ベイン・アンド・カンパニー 第10回「Global Private Equity Annual Report」
2019年2月27日
ベイン・アンド・カンパニー 第10回
「Global Private Equity Annual Report」
プライベートエクイティによる2018年バイアウト総額は10%増の5,820億ドルとなり、業界史上最高の累積5年連続成長を達成。業績上位のファンドの資金活用法を分析。
2019年2月27日 – 2018年もプライベートエクイティ(PE)ファンドの投資額は大幅に増え、公表されているバイアウトのディール総額は5年累積で約2兆5,000億ドルとなり、PE業界史上最高の累積5年連続成長を達成しました。リミテッド・パートナー(LP)は市場に多額の資金を注入し続けており、ジェネラル・パートナー(GP)も記録的な額の資金を投下しました。GPは、楽観的すぎるとも思われる期待をもって、当初の想定以上の投資を行い、好業績を収めたGPは買収ターゲットを特定する能力を高め、ディリジェンスの精度を高める一方で、最悪の事態に備える計画を立てて臨んでいました。
■ 数字で振り返る2018年のプライベートエクイティ
競争の激化と資産価格の上昇により、ディール件数は引き続き抑えられ、世界全体で行われたバイアウト件数は13%減の2,936件であったものの、総額は10%増の5,820億ドル(追加買収も含める)に達し、業界史上最強の累積5年連続成長を達成しました。
2018年は、熾烈な競争とマルチプルの高さから新規案件の発掘は難航したものの、イグジットには絶好のチャンスとなり1,146件、総額で3,780億ドルとなり、2017年と同水準を記録しました。
PEのドライ・パウダー(投資待機資金)は2012年以降上昇傾向にあり、PEファンドの種類を問わず2018年度末時点で2兆ドルと記録的な水準に達しました。(バイアウト型のみでも6,950億ドルを達成)。余剰資金の増加で、PEファームには新規投資案件発掘のプレッシャーがかかっていますが、バイアウトを実施するPEファームのドライ・パウダーのうち、67%は過去2年間で調達した資金であることから、直近のディール・サイクルで以前の資金が一掃され、新たに調達した資金がそれに置き換わったことが読み取れます。
全体では、2018年にPEファンドは目覚ましい額の資金を呼び込んだものの、2017年の記録的な実績と比較するとそのペースは緩やかになりました。但し、GPは2018年には史上3番目に多額の7,140億ドルを投資家から調達し、2014年以降の合計額は3兆7,000億ドルとなりました。
■ 2019年以降のプライベートエクイティ市場の戦略
2018年もPE業界は好調でしたが、ファンドマネジャーが直面する課題は変わっていません。資産を巡る競争が激化し購入価格マルチプルが上昇するなかで、記録的な額に達した調達資金を生産的に活用する必要があります。ベインは業績上位のPEファームが、この課題に対し実践している3つの施策を特定しました。
1. バイ・アンド・ビルド(買収と構築、業界再編):有効な戦略であるが実践には困難を伴う。ディスラプション(破壊的変革)のリスクが低いセクターであり、着実なペースで買収の原資となる一貫したフリー・キャッシュ・フローが創出できている企業であることが最も効果的なバイ・アンド・ビルド戦略を遂行する上で重要となります。適正な基本的インフラ(例えば、堅個なITシステム、健全なバランスシート、有効で再現可能な財務及びオペレーションのモデルなど)を備えたプラットフォーム的な企業であり、将来スケールメリットを創出できるような、コアビジネスに近い、極めて関連性の高い一連の企業を集めて買収していくことが求められます。
2. 買収後の統合:能力を高めて課題に取り組む。PEファンドは、記録的な資金調達がなされる一方で、それを投資する案件が極めて少ないという、業界の最も困難な問題を解決するために、より一層大規模なM&Aを志向しています。ベインの調査では、実質的なインパクトを得るために大型の買収を行うことには意義がある一方、成功率にはばらつきがあり、成功するか否かは買い手側の経験と密接に相関していることが分かっています。大規模なディールを頻繁に行い、再現可能なモデルにまで昇華させることができた買い手が大規模M&Aに高い確率で成功しています。
3. 隣接戦略:再び多角化に挑む。周到に考え、適切な隣接市場に進出すると優れた成果が得られることは歴史的に証明されています。ただし、かなり離れた市場への戦略に時間、資金、人材を投じると、たちまち能力が低下しかねません。業績上位の企業はコアから数歩ではなく、一歩だけ離れたような隣接市場をターゲットにします。そうした市場は、バイアウトを実施するPEファームが備えたノウハウとより密接に関連しており、GPにとってはマージンの向上、LPにとっては純利益率の改善が見込まれています。
■ 新しい規範:戦略的非公開化(パブリック・トゥ・プライベート)の増加
非公開企業のマルチプルが上昇し、上場企業のマルチプルにリセッションの可能性が織り込まれ始めるにつれ、記録的な数の企業がプライベートエクイティの戦略的非公開化(public-to-private(P2P))に舵を切っています。これらの企業は企業価値20億ドル~100億ドルで、非公開化に関わる経費をマルチプルに加えても、非公開市場企業の平均的なマルチプルより低い価格で買収可能な企業である、という特徴がみられます。
今後非公開化の大型取引を含んだ、より大規模なディールが多く行われるようになる傾向から、多くのPEファームはビジネスモデルを大幅に変える必要が出てきています。目前の課題にあわせ、より大型案件の取り組みで成功するために、投資規模の拡大に合わせたデューデリジェンスを行い大規模買収後に必要となるリソースを確保する必要があります。
ベイン・アンド・カンパニーについて
ベイン・アンド・カンパニーは、世界のビジネス・リーダーが「結果」を求めるときに訪れる経営コンサルティング会社です。ベインはM&A、テクノロジー、消費財・小売、マーケティング、プライベートエクイティ、デジタル・トランスフォーメーション/デジタル戦略、そしてアドバンスド・アナリティクス等においてクライアントを支援しています。実践的な知見を提供し、クライアントの変革を実現させ、新たなケイパビリティを定着させるためのスキル構築の支援も行っています。ベインは、クライアントの結果と自社の得る経済的なインセンティブを連動させており、ベインのクライアントの株価は市場平均に対し約4倍のパフォーマンスを達成しています。ベインは1973年に創設、現在世界36カ国に57拠点のネットワークを展開し、その深い専門知識とクライアントはあらゆる業界とセクターにまたがっています。詳細はウェブサイトをご覧ください。
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このプレスリリースを配信した企業・団体
- 名称 ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インコーポレイテッド
- 所在地 東京都
- 業種 企業向けサービス
- URL https://www.bain.com/ja/
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