根岸研究室が高知工科大学との共同研究で2色覚者がもつ色の印象が一般色覚者と同じであることを解明

さまざまな商品の配色デザインへ科学的指針を提供

金沢工業大学

メディア情報学科 根岸研究室が高知工科大学との共同研究で
2色覚者(色覚異常者)がもつ色の印象が一般色覚者と同じであることを解明。
さまざまな商品の配色デザインへ科学的指針を提供


金沢工業大学 メディア情報学科の根岸一平講師(専門:心理物理学、脳情報工学、視覚情報処理、色覚メカニズム)と、高知工科大学 情報学群の篠森敬三教授、同大学院修士課程修了の小松保奈美さんが、赤と緑を区別できない2色覚者(色覚異常者)でも、条件により一般色覚者と同様の色の印象をもつことを明らかにしました。研究成果は、2020年3月19日(木)に米国光学会が刊行する『Journal of the Optical Society of America, A』に掲載されました。

 

遺伝的な理由で2色覚者は赤と緑を区別できませんが、一方で日常生活ではさまざまな色が表す意味をきちんと理解しています。これまで、その理由については明らかになっていませんでした。今回の根岸講師らの実験により、ゆっくりと色を見ることができる場合は、一般色覚者と同様の印象を2色覚者にも与えることが可能であり、逆に数秒程度しか色を見ることができない場合は、赤や緑の色が持つ意味(止まれや進め等)を2色覚者に伝えられないことが明らかになりました。さまざまな色デザインが2色覚者にも受け入れられることを科学的に確認したのは、今回が初めてになります。

 

2⾊覚者(⾊覚異常者)がもつ⾊の印象が
⼀般⾊覚者と同じであることを解明
〜さまざまな商品の配⾊デザインへ科学的指針を提供〜

 

【研究概要】

遺伝的な理由で2⾊覚者(⾊覚異常者)は、⾚と緑の⾊の違いを識別できません。⼀⽅で、⽇常⽣活では、例え⾚や緑が⾒えていないとしても、様々な⾊が表す意味を⼀般⾊覚者と同じ様に理解しています。これまで、⾊彩学においては2⾊覚では⾚や緑の⾒えが全く無いか、⾮常に微弱であるものの、⾚や緑の⾊の印象が⼀般⾊覚者と同じになる理由については明らかになっていませんでした。

 

 そこで、⾼知⼯科⼤学情報学群/総合研究所視覚・感性統合重点研究室の篠森敬三教授と⼩松保奈美さん(⼤学院修⼠課程情報学コース2019年3⽉修了)は、⾦沢⼯業⼤学情報フロンティア学部メディア情報学科の根岸⼀平講師との共同研究により2⾊覚者と⼀般⾊覚者に2つの実験を⾏い、やはり⾚や緑が⾒えていないことと、⾒え⽅はともかく、一旦、⾚や緑と理解されると⾊に対する印象は⼀般⾊覚者とほぼ同じであり、⾒え⽅ではなく過去の経験や学習から⾊への印象が形成されたことを⽰しました。つまり、2つの異なる⾊をじっくりと⾒た場合は、2⾊覚者にも⼀般⾊覚者と同様にそれぞれの⾊についての印象を伝えることが可能であり、逆に数秒程度(今回の実験では4秒程度)で判断する必要がある場合は理解が間に合わず、⾚や緑の⾊が持つ意味(⽌まれや進め等)を形成できないことを解明しました(例えば、信号機の場合は、⾊ではなく点灯した場所や明るさで判断していると考えられます)。

 

 これにより、商品デザインの全てを2⾊覚者向けの⾊に変更する必要性はあまりない⼀⽅、サイン等ではカラーユニバーサルデザインが重要であるとの観点から、様々な物の⾊デザインに応⽤されることが期待されます。

 本研究成果は、⽶国光学会が刊⾏するJournal of the Optical Society of America, A に2020年3⽉19⽇に掲載されました(https://doi.org/10.1364/JOSAA.382518)。

(本研究は「科学研究費助成事業(基盤研究B)⾊・視覚要素から求めた意味語空間の双⽅向性検証による視覚―感性関係性の階層化(18H03323)」のご⽀援を頂きました)

 

【研究成果】

1 ⻑時間⾒ることができる商品などの配⾊については、すべてを2⾊覚者向けの⾊に変更する必要はないことを⽰しました。

2 サインなどについては、従来から提唱されているカラーユニバーサルデザインが重要であること⽰しました。

 

【今後の展開】

⾊の⾒え⽅が異なっていても⾊の印象はほぼ同じであり、2⾊覚者においても同じデザイン思想が理解される場合が多いことから、より⾃由なデザインへの道が拓かれました。

 

【研究の詳細】

 本研究では、「過激な」や「のどかな」などの抽象的な意味を表す9つの単語(意味語)に相応しい⾊を4秒程度で選ぶという篠森教授が開発した実験⼿法による実験1と、⾊を⾒せて35組の形容詞対からその印象を聞くという従来⼿法による実験2を組み合わせて、⾊の⾒え⽅と⾊の印象の関係を両⽅向から調べました(意味語空間の双⽅向性検証)。

 


 両実験は、⼀般⾊覚者と2⾊覚者それぞれ5名の協⼒を得て実施しました。その結果、意味語の印象に相応しい⾊を選ぶ(実験1)では、2型2⾊覚者は⼀般⾊覚者と異なり、⾚や緑などの⾒えにくい⾊はあまり選ばず、⻩⾊や⽩が選ばれました。⼀⽅、⾊を⾒せて⾊の印象を聞く(実験2)では、意味語の扱いも含めて両者にほとんど差がありませんでした。本結果により、2型2⾊覚者は意味語をとおしても、やはり⾚や緑が⾒えていないこと(⾊の⾒え⽅が⾚緑⽅向、⻩⻘⽅向の2次元ではなく、⻩⻘⽅向の1次元で表現されていること)を⽰しました。⼀⽅で、⾚や緑と理解すると⾊に対する印象は、⼀般⾊覚者とほぼ同じであり、⾒え⽅ではなく過去の経験や学習から⾊への印象が形成されたことを⽰しました。

 

 


 今後の研究では、何歳ぐらいで同じ印象が形成されるのかを調べるため、若年層から⾼齢者で⽐較実験を⾏うことも必要となります。

 

【論⽂情報】

題名︓Bidirectional relationships between semantic words and hues in color vision normal and deuteranopic observers

誌名︓Journal of the Optical Society of America, A

著者︓篠森敬三(⾼知⼯科⼤学)*,⼩松保奈美(⾼知⼯科⼤学),根岸⼀平(⾦沢⼯業⼤学)

*連絡著者(corresponding authors)

 

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図1

実験

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