障害者への声かけ、半数以上がためらい~

公益財団法人日本盲導犬協会(理事長:金髙雅仁)は、今年8月、市民を対象とした『盲導犬および視覚障害に関する意識調査』を実施しました。この全国規模の意識調査は2023年以来2回目となり、視覚障害や盲導犬に対するイメージ、サポートへの意識、身体障害者補助犬法の認知度など、多岐にわたるデータが得られました。その中で、視覚障害者への声かけに対して抵抗感を持つ人が半数を超えているという結果が明らかになり、その理由として「声をかけることで迷惑になるかもしれない」という不安が多く挙げられました。
この不安に答えるため、盲導犬ユーザーにインタビューを実施したところ、彼らの声から「声をかけてもらえることは迷惑ではなく、むしろ必要である」ということが分かり、声をかけることの重要性が改めて明らかになりました。本リリースでは、アンケート調査で得られた結果の一部と、盲導犬ユーザーのリアルな声を通じて、「声をかけることの意義」を考えます。
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【調査概要】
・調 査 名:盲導犬および視覚障害に関する意識調査
・ 目 的 :一般市民の持つ盲導犬や視覚障害に対する知識、イメージ、法律の認知度、および盲導犬同伴での受け入れに対するイメージの把握
・調査期間:2025年8月18日~8月20日
・ 対 象 : 16歳~69歳の男女1,200人
・ 地 域 : 47都道府県
・ 方 法 :インターネット調査
・質問内容:アンケート45項目
①視覚障害に関する知識やイメージ ②盲導犬に関する知識やイメージ
③盲導犬同伴での受け入れに関するイメージ、身体障害者補助犬法に関する認知度
・調査機関:株式会社ネオマーケティング
※経年変化を調査するため、今後も定期的なアンケートの実施を計画しています。
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1.視覚障害者への声かけ、行動を妨げる心理的な壁(調査結果の概要)
今回の調査では、視覚障害者に対する認識などについての設問を設けた結果、サポート意識と実際の行動の間に大きなギャップがあることが明らかになりました。
「あなたは困っている視覚障害者に出会ったらサポートしたいと思いますか(Q19)」という質問に対し、「とてもそう思う」「ややそう思う」と回答した人は全体の75.8%にのぼりました(図1)。

「視覚障害者が困っている場面に遭遇したことはありますか(Q14)」という質問では、「遭遇したことがある」と回答した人は34.8%でした(図2)。具体的な困っている場面としては、「青信号になっても、動き始めるのに困っている様子だった」「点字ブロックに物が置かれていた」「バスに乗る際に、行き先案内のアナウンスがないため、どのバスに乗れば良いのか分からず困惑していた」などの回答がありました。

しかし、「視覚障害者へサポートのために声をかけたことがありますか(Q11)」という質問では、「声をかけたことがある」と回答した人はわずか15.1%でした(図3)。

そこで「視覚障害者に声をかけることに抵抗がありますか(Q17)」と質問したところ、「とても抵抗がある」「やや抵抗がある」と回答した人が55.5%にのぼり(図4)、その理由としては、「声のかけ方や支援方法が分からない」「支援を求めているのか分からない」「声をかけることで迷惑になるかもしれない」という回答が多く挙げられました。

