直径0.16mmの4コア・3モード光ファイバで毎秒1.2ペタビット伝送成功 ~新型光ファイバ早期実用化に前進~

情報通信研究機構(NICT)と株式会社フジクラは、北海道大学、Macquarie大学MQと共同で、直径0.16mmの4コア・3モードの光ファイバと、コアとモードを一括で多重/分離するカプラを開発し、368波長全て256QAMという高密度な多値変調を行い、毎秒1.2ペタビットの伝送実験に成功しました。

2018年10月11日

直径0.16mmの4コア・3モード光ファイバで毎秒1.2ペタビット伝送成功

~超大容量の新型光ファイバ早期実用化に前進~

【ポイント】

■ 既存光ファイバとほぼ同じサイズ、直径0.16mmの4コア・3モード光ファイバを開発

■ コアとモードを一括で多重/分離可能なカプラを導入

■ 毎秒1ペタビットを超える超大容量光ファイバの実用化に前進

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)ネットワークシステム研究所と株式会社フジクラは、国立大学法人北海道大学、オーストラリアMacquarie大学MQ Photonics Research Centre(MQ)と共同で、直径0.16mmの4コア・3モードの光ファイバと、コアとモードを一括で多重/分離するカプラを開発し、368波長全て256QAMという非常に高密度な多値変調を行い、毎秒1.2ペタビットの伝送実験に成功しました。

 これまでの毎秒ペタビットを超える大容量光伝送の研究では、12コア以上で直径が0.21mmを超えた光ファイバを用いていました。今回、世界で初めて曲げや引っ張りに強い直径0.2mm以下の光ファイバで毎秒1ペタビットを超える伝送に成功しました。また、既存光ファイバとほぼ同サイズのため、ケーブル化や既存ファイバとの接続が容易であり、早期実用化に向けて大きく前進しました。

 なお、本論文は、第44回欧州光通信国際会議(ECOC2018)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択されました。

【背景】

 増大し続ける通信トラヒックに対応するため、従来の光ファイバの限界を超える新型光ファイバと、それを用いた大規模光伝送の研究が世界中で盛んに行われています。主な新型光ファイバは、光ファイバに複数の通り道(コア)を配置したマルチコアファイバと、一つのコアで複数の伝搬モードに対応したマルチモードファイバです。

 これまで、マルチコアファイバでは、大容量かつ長距離の伝送実験の成功が報告されていますが、光ファイバが太くなるため、曲げや引っ張りの機械的ストレスに弱く、製造性や敷設作業による破断確率の増大、接続施工の難易度などが課題でした。

【今回の成果】

 今回、北大が設計、フジクラが開発した4コア・3モード光ファイバと(図1)、MQが開発したカプラを用いた伝送システムをNICTが構築、世界で初めて直径0.16mmの光ファイバで毎秒1.2ペタビット光信号の伝送に成功しました。

図1  4コア・3モード光ファイバと他の光ファイバとの比較

図1  4コア・3モード光ファイバと他の光ファイバとの比較

本伝送システムは、以下の要素技術から構成されます。

・ 直径0.16mmの4コア・3モード光ファイバ

・ 4コア・3モードを一括で多重/分離するカプラ

・ 368波長一括光コム光源

・ 1パルス8ビット相当の256QAM多値変調技術

 本光ファイバは、既存光ファイバとほぼ同サイズのため、ケーブル化や敷設作業が容易になるなど従来の設備を流用することが可能で、早期実用化が期待できます。また、既存光ファイバに比べて10倍以上の高密度な情報伝送能力を持ち、さらに、空間チャネル数が4の倍数であることからデータセンターなどで使われている入出力方式に親和性が高く、データセンター内外の高密度光配線への適用も期待されます。

【今後の展望】

 ビッグデータや5Gサービスなど、今後ますます増加していくトラヒックをスムーズに収容可能な次世代の光通信インフラ基盤技術の確立に向けて、実用化加速の要となる革新的技術の研究開発や、産学官連携による国際標準化への取組を強化していきます。

 なお、本実験の結果は、イタリア ローマで開催された光ファイバ通信関係最大の国際会議の一つである第44回欧州光通信国際会議(ECOC2018、9月23日(日)~9月27日(木))で非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Post Deadline Paper)として採択され、現地時間9月27日(木)に発表しました。

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図1  4コア・3モード光ファイバと他の光ファイバとの比較

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