世界記録、標準外径3モード光ファイバで毎秒159テラビット、1045km達成
情報通信研究機構(NICT)と株式会社フジクラは、既存設備でケーブル化可能な標準外径3モード伝搬の広帯域波長多重伝送が可能な光ファイバを開発し、モードにより光信号の到着時間が異なる現状を克服、348波長により大容量と長距離伝送を両立し、毎秒159テラビットで1045kmの伝送実験に成功しました。
2018年4月5日
株式会社フジクラ
世界記録、標準外径3モード光ファイバで毎秒159テラビット、1045km達成
【ポイント】
■ 既存設備でケーブル化可能な標準外径3モードの広帯域波長多重伝送可能な光ファイバを開発
■ モードにより光信号の到着時間が異なる現状を克服、348波長により大容量と長距離伝送を両立
■ 1000kmを超える大容量幹線系の通信で、標準外径マルチモードファイバの利用可能性を実証
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)ネットワークシステム研究所と株式会社フジクラ(フジクラ、取締役社長: 伊藤 雅彦)は、既存設備でケーブル化が可能な標準外径(0.125mm)、3モード伝搬の広帯域波長多重伝送が可能な光ファイバを開発し、モードにより光信号の到着時間が異なるマルチモードファイバの問題点である大容量と長距離伝送を同時に満たすことが難しい現状を克服し、毎秒159テラビットで1045kmの伝送実験に成功しました。
この結果は、伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算すると、毎秒166ペタビット×kmとなり、標準外径光ファイバにおいてのこれまでの世界記録の約2倍になります。今回、伝送容量を確保するため348波長全てに対して16QAMという実用性の高い高密度な多値変調光信号をモード多重し、MIMO処理を行い、伝送距離を1000km超まで伸ばし、大容量基幹系の通信で利用可能であることを示しました。
なお、本論文は、第41回光ファイバ通信国際会議(OFC2018)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択されました。
【背景】
増大し続ける通信トラヒックに対応するため、従来の光ファイバの限界を超える新型光ファイバと、それを用いた大規模光伝送の研究が世界中で盛んに行われています。主に研究されている新型光ファイバは、光ファイバに複数の通り道(コア)を配置したマルチコアファイバと、コア径を大きくして一つのコアで複数の伝搬モードに対応したマルチモードファイバです。これまで、マルチコアファイバでは、大容量かつ長距離の伝送実験の成功が報告されていますが、モードにより光信号の到着時間が異なるマルチモードファイバでは、大容量化と長距離化を同時に満たす伝送は難しいと考えられていました。
【今回の成果】
今回NICTは、フジクラの開発した標準外径光ファイバを用いてマルチモードによる伝送システムを構築し、毎秒159テラビット光信号の1045km伝送に成功しました(図1)。伝送能力の一般的な指標である伝送容量と距離の積に換算し、毎秒166ペタビット×kmとなり、これまでの世界記録の約2倍になります。
本伝送システムは、以下の要素技術から構成されます。
・ 標準外径0.125mmの3モード光ファイバ
・ 348波長一括光コム光源
・ 1パルス4ビット相当の16QAM多値変調技術
・ ファイバ中の伝搬速度が異なるマルチモード光信号の分離技術(MIMO処理)
今回、標準外径3モードの光ファイバを用いて1000km超の伝送に成功しました。標準外径の光ファイバは、実際に敷設を行うケーブル化の際に、既存の設備を流用することが可能で、早期実用化が期待できます。また、NICTが産学と連携で研究開発を進めているマルチコア技術と組み合わせると、将来的に究極的な大容量伝送も可能になります。
図1 伝送実験の写真
【今後の展望】
今後、ますます増加していくビッグデータや5Gサービスなどのトラヒックをスムーズに収容可能な未来の光通信インフラ基盤技術の研究開発に取り組んでいきます。
なお、本実験の結果は、米国サンディエゴで開催された光ファイバ通信関係最大の国際会議の一つである第41回光ファイバ通信国際会議(OFC2018、3月11日(日)~3月15日(木))で非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択され、現地時間3月15日(木)に発表しました。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 国立研究開発法人情報通信研究機構 広報部
- 所在地 東京都
- 業種 その他情報・通信業
- URL https://www.nict.go.jp/
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