食事中のコレステロールと植物ステロールが心臓疾患に直接影響
AsiaNet 85046
食事中のコレステロールと植物ステロールが心臓疾患に直接影響
コレステロールと植物ステロールの吸収力が生まれつき高い人と低い人が存在、心臓疾患のリスクに影響
【レイキャビク(アイスランド)、2020年8月7日/PRNewswire】Amgenの子会社deCODE geneticsの研究者たちとアイスランドヘルスケアシステム、アイスランド大学、コペンハーゲン大学バイオバンクやデンマークのBlood Donor Studyなどに在籍する協力研究者たちは、最近European Heart Journalで出版された論文には、食事のコレステロールと植物ステロールの悪影響について新しい研究成果を発表しました。
「悪玉」コレステロール (非HDLコレステロールまたはLDLコレステロール)が心臓疾患に直接的に影響することは、すでに周知の事実です。高血圧や悪玉コレステロール、その他の心臓疾患リスク要因を持っている患者は、生活習慣を見直し、場合によってはスタチンのようなコレステロール降下剤によってコレステロールを下げることが推奨されています。
コレステロールの血中濃度は、遺伝や環境によって大きく左右されます。特に食事に影響され、主に赤身肉や高脂肪乳製品に含まれる飽和脂肪の摂取により、血中のコレステロールが増えます。一方、食事のコレステロールを管理することで血中のコレステロールや心臓疾患リスクをコントロールするという点については、これまで何十年にも渡って論争されてきました。卵や貝など例外はあるものの、一般にコレステロールを多く含む食材は飽和脂肪酸も高いとされています。
植物ステロールはコレステロールに類似した分子で、果物、野菜、ナッツや豆類などあらゆる植物性食物に少量含まれています。植物ステロールを多く含むマーガリンや乳製品などは、食事のコレステロール吸収を抑える可能性があるため、心臓に良い食事として推奨されています。
食事のコレステロールや植物ステロールの吸収を司るのは、NPC1L1やABCG5/8といった輸送タンパク質です。NPC1L1が各ステロールを消化器官内腔から腸細胞に届けると、そこでABCG5/8はコレステロールの半分未満の量を老廃物として排出しますが、植物ステロールはほとんど消化器内腔に戻されます。従って、消化器官からは概ね食事のコレステロールのうち 50-60%が吸収されるのに対して、植物ステロールの吸収はたった5%に留まります。
今回の研究では、ABCG5/8輸送タンパク質の機能を抑制する配列変異体が、コレステロールと植物ステロールの血中濃度や冠動脈疾患のリスクに変化をもたらすのかどうか、アイスランド、デンマーク、イギリスのバイオバンクから集められた被験者に対して実験を行いました。14万7,000人程の冠動脈疾患患者と、92万2,000人の健康な被験者を対象として、配列変異体がもたらす変化を研究しました。
結果として、ABCG5/8輸送タンパク質の機能を鈍らせる配列変異体を持つ人は、コレステロールと植物ステロール両方の血中濃度が高く、心臓疾患のリスクが高まっていることがわかりました。この結果により、食事でコレステロールを吸収すると、コレステロールの血中濃度と心臓発作のリスクは上昇すると言うことができます。さらに、同じ量のコレステロールを消費しても、それが体に吸収される量は人によってまちまちであることがわかります。
また今回の研究では、ABCG5/8の配列変異体はコレステロールと植物ステロール両方の血中濃度、そして心臓疾患リスクに影響を及ぼすという点で、植物ステロールには影響を与えない他のコレステロール変異体とは異なっているということがわかりました。この結果から、植物ステロールはアテローム形成に直接影響を及ぼすという仮説が説得力を増し、従って食事を植物ステロールで補給することは本当に安全なのかという疑問が湧き上がってきました。
添付の論説では、オリバーウェインガートナー氏(Oliver Weingartner)は、「ヘルガドッティル(Helgadottir)らによる研究はこれまでのところ、ABCG5 / ABCG8遺伝的変異が機構的にアテローム動脈硬化性心疾患に関与しているという仮説を支持する最良の研究であるだけでなく、このプロセスにおけるキセノステロールの役割を研究する強い推進力でもある」と述べています。
アイスランドのレイキャビクに拠点を置くdeCODEは、人間の遺伝子の分析に関して世界を代表する研究施設です。deCODEは人類遺伝子学の卓越した専門性と、トランスクリプトミクスや集団プロテオミクスについて深まりつつある知識、そして膨大な遺伝表現型のデータを保持しており、これまでに多くの一般的疾患のリスク要因を突き止めると共に、その病因に対しても鍵となる知見を提供してきました。疾病の遺伝的側面を理解することで、その情報を利用して新しい診断、治療、予防方法を開発することができるようになります。deCODEはAmgenの完全所有子会社です(NASDAQ: AMGN)。
動画 - https://www.youtube.com/watch?v=jS4VscvgMsM
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