これらの結果から、視覚障害者へのサポート意識は高いものの、「声をかける」という行動に移す際に心理的な壁を感じている人が一定数いるということが明らかになりました。では、実際に声をかけることは迷惑なのでしょうか。こうした心理的な壁を取り除くためには、視覚障害者自身の声を聞くことが重要です。そこで、盲導犬ユーザーにインタビューを実施し、声をかけることの意義や、適切な声かけの方法について深掘りすることで、心理的な壁を取り除くための手がかりが見えてきました。
2.盲導犬ユーザーへインタビュー:声をかけることは迷惑になるのか?
調査の結果を受け、盲導犬ユーザーにインタビューを実施しました。彼らの声から、視覚障害者への声がけがどれほど重要であるかが明らかになりました。
【 左:若山さん&盲導犬ダンデ、右:石川さん&盲導犬デュオ 】
これまでに声をかけてもらったことはありますか? また、声をかけてもらった時にどんな気持ちになりましたか?
●若山さん
歩いていると日常的に「何かお手伝いしましょうか」と声をかけてくださる方が必ずいらっしゃいます。以前、慣れていない道を歩いていたときに「危ないですよ」と声をかけられ、いつの間にか車道を歩いていたことに気が付きました。声をかけてもらえたことで無事に歩道に戻ることができ、視覚障害者にとって、こうした声かけは安全を守るための大きな支えとなっています。また、郵便局へ行こうとしていたときに声をかけてくださった方に道を尋ねると、「一緒に行きましょうか」と寄り添って歩いてくださったこともあり、安全に歩くことができただけでなく、相手の優しさや温かさを感じることができました。
●石川さん
初めての場所や久しぶりに訪れる場所では道に迷うことがありますし、横断歩道では信号の色や車の動きを確認することが難しいため、渡るのを躊躇してしまうこともあります。そんなときに声をかけてもらえることで、周囲の情報や目的地までの行き方をお尋ねすることができますし、「赤だよ、青だよ」、「今車が止まっているから渡れますよ」と声をかけてもらえるだけで、安全に横断歩道を渡ることができます。私は弱視のため中心部分しか見えず、周囲の方々は私に気付いているのかと孤独を感じることがありますが、『ちゃんと見守ってくれている人がいる』という安心感に変わり、とても心強いです。
今回の調査で「盲導犬がいたとしても、盲導犬ユーザーへのサポートは必要だと思いますか(Q29)」という質問に対し、「必要だと思う」「やや必要だと思う」と回答した人は全体の80.6%にのぼりました(図5)。

盲導犬は視覚障害者の安全な歩行をサポートしていますが、道案内や信号の色の判断など、盲導犬が側にいるだけでは解決できない場面も多く存在し、視覚障害者へ声をかけることが、歩行時の安全性の向上に大きく寄与していることがわかります。
しかし、実際にどのように声をかければよいのか迷う人も多いのが現状です。そこで、「適切な声かけ方法」について具体的に伺いました。
声をかける際、どのようなことに気をつけるといいですか? また、声をかけることに迷っている人にどのようなメッセージを伝えたいですか?
●若山さん
「大丈夫ですか」と聞かれると、つい困っていても『大丈夫です』と答えてしまうことがあります。「何かお手伝いしましょうか」や「盲導犬をお連れの方、何かお困りですか」と具体的に声をかけてもらえると、とても助かります。
声をかけづらいなと思ったときは、独り言でもいいので「困っているのかな?」と私たちに聞こえるように声に出してもらえれば、『困っています!』と返事をするきっかけになります。声をかけることに迷いや不安を感じる方もいるかもしれませんが、遠慮せず声をかけてくれると嬉しいです。
●石川さん
困っていないときにでも「こんにちは」や「何か困っていることはないですか」と声をかけてもらえると、本当に嬉しいです。たとえそのときに困っていなくても、『今は大丈夫です、ありがとうございます。また見かけたらお願いします』とお伝えするようにしています。まずは気軽に声をかけてください。
【まとめ】
今回の調査結果と盲導犬ユーザーの声を通じて、「声をかけることの意義」が明らかになりました。声をかけることは、視覚障害者にとって単なるサポートではなく、安心感や社会とのつながりを生む大切な行動です。また、声をかける側にとっても、視覚障害者との相互理解を深め、社会の一員として役割を実感するきっかけとなります。
「お手伝いしましょうか?」という一言が、視覚障害者にとってどれほど大きな意味を持つのか。今回の調査とインタビューを通じて、その重要性が明らかになりました。私たち一人ひとりがこの「声をかけることの意義」を理解し、行動に移すことで、視覚障害者が安心して暮らせる社会を共に作り上げていけるのではないでしょうか。
日本盲導犬協会の公式YouTubeチャンネルでは、視覚障害者が安心して歩ける社会を目指し、盲導犬ユーザーへの声かけや誘導方法を解説する動画を公開しています。この動画では、「どのように声をかけたら良いのか」や「サポート時の誘導方法」に関する疑問を解決しています。
【かいけつ動画 盲導犬ユーザーへの声かけ】
https://youtu.be/wbkkuDBPG0A?si=l_DKOCbhUF4EpoED
【かいけつ動画 盲導犬ユーザーの誘導方法】
https://youtu.be/MSHKJQ_slS8?si=_e945lB-X5XCvXPP
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 公益財団法人日本盲導犬協会
- 所在地 東京都
- 業種 各種団体
- URL https://www.moudouken.net/
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