光沢による魅力度を反映する脳活動を特定

質感に由来する感性価値の向上に向けて

2021年3月16日

 

ポイント

■ 肌の光沢による魅力度を反映する脳活動を世界で初めて特定することに成功

■ 脳活動に基づく評価技術で質感由来の感性価値の高い映像や製品開発が可能になると期待

■ 主観的な印象報告による感性価値の評価から、脳活動に基づく客観的・定量的な評価に向けて前進

 

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT、理事長: 徳田 英幸)脳情報通信融合研究センター(CiNet)は、株式会社資生堂(資生堂、代表取締役社長兼CEO:魚谷 雅彦)と共同で、肌の光沢に由来する魅力度を反映するヒトの脳活動を世界で初めて特定しました。今回の実験では、肌の光沢の質的な違い(“マット”、“テカリ”、“つや”)に着目した実験デザインや光沢の正確な再現手法を用いた機能的磁気共鳴撮像法(fMRI)実験を考案、実施し、光沢由来の魅力度を反映する脳活動を特定しました。

 様々な質感に由来する感性価値(例:魅力、心地よさ、高級感、ときめき、感動など)の高い映像・製品の開発や環境のデザインは、多くの企業にとって重要な課題となっています。従来、このような感性価値は、主観的な印象報告に基づいて評価されていましたが、今後、本知見を活用することで、物理的に計測可能な脳活動に基づく客観的・定量的な評価が可能になると期待されます。

 なお、本成果は、英国科学雑誌「Scientific Reports」に2021年2月22日(月)にオンライン掲載されました。

 

背景

 光沢などの質感に由来する感性価値(例:魅力、心地よさ、高級感、ときめき、感動など)の高い映像や製品の開発は、多くの企業にとって重要な課題であると同時に人々の精神的な豊かさの向上に大きく寄与すると考えられます。しかし、これまでの感性価値の評価は、主観的な印象報告に基づいていたため、その信頼性に課題がありました。脳活動計測に基づいた評価技術の開発により、この課題を克服することを目指し、NICTでは、これまでに光沢知覚に関わる脳部位を世界で初めて特定しましたが、光沢などの質感に由来する感性価値を反映する脳活動の特定には至っていませんでした。

 

今回の成果

 今回NICTは、資生堂と共同で、質感のわずかな差異が大きな印象変化をもたらす人の肌において、fMRIを用いて、肌の光沢に由来する魅力度を反映するヒトの脳活動を世界で初めて捉えることに成功しました。

 この実験では、肌の光沢の質的な違い(“マット”、“テカリ”、“つや”;図4参照)に着目し、それに特化した、

 (1) MRI装置内での正確な質感再現手法

 (2) fMRI撮像手法

 (3) 実験デザイン

の3つの工夫を組み合わせることにより、肌の光沢の違いによる魅力を処理する脳部位(眼窩(がんか)前頭皮質内側部;図1赤紫部分;眉間の数cm後方)を特定し、さらにその脳部位の脳活動の大きさが肌の光沢の違いによる魅力度を反映していることを明らかにすることができました(図2、3参照)。

 

 

図4 光沢の違い(左から“マット”、“テカリ”、“つや”)

 

今後の展望

 今後は、感性価値の高い映像・製品・環境の開発やデザインなどに生かしてくために、質感に由来する感性価値(例:魅力、心地よさ、高級感、ときめき、感動など)の評価手法の開発をさらに進め、脳活動計測に基づく客観的・定量的な評価技術の確立を目指します。

 

各機関の主な役割分担

・情報通信研究機構: 実験デザインの作成、実験実施、実験結果の分析と解釈

・資生堂: 実験刺激画像の作成・提供

 

論文情報

論文名: Human brain activity reflecting facial attractiveness from skin reflection

掲載誌: Scientific Reports

DOI: 10.1038/s41598-021-82601-w

URL: https://doi.org/10.1038/s41598-021-82601-w

著者: 坂野雄一1, 和田充史1, 池田華子2, 佐伯百合子2, 互恵子2, 安藤広志1

所属: 1情報通信研究機構、2資生堂

 

なお、本研究は、資生堂との資金受入型共同研究の一環として行われました。

 

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プレスリリース添付画像

図1 眼窩(がんか)前頭皮質内側部 ほか

図4 光沢の違い(左から“マット”、“テカリ”、“つや”)

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