ハルシネーション
はるしねーしょん
生成AIが、事実と異なる情報や、根拠によって裏付けられていない情報をもっともらしい文章で作り出してしまう現象を「ハルシネーション」と呼びます。ChatGPTやAI Overviewsなど、AIの回答が意思決定の入口として使われ始めたことで、自社に関する誤情報が事実のように広まるリスクは、企業広報の実務上の論点になっています。
ハルシネーションとは
生成AIの土台となる大規模言語モデル(LLM)は、入力された文脈に続けて「統計的にもっともらしい語」を確率的に予測し、文章をつなげる仕組みで動いています。人間のように事実を常にデータベースなどで確認して答えを組み立てているわけではなく、学習データのパターンから「次に来そうな言葉」を選びながら文章を生成します。そのため、学習データに存在しない情報や、古い・曖昧な対象を問われた場合だけでなく、学習・参照情報の不足や誤り、質問の曖昧さなどによって、それらしい文章を生成することがあります。この結果が、事実と異なる情報の生成、つまりハルシネーションを生み出します。
従来の「誤報」は、記者や編集の確認不足といった人的なミスから生じます。一方でハルシネーションは、モデルが確率的に文章を生成する特性や、学習・参照情報の状態などに起因し、誰かが意図的に誤りを見逃したり嘘を発信したりしたわけではありません。つまりハルシネーションとは、生成AIの仕組みや学習・運用方法に起因して発生しうる、「情報が足りない部分を、もっともらしい推測で埋めてしまう」現象です。
ハルシネーション・フェイクニュース・誤報の違い
| 概念 | 発生源 | 主な原因 | 広報が備えること |
| ハルシネーション | 生成AI | モデルの確率的な生成特性、学習・参照情報の不足や誤り、質問の曖昧さなど | 一次情報・第三者言及を増やし、AIや利用者が確認できる情報源を充実させる |
| フェイクニュース | 発信者(人) | 意図的な虚偽情報の作成・拡散 | 事実確認の発信、迅速な訂正情報の公開 |
| 誤報 | 報道機関・企業・個人など | 取材・確認不足による人的ミス | 訂正依頼、正確な一次情報の提供 |
発生源が異なれば打ち手も異なります。フェイクニュースは事実を発信して打ち消す、誤報は媒体への訂正依頼、というように個別に是正できますが、ハルシネーションは特定の記事を訂正しても解決しません。ハルシネーションには複数の原因がありますが、企業に関する公開情報が少ない、古い、または内容が一致していない場合には、生成AIが正確な情報を取得・判断しにくくなる可能性があります。対策は、発信側が正しい情報を継続的に増やすことに向かいます。
情報の少ない企業ほどハルシネーションは起きやすい
生成AIは、手がかりにできる情報が少ない企業・商品ほど、既存の似た事例やパターンから推測して回答を組み立てる傾向があります。業界によってAIの回答への登場頻度には最大10倍規模の差があるとされ、露出の少ない業界・企業ほど、AIが参照できる材料が乏しい状態にあります。詳しくはAIに引用されるチャンスは業界で10倍違う(汐留PR塾)で解説されています。材料が乏しい対象を問われた場合、AIは「情報がない」と回答することもありますが、不確かな情報からそれらしい答えを生成する場合もあります。そのため、露出の少ない企業ほど、自社に関する正確な回答が生成されにくくなる可能性があります。
企業ができるハルシネーション対策
ハルシネーションはモデル改善で減る部分もありますが、進展を待つだけでは、その間に誤情報が広まるリスクを止められません。企業側で取れる対策の一つは、AIが参照できる正確な一次情報と第三者の言及を、意図的に増やすことです。生成AIの回答は、報道機関やニュースサイトなど信頼できる第三者メディア(アーンドメディア)を引用する傾向があるとされ、信頼性の高いドメインで自社の一次情報が繰り返し言及される状態が、生成AIや利用者が情報を確認できる経路を増やします。これはハルシネーションの発生を完全に防ぐものではありませんが、AIが自社について正確な情報にたどり着きやすい環境を整える取り組みの一つです。
詳しくは生成AIの回答はアーンドメディアを引用(汐留PR塾)で解説されています。
AIの回答は購買行動に直結する
生成AIで調べたり、おすすめされたりした商品・サービスを実際に購入・利用した経験がある人は61.3%にのぼります(エクスクリエ「日常生活・買い物における生成AI活用実態調査」/2026年4月、商品・サービスの買い物において生成AIを活用したことがある全国15〜69歳・n=832)。AIの回答が誤情報を含んでいれば、この購買や意思決定の起点自体が、事実と異なる内容に基づくことになります。ハルシネーションによる誤情報は、印象の問題にとどまらず、購買や意思決定に直接影響しうるリスクをはらみます。
AIが確認できる正確な情報源を増やす
ハルシネーションは個別に訂正できても、発生そのものを完全に防ぐことは困難です。企業側でできるのは、AIが参照する情報源に、正確な一次情報を公式情報や信頼できる第三者の言及として積み上げておくことです。
共同通信PRワイヤーは、提携メディア69サイトのうち51サイトへ、配信した原文を全件そのまま転載します。転載先の約半数は報道機関です。また、転載を除いた記事化率は約7割※にのぼります。プレスリリースを報道機関のドメインへ原文のまま届けることは、AIが手がかりにする情報源の空白を埋め、生成AIや利用者が参照・確認できる情報源を増やすことにつながります。ただし、原文転載や第三者言及が増えても、生成AIが必ず正確な回答をするわけではありません。拡散の量を競うのではなく、正確で最新の一次情報を、信頼できる場所で継続的に発信することが、ハルシネーションという情報リスクへの備えになります。
※記事化率は、2021年12月に国内メディアへ配信した532本を2022年2月まで追跡した数値です。紙媒体・WEBメディアが対象で、提携メディアへの転載は除外しています。
