市販品試薬からわずか2工程、らせん状低分子有機化合物の合成法を開発

早稲田大学

早大の柴田高範教授の研究グループは、市販の試薬からわずか2工程により、らせん構造を有する含窒素七環式ヘリセンの合成に成功しました。そして4つの窒素原子を有する本化合物は、極めて高い蛍光発光特性と優れた円偏光発光特性の両立を達成しました。

2017-07-12

早稲田大学

市販品試薬からわずか2工程、らせん状低分子有機化合物の合成法を開発

高輝度液晶ディスプレイ等、高度な光情報処理技術への応用に期待

早稲田大学理工学術院の柴田高範(しばたたかのり)教授、阿南工業高等専門学校の大谷卓(おおたにたかし)講師、東京理科大学理学部の河合英敏(かわいひでとし)准教授らの研究グループは、市販の試薬から僅か2工程で、高い蛍光量子収率*1と円偏光発光異方性因子(g値)*2を併せ持つ低分子有機化合物の合成法を開発しました。

現在、キラルな光である円偏光(CPL)が、高輝度液晶ディスプレイの光源や新たな光情報通信の基盤技術として注目されており、円偏光発光材料*3としての低分子有機化合物の開発が強く求められています。中でも、ヘリセン*4と呼ばれるベンゼン環などの芳香環がらせん状に連結された化合物に関する研究が活発に行われています。しかしこれまでの七環式以上のヘリセンの合成法では、市販の試薬から多くの工程数が必要であるため、大量合成が困難でした。さらに、ヘリセンは有機化合物の中では比較的高い円偏光発光異方性因子(g値)を示しますが、一般的に発光特性(蛍光量子収率)が低いことが、ヘリセンを光学材料として応用する上での大きな課題となっていました。

今回、本研究グループは市販品から僅か2工程で含窒素七環式ヘリセン類の合成を達成し、熱安定性が高い構造であること、かつそれらが高い蛍光量子収率と円偏光発光異方性因子を両立し得る化合物であることを見いだしました。本合成手法は、さらに環数の多い高次のヘリセンや、環同士の連結形式の異なるヘリセンの合成にも適用が可能です。今後、種々の類似の化合物を合成することにより、さらに円偏光発光特性の優れた材料となるヘリセンを創製する予定です。将来的には、高輝度液晶ディスプレイ用の偏光光源、3次元ディスプレイ、セキュリティーペイントなどの高度な光情報処理技術を実現する機能性有機化合物の開発が大きく期待されます。

本成果はWiley-VCH社発行の化学系学術誌Angewandte Chemie International Editionに2017年3月27日に掲載されました。その後Thieme 社が発行している国際的学術抄録誌Synfactsの6月号で紹介され、さらに“材料と非天然物合成”分野の最注目論文“Synfacts of the month”に選出されました。

ポイント

市販の試薬から僅か2工程で光学材料への応用が期待される含窒素七環式ヘリセン化合物を合成。

このヘリセン化合物は、円偏光発光材料としての応用に必要な高い蛍光量子収率と円偏光発光異方性因子を併せ持つ。

早稲田大学ウェブページ

https://www.waseda.jp/top/news/52473

<用語解説>

*1)蛍光量子収率:吸収した励起光の光子数に対し、蛍光として放出された光子数の割合。この値が1.0に近い程、蛍光として発光される効率が良いことを示す。

*2) 円偏光発光異方性因子:円偏光発光の程度を表す値。この値が大きいほど、優れた円偏光発光材料であることを示す。

*3) 円偏光発光材料:光の波の振動面がらせん状に回転しながら進む光である”円偏光”を発光する特性をもつ材料。

*4) ヘリセン:ベンゼン環などの芳香環がらせん状に連結された化合物。ベンゼン環は平面構造だが、多くのベンゼン環がつながると、その両端でベンゼン環同士が“ぶつかり”(立体障害)を避けるため、上下にずれて三次元のらせん構造をとる。その結果、右巻き(P体)と左巻き(M体)という鏡像関係にある化合物が生じる。

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プレスリリース添付画像

今回開発した窒素原子を4つ有する七環式ヘリセンの2段階合成法

X線結晶解析により決定した固体構造、ならびに光学的特性

歴史的に有名な六環式ヘリセン化合物である右巻きの(P)-[6]ヘリセンと左巻きの(M)-[6]ヘリセン

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